現実世界でも異世界でも最弱の俺が最強として扱われているのはどう考えてもおかしい。

友樹 みこと

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雲のアトリエ

神前でバトるなんてどう考えてもおかしい

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「ちょ、話聞けって!!」
「俺とアクアのドライブを止めた!?」

ハクは両翼で包み込むようにして自分達を守る。カイトの拳の周りには渦をまくようにして、激流が翼を削ろうとしているが、ハクの翼は押されもしない。
金髪の騎士は、ハクの龍翼を見て確信する。彼女があの最強最悪の龍族だと。

「カイト!そいつ、龍族だ!部が悪い!」
「まじか!龍族!?おもしれぇ!」
「だから話聞けよ!くそ海鳴!」
「えっ、なんで俺の苗字知ってんの!?」
「クラスメイトだからだ!」
「ん……?お前誰だ?」
「有栖川涼だよ!どうせ覚えてないだろうけど!」
「ああ……!あのデブの!……ん!?それがお前だってのか!?」
「ああ!そうだよ!一言多いなお前!」
「いやいや、鏡見ろよ。別人だぜ?」
「何言ってんだよ、見た目なんか変わってないぞ?」
「……ふむ。こっちに来たのが本当なら見た目が変わっててもおかしくないか、一旦休戦だな」


                    ***

カイトの部下の1人、銀でできたハンドボールほどの大きさの球体型のロボット。目や口はない。どこからともなく穴が開き、そこから鏡を出した。
そこに神妙な面持ちをした、可もなく不可もない顔があった。

「これが、俺……!?」
決してイケメンではない。イケメンではないが……

「悪くないな」

「なんだそりゃ。でもまぁ、確かに身だしなみとか気にしなそうだもんなお前」
「うるせぇ」

カイトはアリスが有栖川であることを、疑わなかった。
そういうこともある。異世界では何が起きても驚かない。何より海鳴海斗という本名を500年後の世界で知っている人間などいないはずだ。
こちらでは、カイトとしか名乗っていない。

「それはそうとお前もこっちに来てたとはな、どうやって来た?」
「なんか、猫に引っかかれて」
「ははは!なんだそりゃ!!じゃあ、神気とかないわけ?」
「神気?」
「ん、見せてやるよ」

そう言うとカイトは軽く跳ねた。
そう、軽くトンッという音がするほど軽いちょうやくだった。
しかし、カイトは一瞬で神殿の上に移動していた。

「すげぇ!!」
「こういう事が出来んだよ俺達は」

カイトはまた軽く飛び、アリスの横に瞬間移動する。

「それ、俺にもできんの!?」
「いや、無理。俺達は厳密には人間じゃない」
「どういう事だ?」
「遺伝子組み換えで生まれたんだ、俺、霧崎、火花は。」
「えっ……」

火花花火。アリスに唯一優しく接した初恋の相手。それが、遺伝子組み換えで生まれたホムンクルスだと知り、何とも言えない重たいものを心に背負った。

「日本では、最悪に備えて亜人……つまり、龍とか悪魔とかと戦うための力を密かに研究してた。それが俺達ってわけ」
「それが神気?」
「まぁ、ちょっと違うがそう。運動神経が高く、治癒力も高い。寿命は短いけどな」

カイトが苦笑いを浮かべるのを見て、アリスは一つの疑問を抱く。

「なら、何でここに?人間は滅んだんだろ?」
「……人間は過去を諦めた。魔神や機神、獣神、龍神の目覚めた世界を諦めたんだ。だからそいつらの寝たあと、500年後の世界に俺達を全身冷凍して送った」
「なんだそれ!?お前凍ってたのか!?」
「ああ、全裸で」
「全裸で!?火花さんも」
「もちろん全裸だ」
「死ね」
「いや、見てねぇよ!てか、食いつくのそこなのな!」

笑い合う2人、気付けば他のファミリー達も談義していた。

「ああ、そういや俺のファミリー紹介してなかったな。あそこの金髪に金の鎧の外国人いるだろ?あれ、アリス。人間」
「人間!?ってことは、ホムンクルスなのか?」
「いや、あいつは人間の生き残り俺達……いや、お前達の子孫だな」
「滅んだって言っても何人かは生き残ったんだな」
「まぁ、決して楽な道ではなかったらしい」

それからカイトは1人1人紹介していく。

ハクビシンの獣人、ライカ。
男の子で8歳くらいの見た目、茶色の体に猫のような耳が頭に生えている。
顔は人に近いが手足は肉球があり、獣に近い。

タイムウォーカーという組織に所属する、火箱エン。
アリスと同い年のような見た目でローブに三角帽をつけている冴えない雰囲気の男子。
人間で炎を扱う事が出来るらしいがまだまだ未熟。

整備士の東雲シノン。
シノと同い年。モコモコとしたコートと短いスカートを履いている、全体的におっとりとしている女の子。
髪の毛もモコモコとウェーブしており、頭の上にベレー帽を被っている。
こちらも人間の生き残りらしい。

剣闘士のデルドルド。
ムキムキの発達しすぎた筋肉を晒す圧倒的な武闘派。
2本の黒い角が生えた、悪魔。
野心に溢れた表情をしており、見た目は20代前半。
ギラギラとした目で、アリスを見ている。アリスは目を合わせれば殺られると、絶対に目を合わせない。

歌姫、歌野メロ。
機人の世界で最も人気のあったボーカロイド。
見た目は18歳のアイドルといった感じで機械とは思えない、完全な人間。つぶらな青い瞳、ショートカットの髪の毛にヘッドホンをつけている。体のラインに合わせてひっつくようなアイドルらしい衣装。スカートが風に揺れひらひらと舞っている。

料理人の獣人、リアン。
獣人の世界で下積みをしていたコック見習い。
黒髪ショートヘアの清純系女子で、カッターシャツに黒いロングパンツを履いている。カッターシャツのボタンが飛んでいきそうなほどふくよかな胸を持っている。
おっとりとした雰囲気で、完全に人間の見た目だが、控えめな丸い耳が頭の上に2つのっている。
熊の獣人らしい。

ケアロボット、ナノ。
銀でできたボールのような見た目をしていて、何も喋らない。
コロコロと転がるだけだが、仲間が傷つくと、仲間の元に転がり触れると癒しの光が生まれ治療する。
顔などもなく、ただのボールにしか見えない。

「歌姫に、料理人……!?なにリア充してんだよ!!」
「いやいや、そういう目では見てねぇよ」

                    ***

異世界でのクラスメイトの会話という奇妙な光景の裏で、美しい兄妹の再開シーンがあった。
シノは妹に抱きつき再開を喜んでいたが、シノンはぼ~っと遠くを見ている。

「シノン大丈夫だったか!?」
「うん、カイトお兄ちゃんが助けてくれたから」
「カイトお兄ちゃん!?お兄ちゃんはお俺だけだろ!?」
「ん、お兄ちゃんはお兄ちゃん。カイトお兄ちゃんはカイトお兄ちゃん」
「だから、お兄ちゃんは!」

終わらないやりとりを永遠とする兄妹。
それを傍目に金髪のアリスとハクが会話していた。

「おお、お主が龍族か……美しいな」
「ありがとう……!お姉さんも、綺麗だね!」
「いや、面と向かって言われると照れるが、ありがとう。龍族と話が出来るだけでも幸せだ」
「私も人間と話すのは二回目かな……?よく生きてたね!」
「お陰さまでなんとか生き延びているよ」
「ということは、ニッポニアにいたの……?」
「ああ、そうだ。騎士をしていた」
「なるほど……!龍の巣が近いから誰も襲ってこないもんね……!」
「うむ。まぁ、その分大変だったこともあるが……」
「ふーん……そうなんだ!」

                    ***

アリス(女子)と、ハクもまたガールズトークに花を咲かしているようだとアリス(男)は思った。
ぼーっと、しているとカイトはにやっと笑い話しかけた。

「ここで会ったのも何かの縁。ここは手を組まねぇか?」
「どういう事?」
「シノンの故郷……つまりここが危ねぇ」
「えっ……」
「ギリアムファミリーが狙ってるらしい、明日戦争が起きる」

神社を包む冷たい風が2人の間を通り抜ける。
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