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アリスファミリー始動
最弱が嘘つきを倒すなんてどう考えてもおかしい
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──戦闘開始より2時間──
午前8時妖精の城大広間にて
ジェードは確信を持っていた。
ハンプティにアリスは見えていない。
バジリスクが見えていないと言っていたフレイヤの発言がその証拠で、基本的に自分よりも上位のものを呼び出すことはできない。
バジリスクが上位すぎて見えなかったアリスは、ハンプティにも見えていない可能性が高い。
それを裏付けるようにバジリスクもハンプティも1度もアリスを狙って攻撃していない。そのため、護衛に回らず攻撃できたのだ。
「クリムちゃん!今すぐアリスちゃんの元へ行って!」
「何故だ!?」
「血をもらうの!ヒントはフレイヤちゃん!」
「……わかった!」
「なになに?ちょっとめんどくさそう。殺っとこう」
ハンプティはクリムめがけ魔神の足を繰り出すがすかさず、ジェードが間に魔神の足を出して衝突させる。
「やらせるわけないじゃない」
「まぁ、でも互角よね。同じものだし」
「それでいいのよ、言ったじゃない。私はあなたを倒すことを諦めている」
「随分と潔いいじゃない。何か怪しい……!?」
「隙だらけ」
「いつの間に……!」
ハンプティはハクの気配に気付かず、容易に後ろを取られてしまう。
血まみれのハクは、渾身の一撃をハンプティに叩き込む。
***
「我は永遠なり」
バジリスクは復活を遂げると、自慢げに鶏ムネを張る。
アリスにむし取られた冠型の頭の毛も元に戻っていた。
「僕、鶏肉嫌いなんだよね」
クラリアはバジリスクにロックオンすると、白の双剣で虚空を切る。
見えない斬撃がバジリスクを襲いかかる。
「どうせ死にはせん、甘んじて受け止めてやろう」
バジリスクは避けることもなく、斬撃を受ける。
聖属性が体の魔を払い、バジリスクの体は散り散りになるがその瞬間でさえも、バジリスクの顔は笑顔のまま闇に溶けていく。
体の原型も無くなった頃、再びバジリスクは元の形へと戻ろうとする。
「今だ!フレイヤちゃん!」
「任せて!」
フレイヤは両手をバジリスクに向けて広げ、バジリスクを時間の檻へ閉じ込めた。
「……!!?」
闇から首の部分だけ元に戻ったバジリスクは、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、青い結界に閉じ込められる。
「私の時間の檻は文字通り、時間の概念から対象を孤立させる能力です!」
「でも、自分より大きなものを止めるのには消費魔力が多い」
「なので、バジリスクの存在が不安定になった復活の瞬間を狙ったわけです!あのゴスロリさんがやられるまで大人しくしててください!!」
「……(ほんとにバカだったなあいつ)」
アリスは、伝説の鳥を哀れな目で見つめる。
ザザッ……。
そのとき、耳に雑音がはいった。何か不気味な音だ。
クラリアスに音を預けているはずなのになぜ?
アリスはそのことにあまり疑問を持たなかった。
「ほんとにこれで最後。もう疲れた」
クラリアはアリスの耳にキスをし、ばたりと倒れた。
「おお!音が戻った!」
「クラリアちゃんのことは頼みました!後みんなに伝えて下さい!」
「任せろ!みんな、目を開けぇええええ!!!」
***
「アリス!!」
クリムは、ライリのラインブレードでアリスと繋いでもらいアリスの元までワープする。
クリムはアリスにもたれかかった。
「ク、クリム!?大丈夫か!?」
いつもの凛とした雰囲気も振る舞う余裕が無い。
頭から血が出ているのか、右目を伝って顔に血がついている。
「こんな日が来るとは思ってなかった……」
「そんなことより、早く治療しろよ!」
「いい……そこに魔力を使ってる余裕はない」
クリムはアリスの両肩をガシッと掴み、顔をあげ、アリスの両目を赤く狂気に満ちた瞳で見つめる。
「奴を倒したい!」
「お、おう!」
「そのためには、お前の力が必要だ!力を貸してくれ!」
「ジェードさんのアイコンタクトでそんな気はしてたけど……俺に出来ることなんてあるのか?」
「あいつにとってお前は文字通り眼中にない。触れたものや、装備までもがな」
「ひでぇ話だ」
「いや、そうでもない。だからこそ、私達はあいつに勝つことが出来るんだ」
クリムはアリスに作戦を伝える。アリスは納得したように頷く。
「確かにそのくらいなら俺にもできるかもしれねぇけど……」
「後は……その……お前が欲しい」
クリムは目をそらし恥じらうように頬を赤らめた。
「えっ?」
「もういい!目をつぶってろ!!」
「は、はい!」
アリスは言われるまま、目をつぶる。
首すじにクリムの柔らかい唇の感触の後、アリスは首すじに痛みを覚える。
「つっ……!」
「やはり、お前の血はまずいな。けれど、充分だ。」
クリムの全身に生き血が巡っていく。
コウモリの眷属たちが体からあふれ、赤い瞳はより濃く赤に染まっていった。
「クリムすげぇ……」
アリスは貧血気味で視界が歪んだが踏ん張る。
(今からの作戦には俺が必要だ……!走れ!)
アリスは心の内で自分を鼓舞し、走り出す。
***
「はぁはぁはぁ……」
ハクは立っているのがやっとだった。
本来の姿に戻ればハンプティを倒すことは不可能ではないが、城を破壊してしまう可能性があった。
(新しい家……壊すわけには……いかない)
そう、ハクは気を使っていたが、壁の至るところにヒビが入り、地割れが起きてる今となっては、手遅れかもしれない。
「ははは、まさか一発もらう日が来るとはね」
空中から叩き落とされた、ハンプティの頭からうっすらと血が流れている。
(白龍……やっぱり最強は違うわね、子どもとはいえ。)
「くっ……」
ハクは膝をつき、倒れ込んだ。体力の限界を迎え眠りについた。
「でも流石にあれだけもらったんだからもう無理よね。トドメをさそうかしら。」
ハンプティは跳ね上がった魔力に表情を変える。
「あれは、クリム・フラム!? 何あの魔力量?」
クリムの眼前に7つ7色の炎が浮かび上がり、7色目紫の炎を切る。
「来い!柴犬!」
「柴犬、来たぜ!」
額に紫の炎を宿した普通の柴犬を炎が形作った。
愛らしい瞳をクリムに向け、舌を出してハッハッとご機嫌そうにしている。
(し、しまらねー!)
クリムの出した柴犬は、クリムの持つ7色の使い魔のうち最も強いがビジュアルがゆるいため、戦場の雰囲気を和らげてしまいがちだった。
「何あれ?犬……よね……?」
「俺っちは、柴犬だぜ!めっちゃつよいからな!」
「柴犬、私の足となってくれ」
「うん!お安い御用だぜ!」
クリムは柴犬に笑いかけると、柴犬は紫色の炎へと変わりクリムの両足を燃やす。
すると、炎はやがて柴犬色のロングブーツに変わり、足の先には柴犬の顔がついている。
「フォームチェンジ!柴犬シューズ!」
「なにそれ!あはははは!ほんと面白いわ!魔族って最高ね!」
「笑ってられるのは今のうちだぞ」
クリムは怒りのこもった目で、ハンプティを睨む。
ハンプティの後方定位置についたアリスと、壁にもたれかかり気配を消しているライリ。フレイヤは、時間の檻を維持するためにバジリスクにつきっきりで、ジェードは魔神の足が現れたら相殺出来るように構えている。
(今、ファミリーの戦力は私だけ、だからこそ最上の一撃を叩き込む!)
クリムの眷属たちは全て真っ赤な炎へと姿を変える。
それらはクリムの握る黒の大剣デモンメアにあつまっていき、デモンメアは燃え盛る炎を纏った。
「お姉ちゃん、凄い……」
「クリムちゃんの、全力見るの初めてかも♡」
「流石、魔界最大攻撃力を誇るだけはあるわね。まともに食らったらどうなるか……」
「いくぞ!柴犬!」「おっけー!」
パンッ!
クリムが地面を軽く蹴ると、ハンプティの目の前にまで飛ぶ。
「はやっ」
紫色のライトエフェクトを体の前に張り巡らせる、ハンプティ。
「嘘つきちゃんの能力は、多分身に受けたものを再現、加工する能力」
「ライトエフェクトで受けたものもできるようなので……」
「技を当てられるのははじめの一発だけ!貰うがいい!グランドレッドの怒りを!!」
「そんなもの、いらないわ」
ハンプティは、ライトエフェクトの位置をずらし炎の火の粉だけにでも当たれば嘘をつけば、2度と攻撃を受けることがない。
ライトエフェクトを剣の先に集中させる。
「残念だったな。はずれだ」
「わんわん!」
柴犬は炎を吐き出し、空中での位置をハンプティの真後ろに変える。
「なっ……!」
認識のギリギリの速度で後ろに移動したクリムの魔力を察知し、ライトエフェクトの防壁を後ろに張る。
「結べ……!ラインブレード!!」
気配を消していたライリは、デモンメアとハンプティを結ぶ。
「おのれぇええええええ!……なんちゃって」
その瞬間、剣の炎は花びらに変わる。
「ギリギリ炎に触れて……!?」
「その剣は確かに強い!けれど、私の障壁を超えるほどではないわ!」
「そうだな、止めることが出来たらな」
「どういう……!?」
ハンプティの目には剣が消えたように映る。
というより、剣という存在が消えた。
「なっ……!剣はどこに!?」
「重っ!」
ハンプティの隣に立つ、アリスの手に握られたデモンメアは、ラインブレードの線によって繋げられていたのだ。
ライトエフェクトに当たる寸前ワープさせ、アリスに握らせた。
「終わりだ、ハンプティ!!」
「ほいっ」
アリスは指示通り、手を離すとデモンメアは目にも止まらぬ速さでハンプティの腹に突き刺さった。
「あははは……流石に想定外」
ハンプティは口から血を吐き倒れ込む。
「グランドレッドの怒りを思い知れ!!」
クリムは狂気のこもった瞳で、柴犬型のグローブで殴りつける。
【私は森を離れ罪を背負う】
今にも消え入りそうな、溶けるような小さな声が城に響く。
「何、死にそうになってんの。嘘つき」
「黙れ、焼きもち女」
ハンプティの拳が当たる直前、デモンメアが霧散し、地面から太い木の根が蛇のように意思をもって、現れハンプティの体を包み込む。
クリムは驚き、バックステップをとった。
地面から色素の薄い真っ白な髪と目をした幼い少女が現れる。手や足から大量の木の根が意思を持っているかのように蠢きながらアリス達を襲う。
「させない!」
フレイヤはバジリスクの封印を解き、アリスの周りに時間の檻をかける。
ジェードは魔神の足を少女に叩き込むが、紫色のライトエフェクトを纏った木の根に軽くあしらわれた。
「逃げるわよ」
「後少しでやれたのに」
「嘘つき」
「いつでも私は正直者よ」
そう言って、彼女達は夢のように消えた。
蠢き襲ってきた木の根も無くなり、そこにはただ大きな穴が空いていた。
そして声が響いた。
【私は嘘をつく──この城の全ては元に戻らない】
ははは、苦しめ。
その瞬間──
消えていた妖精達は姿を現した。
「なんで突然……!?」
呆然とするアリス、クリムは魔力を使い果たし倒れ込み、フレイヤは膝を落としてへたりこむ。ライリとジェードはしてやられたと表情を歪めていた。
「なんだ!お前達は!?」
兵士と見られる男のエルフ達に取り囲まれるアリス。
「あ、怪しいもんじゃねぇ!本当だ!」
「コイツ!よく見ればアリスファミリーのボスだぞ!まさか……!?攻め入りに来たのか!?」
「なんだって!?取り押さえろ!!」
「ち、違う誤解なんだ!!」
話を聞けぇえええええ!
無抵抗のアリスファミリーは全員、地下牢獄へと閉じ込められることとなる。
──嘘に踊らされたのだ。
午前8時妖精の城大広間にて
ジェードは確信を持っていた。
ハンプティにアリスは見えていない。
バジリスクが見えていないと言っていたフレイヤの発言がその証拠で、基本的に自分よりも上位のものを呼び出すことはできない。
バジリスクが上位すぎて見えなかったアリスは、ハンプティにも見えていない可能性が高い。
それを裏付けるようにバジリスクもハンプティも1度もアリスを狙って攻撃していない。そのため、護衛に回らず攻撃できたのだ。
「クリムちゃん!今すぐアリスちゃんの元へ行って!」
「何故だ!?」
「血をもらうの!ヒントはフレイヤちゃん!」
「……わかった!」
「なになに?ちょっとめんどくさそう。殺っとこう」
ハンプティはクリムめがけ魔神の足を繰り出すがすかさず、ジェードが間に魔神の足を出して衝突させる。
「やらせるわけないじゃない」
「まぁ、でも互角よね。同じものだし」
「それでいいのよ、言ったじゃない。私はあなたを倒すことを諦めている」
「随分と潔いいじゃない。何か怪しい……!?」
「隙だらけ」
「いつの間に……!」
ハンプティはハクの気配に気付かず、容易に後ろを取られてしまう。
血まみれのハクは、渾身の一撃をハンプティに叩き込む。
***
「我は永遠なり」
バジリスクは復活を遂げると、自慢げに鶏ムネを張る。
アリスにむし取られた冠型の頭の毛も元に戻っていた。
「僕、鶏肉嫌いなんだよね」
クラリアはバジリスクにロックオンすると、白の双剣で虚空を切る。
見えない斬撃がバジリスクを襲いかかる。
「どうせ死にはせん、甘んじて受け止めてやろう」
バジリスクは避けることもなく、斬撃を受ける。
聖属性が体の魔を払い、バジリスクの体は散り散りになるがその瞬間でさえも、バジリスクの顔は笑顔のまま闇に溶けていく。
体の原型も無くなった頃、再びバジリスクは元の形へと戻ろうとする。
「今だ!フレイヤちゃん!」
「任せて!」
フレイヤは両手をバジリスクに向けて広げ、バジリスクを時間の檻へ閉じ込めた。
「……!!?」
闇から首の部分だけ元に戻ったバジリスクは、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、青い結界に閉じ込められる。
「私の時間の檻は文字通り、時間の概念から対象を孤立させる能力です!」
「でも、自分より大きなものを止めるのには消費魔力が多い」
「なので、バジリスクの存在が不安定になった復活の瞬間を狙ったわけです!あのゴスロリさんがやられるまで大人しくしててください!!」
「……(ほんとにバカだったなあいつ)」
アリスは、伝説の鳥を哀れな目で見つめる。
ザザッ……。
そのとき、耳に雑音がはいった。何か不気味な音だ。
クラリアスに音を預けているはずなのになぜ?
アリスはそのことにあまり疑問を持たなかった。
「ほんとにこれで最後。もう疲れた」
クラリアはアリスの耳にキスをし、ばたりと倒れた。
「おお!音が戻った!」
「クラリアちゃんのことは頼みました!後みんなに伝えて下さい!」
「任せろ!みんな、目を開けぇええええ!!!」
***
「アリス!!」
クリムは、ライリのラインブレードでアリスと繋いでもらいアリスの元までワープする。
クリムはアリスにもたれかかった。
「ク、クリム!?大丈夫か!?」
いつもの凛とした雰囲気も振る舞う余裕が無い。
頭から血が出ているのか、右目を伝って顔に血がついている。
「こんな日が来るとは思ってなかった……」
「そんなことより、早く治療しろよ!」
「いい……そこに魔力を使ってる余裕はない」
クリムはアリスの両肩をガシッと掴み、顔をあげ、アリスの両目を赤く狂気に満ちた瞳で見つめる。
「奴を倒したい!」
「お、おう!」
「そのためには、お前の力が必要だ!力を貸してくれ!」
「ジェードさんのアイコンタクトでそんな気はしてたけど……俺に出来ることなんてあるのか?」
「あいつにとってお前は文字通り眼中にない。触れたものや、装備までもがな」
「ひでぇ話だ」
「いや、そうでもない。だからこそ、私達はあいつに勝つことが出来るんだ」
クリムはアリスに作戦を伝える。アリスは納得したように頷く。
「確かにそのくらいなら俺にもできるかもしれねぇけど……」
「後は……その……お前が欲しい」
クリムは目をそらし恥じらうように頬を赤らめた。
「えっ?」
「もういい!目をつぶってろ!!」
「は、はい!」
アリスは言われるまま、目をつぶる。
首すじにクリムの柔らかい唇の感触の後、アリスは首すじに痛みを覚える。
「つっ……!」
「やはり、お前の血はまずいな。けれど、充分だ。」
クリムの全身に生き血が巡っていく。
コウモリの眷属たちが体からあふれ、赤い瞳はより濃く赤に染まっていった。
「クリムすげぇ……」
アリスは貧血気味で視界が歪んだが踏ん張る。
(今からの作戦には俺が必要だ……!走れ!)
アリスは心の内で自分を鼓舞し、走り出す。
***
「はぁはぁはぁ……」
ハクは立っているのがやっとだった。
本来の姿に戻ればハンプティを倒すことは不可能ではないが、城を破壊してしまう可能性があった。
(新しい家……壊すわけには……いかない)
そう、ハクは気を使っていたが、壁の至るところにヒビが入り、地割れが起きてる今となっては、手遅れかもしれない。
「ははは、まさか一発もらう日が来るとはね」
空中から叩き落とされた、ハンプティの頭からうっすらと血が流れている。
(白龍……やっぱり最強は違うわね、子どもとはいえ。)
「くっ……」
ハクは膝をつき、倒れ込んだ。体力の限界を迎え眠りについた。
「でも流石にあれだけもらったんだからもう無理よね。トドメをさそうかしら。」
ハンプティは跳ね上がった魔力に表情を変える。
「あれは、クリム・フラム!? 何あの魔力量?」
クリムの眼前に7つ7色の炎が浮かび上がり、7色目紫の炎を切る。
「来い!柴犬!」
「柴犬、来たぜ!」
額に紫の炎を宿した普通の柴犬を炎が形作った。
愛らしい瞳をクリムに向け、舌を出してハッハッとご機嫌そうにしている。
(し、しまらねー!)
クリムの出した柴犬は、クリムの持つ7色の使い魔のうち最も強いがビジュアルがゆるいため、戦場の雰囲気を和らげてしまいがちだった。
「何あれ?犬……よね……?」
「俺っちは、柴犬だぜ!めっちゃつよいからな!」
「柴犬、私の足となってくれ」
「うん!お安い御用だぜ!」
クリムは柴犬に笑いかけると、柴犬は紫色の炎へと変わりクリムの両足を燃やす。
すると、炎はやがて柴犬色のロングブーツに変わり、足の先には柴犬の顔がついている。
「フォームチェンジ!柴犬シューズ!」
「なにそれ!あはははは!ほんと面白いわ!魔族って最高ね!」
「笑ってられるのは今のうちだぞ」
クリムは怒りのこもった目で、ハンプティを睨む。
ハンプティの後方定位置についたアリスと、壁にもたれかかり気配を消しているライリ。フレイヤは、時間の檻を維持するためにバジリスクにつきっきりで、ジェードは魔神の足が現れたら相殺出来るように構えている。
(今、ファミリーの戦力は私だけ、だからこそ最上の一撃を叩き込む!)
クリムの眷属たちは全て真っ赤な炎へと姿を変える。
それらはクリムの握る黒の大剣デモンメアにあつまっていき、デモンメアは燃え盛る炎を纏った。
「お姉ちゃん、凄い……」
「クリムちゃんの、全力見るの初めてかも♡」
「流石、魔界最大攻撃力を誇るだけはあるわね。まともに食らったらどうなるか……」
「いくぞ!柴犬!」「おっけー!」
パンッ!
クリムが地面を軽く蹴ると、ハンプティの目の前にまで飛ぶ。
「はやっ」
紫色のライトエフェクトを体の前に張り巡らせる、ハンプティ。
「嘘つきちゃんの能力は、多分身に受けたものを再現、加工する能力」
「ライトエフェクトで受けたものもできるようなので……」
「技を当てられるのははじめの一発だけ!貰うがいい!グランドレッドの怒りを!!」
「そんなもの、いらないわ」
ハンプティは、ライトエフェクトの位置をずらし炎の火の粉だけにでも当たれば嘘をつけば、2度と攻撃を受けることがない。
ライトエフェクトを剣の先に集中させる。
「残念だったな。はずれだ」
「わんわん!」
柴犬は炎を吐き出し、空中での位置をハンプティの真後ろに変える。
「なっ……!」
認識のギリギリの速度で後ろに移動したクリムの魔力を察知し、ライトエフェクトの防壁を後ろに張る。
「結べ……!ラインブレード!!」
気配を消していたライリは、デモンメアとハンプティを結ぶ。
「おのれぇええええええ!……なんちゃって」
その瞬間、剣の炎は花びらに変わる。
「ギリギリ炎に触れて……!?」
「その剣は確かに強い!けれど、私の障壁を超えるほどではないわ!」
「そうだな、止めることが出来たらな」
「どういう……!?」
ハンプティの目には剣が消えたように映る。
というより、剣という存在が消えた。
「なっ……!剣はどこに!?」
「重っ!」
ハンプティの隣に立つ、アリスの手に握られたデモンメアは、ラインブレードの線によって繋げられていたのだ。
ライトエフェクトに当たる寸前ワープさせ、アリスに握らせた。
「終わりだ、ハンプティ!!」
「ほいっ」
アリスは指示通り、手を離すとデモンメアは目にも止まらぬ速さでハンプティの腹に突き刺さった。
「あははは……流石に想定外」
ハンプティは口から血を吐き倒れ込む。
「グランドレッドの怒りを思い知れ!!」
クリムは狂気のこもった瞳で、柴犬型のグローブで殴りつける。
【私は森を離れ罪を背負う】
今にも消え入りそうな、溶けるような小さな声が城に響く。
「何、死にそうになってんの。嘘つき」
「黙れ、焼きもち女」
ハンプティの拳が当たる直前、デモンメアが霧散し、地面から太い木の根が蛇のように意思をもって、現れハンプティの体を包み込む。
クリムは驚き、バックステップをとった。
地面から色素の薄い真っ白な髪と目をした幼い少女が現れる。手や足から大量の木の根が意思を持っているかのように蠢きながらアリス達を襲う。
「させない!」
フレイヤはバジリスクの封印を解き、アリスの周りに時間の檻をかける。
ジェードは魔神の足を少女に叩き込むが、紫色のライトエフェクトを纏った木の根に軽くあしらわれた。
「逃げるわよ」
「後少しでやれたのに」
「嘘つき」
「いつでも私は正直者よ」
そう言って、彼女達は夢のように消えた。
蠢き襲ってきた木の根も無くなり、そこにはただ大きな穴が空いていた。
そして声が響いた。
【私は嘘をつく──この城の全ては元に戻らない】
ははは、苦しめ。
その瞬間──
消えていた妖精達は姿を現した。
「なんで突然……!?」
呆然とするアリス、クリムは魔力を使い果たし倒れ込み、フレイヤは膝を落としてへたりこむ。ライリとジェードはしてやられたと表情を歪めていた。
「なんだ!お前達は!?」
兵士と見られる男のエルフ達に取り囲まれるアリス。
「あ、怪しいもんじゃねぇ!本当だ!」
「コイツ!よく見ればアリスファミリーのボスだぞ!まさか……!?攻め入りに来たのか!?」
「なんだって!?取り押さえろ!!」
「ち、違う誤解なんだ!!」
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──嘘に踊らされたのだ。
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