現実世界でも異世界でも最弱の俺が最強として扱われているのはどう考えてもおかしい。

友樹 みこと

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雲のアトリエ

自分達が弱体化してまで、天使を救うなんてどう考えてもおかしい

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「お前と共闘……!?」
「ああ、どちらにせよそうなるはずだったんだ。だってよ、お互いファミリーに頼まれんたんだ。ここを救って欲しいってな」
「いや、俺はそんなこと頼まれてねぇよ?」
「誰がお前なんかに頼むかよ!俺だけで十分だ!」

シノは妹を抱きしめながら、嫌悪の眼差しでアリスを睨む。
(あの性格で助けてくれとは言えないか……)
しかし、シノは部隊を整えさせたり、ファミリーに気遣いをしていた。万が一戦闘になった時のための予防線を張っていたのだ。
助けに行く……?自分が?シノの言う通り自分に力などない。助けるとしてもそれは仲間達だ。
自分は所詮足枷に過ぎない……。

「ちょっと時間をくれ」
「なぜだ?」
「ファミリーに聞かないと。置いてきてるんだ、仲間を」
「なるほど。わかった。明日の朝、9時まで待つ。来なくても、俺らだけでなんとかするだけだしな」

にっしし。
無邪気になんの含みも嫌味もなく笑うカイト。
彼には裏がない。本当にアリスがいてもいなくても、ギリアムファミリーに立ち向かうのだろう。

「ああ、その時は頼む」
「お前のこと、よく知らなかったけどさ……いや、やっぱいいか。また明日な」

そう言って元クラスメイトは仲間を引き連れ、来た方と反対側へ歩いていく。
シノは妹との別れを惜しみ、アリス達の元へとりあえず残った。
鯨の管理や、置いてきたファミリーの事を気にしたからというのもあるが、何より妹が拉致されたのではなく、自らの意思でアクアファミリーに加わっていたということにひとまず安心できたことが大きかった。



                    ***


アクアファミリーと解散した、アリス、クラリア、ハク、シノは鯨へとすぐに戻り皆の様子を見に行った。
 留守番をしていた、幼女クラリス、メイドライリ、生徒会長クリム、幼女フレイヤ、高校生ジェードは、シノが帰ってきたことに驚いていたが、事情を説明するとすぐに納得した。
そして、明日シノの故郷である雲のアトリエにギリアムファミリーが襲来する旨を伝える。

「目的はなんだ?なぜわざわざ雲のアトリエを攻める?」
「おそらくノアの方舟が目的だと思うぜ」
「ノアの方舟……聞き覚えがありますね」
「明日完成するんだ、俺達整備士が20年かけて作り上げた技術の集大成。巨大飛行型移民船ノアの方舟。その価値は値段にすれば国が3つくらい買えるんだ。そりゃ、誰だって欲しいだろ?」
「ということは、ノアをギリアムから守ればいいのね♡」
「簡単に言うけど……ギリアムは俺らでも手を焼いてるんだ。神憑きの恩恵を受けてる俺らでも……」
「神憑き……?」
「神憑きってのは、神様の依代になっている人間のこと。カイトは海神様、俺らは雲神様の依代なんだ。その神様の力、神気を使って身体能力を上げたり、神様に由来する特殊な力を使えるんだ。例えば……」

パチンと指を鳴らすとシノの指からモクモクと指先サイズの雲が現れる。雲はアリスの前をふわふわと浮き、シャボン玉のように弾けた。

「おお……すげぇ」
「一応雷おこしたり、雨降らせたり、雲自体で攻撃したりできる。神様によっては、1人だけに憑く奴もいる反面、うちの雲神様みたいに、国民誰しも平等に力を与える神様もいる」
「趣味の悪い話だ」
クリムは苛立ちのこもった声でぼそっと言う。
「それ、どういう意味?」
「人間に勝ち目があまりにも無くなったから、暇潰しに神とやらは人間に肩入れしているのだ。虫唾が走る」

クリムは神があくまでも1次元上で操っているという構図に対して、苛立ちを覚えていた。

「神憑きが手に負えない事件……私達が解決しようじゃない」「クラリス?」

クラリスは、成人の姿になったクラリアを真っ直ぐ見据えた。クラリスは離れている間不安だった。初めて別々になりたった1本の糸だけで繋がっていた間何が起きるか、全く想像もできなかった。離れてはいけない。
理由もない恐怖だけが、彼女の心を蝕んだ。だから、本来弱体化している今、わざわざ戦場に赴く必要などない。
しかし、クラリアと離れることの方がまずい。
そう考えた結果の発言だった。この言い方をすれば、自然と共同戦線になり、クリムが食いつく。

「なるほど、確かに」
「いや、待ってください。私達が前衛に出る理由など……!」
「そうです!私達は弱体化してるんですよ!?」
「私はどっちでもいいわぁ。どちらにせよ、楽しそう♡」

三者三葉の反応をするファミリー達、シノはやはり弱体化しているファミリーは足でまといになるといいはねる。
しかし、その言葉はクリムにとって逆効果だ。

「私達が足を引っ張ることなどない!どこであれ、私達は乗り越えられる!」

赤髪の生徒会長は、苛立ちを抑えきれず、シノを睨む。
アリスが険悪なムードを察知し、間に入った。

「や、やめろ!とりあえず作戦をだな……」
「わかりました。そこまで言われるなら行きましょう」
「ライリ……?」
「どうせ、行き先などないのです。魔族が天使を救う。これは面白い話ですよね?」
「た、確かにそんな話はあまり聞きませんが……」
「じゃあ……決まり!皆で、ギリアム食べるぞー!」

上機嫌で意気揚々と拳を突き上げる、ハク。
どうやら、アリスファミリーとアクアファミリーの共闘は実現するらしい。
アリスは苦笑した。


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