25 / 38
雲のアトリエ
雲上の戦火、アイドル1人で突然歌い出すなんてどう考えてもおかしい。
しおりを挟む「ふむ……ギリアムは来ない……か」
アリス・アイリス。アクアファミリー所属金髪蒼眼の黄金騎士。彼女は愛剣を地面に突き刺し仁王立ちして、島の端に立っていた。
アイリスは、カイトの指示で船がつくであろう島の最西にいる。
「本隊を叩け……か。相変わらず無茶を言う」
1人に先陣を切って本隊を叩けというボスの横暴に少し嬉しさを覚える自分は、カイトのせいで大分感覚が狂ってしまったようだ。
「私はこのファミリーで唯一の力も持たぬ人間……だが、鍛えて来た剣技見せてやろう。あの下らないマフィア共に」
アイリスは目を瞑り、その艦隊がやって来るのを待っていた。
***
「そんじゃ、後は任せた!俺らはギリアムを直接狙う!」
「はっ!それだけ!?作戦とかは!?」
「んー!ねぇ!とにかく暴れてくれ!そんだけ!」
「はぁ!?テキトーだなお前!」
「ああ!あと、リアム……獣人の料理人に近付くな!!」
「え?なにそれ」
「料理されっかんな」
カイトはピースサインを突き出した後、ファミリー達を抱え足元に大きな波を生み出す。
波は意思を持つように宙に浮き、水版金東雲の如く空を飛んで島の前にたった一つ存在感を持つ暗雲に向かっていった。
「んー。共闘はなんだったのか」
「あの男かなりの雰囲気だったな。おそらく考えがあるのだろう」
ボスの後ろで話を聞いていたクリム達は、アクアファミリーの戦闘力の高さをひしひしと感じていた。
悪魔剣闘士ドルドレッドに関しては見知った顔であったし、他の部下(ボールを除く)にも確かな能力があるのは間違いない。
「じゃ、じゃあ皆とりあえず街を守ろう」
「その必要は無さそうですよ」
「えっ?」
ライリが指さすアトリエと呼ばれる雲の街では信じられない光景が広がっていた。
***
「はぁああああい!みんな!げんきー!?」
「「「「げんきー!」」」」
「今日はメロの歌聴きに来てくれてありがとー!それじゃあ早速歌います!『ロックオン!』」
「「「うぉおおおお!」」」
機械族の歌姫、歌野メロ。
その歌は全異世界に響き、機人、魔人、獣人、種族関係なく魅了し熱狂的な支持者を持つ。
雲のアトリエの街の中心に忽然と現れ、自前のマイクを取り出す。
その場で争っていた、整備士とギリアムファミリー達は争う事を辞め途端にメロを囲むように整列し始めた。
街の存続よりも、ファミリーの目的よりも、歌野メロの歌の方が彼らにとっては重要なのだ。
【メロディーライン】
歌野メロがポツリとつぶやくと、メロの足元から五線譜が8本波状に民衆の足元へと伸びていく。
五線譜は観客の足元に広がりきると、歌野メロは歌い始める。
アップテンポなポップス。アイドルらしいテンポ感と明るさのある曲。サビになるにつれ徐々に跳ねるように音程もリズム高くなっていく。
『ロックオン!君の心に。ロックオン!君の言葉に!ロックオン!ロックオン!届けにいくよ!』
歌野メロが歌うと五線譜に音程にあった音符が並んでいく、やがて五線譜を埋め尽くした。
その瞬間、五線譜と音符は弾け飛びあたりにいた観客をピンクの燐光を包み込む。
「あなた達はもう、私の虜!さあ、いけぇえええ!」
「えっ?」
メロは新たにやって来たギリアムファミリー1人を指差すと、敵味方関係なく……
「「「「「「うおおおおおお!」」」」」」
「ええええええ!?」
襲いかかる。
「うんうん、喧嘩は良くないよね。歌で世界を平和にするんだ!」
歌で相手を洗脳するとかチートすぎる。
アリスは耳を塞ぐ事にした。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる