3 / 61
第1章 監獄の住人1-16
3
しおりを挟む「先生、先生、急患です。」
アデルは家中の人間に聞こえるように、
大声で叫んだ。アデルとしては銅鑼でも鳴らして回りたい気分だ。
寝ぼけた使用人や同僚の看護を仕事とするものが、
いっせいに起きて来た。
「なんだ、なんだ、うるさいな。」
アデルの主でありラビであるガブリエルは不機嫌そうだ。
しかし、アデルが無意味にこんなことをする馬鹿でないことや
いたずらをする人間でないことも知っていた。
ガブリエルはバケツに頭を突っ込むと10秒ほど息を止め
顔ををあげた。鼻から水が入り込みむせた。
タオルを取って顔と頭を拭くと、寒さが身に浸みた。
だが、かなり頭ははっきりしてきた。
アデルは寝ぼけた使用人に兄妹を案内するように言うと、
ガブリエルに青年から受け取った皮袋の中身を見せた。
何事かと思っていたが、ガブリエルも心臓が止まるかと思った。
信じられないほど大量の宝石だ。
「どうやって・・・手に入れたんだ。」
ガブリエルも思わずうめいていた。
アデルとガブリエルは気持ちを切り替え、青年から
できるだけ多くの情報を聞きだすことにした。
ガブリエルは心配そうに患者を診ると、深刻そうに言った。
「かなりの重病だ。栄養状態のよいところで、
長期間休養すれば命は助かるが、今までのような生活を続けるなら、
確実に命を落とすだろう。」
青年は言った。
「代金は宝石で払います。」
「ウム、わかった。」そういうとガブリエルは考え込んだ。
アデルは妹に話しかけた。
「おじょうちゃん名前はなんていうの?」
「グレースだよ。グレース・マクレガー。」
妹の答えを聞いた青年は仕方なく名乗った。
「お、俺は、ライアン・マクレガーといいます。」
「私としても救える命を救えないのはつらい、
だがこれだけの宝石を君が持っている理由を知らなければ、
受け取ることはできない。」
医者は暗に出所を言わないと妹を見捨てると言っているのだ。
「先生 宝石商の知り合いがいるらしく・・・」
「黙りたまえ、アデル君。」
わざとらしい医者とアデルの
掛け合い。
「ライアン君、君はこの宝石が何ポンドに相当するかわかるかね?」
ライアンは答えられなかった。
「もし盗品だと言うなら、私は君を突き出さねばならない。」
だが、君が正直に話してくれるのなら、グレースの身柄は保証しよう。
我が家で、治療が終われば、我が家に住み込みで働かせてもよい。」
ライアンは騙されているのではないかと思ったが、
妹の命がかかっている。必死に頭を回転させていた。
0
あなたにおすすめの小説
後の祭り
ねこまんまときみどりのことり
ライト文芸
母親を馬車の事故で亡くしたナズナは、馬車に乗っていた貴族の男性に、義理の娘として引き取られた。引き取られた先の子爵邸では、義母や義妹に傷付けられて泣いて過ごすこともあったが、懸命に生きていく。引き取られた裏には、別の理由もあったようで。
小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
生きるために逃げだした。幸せになりたい。
白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。
2020/9/19 第一章終了
続きが書け次第また連載再開します。
2021/2/14 第二章開幕
2021/2/28 完結
妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる