現実世界でも異世界でも最弱の俺が最強として扱われているのはどう考えてもおかしい。

友樹 みこと

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雲のアトリエ

雲上の戦火、アイドル1人で突然歌い出すなんてどう考えてもおかしい。

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「ふむ……ギリアムは来ない……か」
アリス・アイリス。アクアファミリー所属金髪蒼眼の黄金騎士。彼女は愛剣を地面に突き刺し仁王立ちして、島の端に立っていた。
アイリスは、カイトの指示で船がつくであろう島の最西にいる。

「本隊を叩け……か。相変わらず無茶を言う」

1人に先陣を切って本隊を叩けというボスの横暴に少し嬉しさを覚える自分は、カイトのせいで大分感覚が狂ってしまったようだ。

「私はこのファミリーで唯一の力も持たぬ人間……だが、鍛えて来た剣技見せてやろう。あの下らないマフィア共に」

アイリスは目を瞑り、その艦隊がやって来るのを待っていた。


                    ***


「そんじゃ、後は任せた!俺らはギリアムを直接狙う!」
「はっ!それだけ!?作戦とかは!?」
「んー!ねぇ!とにかく暴れてくれ!そんだけ!」
「はぁ!?テキトーだなお前!」
「ああ!あと、リアム……獣人の料理人に近付くな!!」
「え?なにそれ」
「料理されっかんな」

カイトはピースサインを突き出した後、ファミリー達を抱え足元に大きな波を生み出す。
波は意思を持つように宙に浮き、水版金東雲の如く空を飛んで島の前にたった一つ存在感を持つ暗雲に向かっていった。

「んー。共闘はなんだったのか」
「あの男かなりの雰囲気だったな。おそらく考えがあるのだろう」

ボスの後ろで話を聞いていたクリム達は、アクアファミリーの戦闘力の高さをひしひしと感じていた。
悪魔剣闘士ドルドレッドに関しては見知った顔であったし、他の部下(ボールを除く)にも確かな能力があるのは間違いない。

「じゃ、じゃあ皆とりあえず街を守ろう」
「その必要は無さそうですよ」
「えっ?」

ライリが指さすアトリエと呼ばれる雲の街では信じられない光景が広がっていた。


                    ***

「はぁああああい!みんな!げんきー!?」

「「「「げんきー!」」」」

「今日はメロの歌聴きに来てくれてありがとー!それじゃあ早速歌います!『ロックオン!』」

「「「うぉおおおお!」」」

機械族の歌姫、歌野メロ。
その歌は全異世界に響き、機人、魔人、獣人、種族関係なく魅了し熱狂的な支持者を持つ。

雲のアトリエの街の中心に忽然と現れ、自前のマイクを取り出す。
その場で争っていた、整備士とギリアムファミリー達は争う事を辞め途端にメロを囲むように整列し始めた。
街の存続よりも、ファミリーの目的よりも、歌野メロの歌の方が彼らにとっては重要なのだ。

【メロディーライン】

歌野メロがポツリとつぶやくと、メロの足元から五線譜が8本波状に民衆の足元へと伸びていく。
五線譜は観客の足元に広がりきると、歌野メロは歌い始める。
アップテンポなポップス。アイドルらしいテンポ感と明るさのある曲。サビになるにつれ徐々に跳ねるように音程もリズム高くなっていく。
『ロックオン!君の心に。ロックオン!君の言葉に!ロックオン!ロックオン!届けにいくよ!』

歌野メロが歌うと五線譜に音程にあった音符が並んでいく、やがて五線譜を埋め尽くした。
その瞬間、五線譜と音符は弾け飛びあたりにいた観客をピンクの燐光を包み込む。

「あなた達はもう、私の虜!さあ、いけぇえええ!」

「えっ?」

メロは新たにやって来たギリアムファミリー1人を指差すと、敵味方関係なく……

「「「「「「うおおおおおお!」」」」」」

「ええええええ!?」

襲いかかる。

「うんうん、喧嘩は良くないよね。歌で世界を平和にするんだ!」



歌で相手を洗脳するとかチートすぎる。
アリスは耳を塞ぐ事にした。
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