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第1章 監獄の住人1-16
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しおりを挟む「しかも、一般民衆の溜め込んだ宝石を奪っていく。
理由がわからんのだ。
小さな宝石に価値は無い、・・・はずだ。」
老人はそう言うと、ハイヤーハムシェルの言葉を待つように
黙り込んだ。
しばしの沈黙が流れる中、ハイヤーハムシェルの頭は
フル回転しすぎて、パニックになっていた。
先ほどの首と胴が離れると言う脅しにドキドキしながら
様子を伺っていた。ハイヤーハムシェルも実際、
物理的に首を斬られた人間を百や二百では利かない数を見てきた。
その理由は、些細なことも多い。
犯罪はもちろん、居眠りや、失敗、
身分の高いものに「態度が悪い」などと
言いがかりをつけられたり、枚挙に暇が無い。
それにこのラビなんだか迫力がある。
いつも行くシナゴーク(ユダヤ礼拝所」)のラビとは
明らかに違う。
落ち着いてきたハイヤーハムシェルは、
これは何か答えなければまずいな、などと頭を回転させる。
しかし、なぜ私にこんな話をするのだろう。
まったく意味が無いような気がする。
解決方法がわかるくらいなら、当の昔に進言している。
意を決し、思いつく限りを述べる。
「宝石は、我々ユダヤ人が鑑定しなければ価値がわからず、
盗まれても、奪われても、換金できない。」
「それは貴族であっても同じ、必ずカルテルに見つかるはずです。
ましてや小さな宝石など、貴族が隠れ持つ意味も、買う意味も無い。」
「故に我々は、宝石を主要財産としている。違いますか。
なぜ、そのような質問を。」
またしてもそのラビは答えずにこう言った。
「ふむ、まあ、仕方なかろう。私が言えるのは、
君もここで神と会話して、その言葉に耳を傾ければ、
何かに気がつくかも知れんな。」
「それでは私は帰るとするか。祈りは大切じゃよ。
長く生きたものからの助言じゃ。」
ハハハハハ、
そう言うと、わざととわかるくらい、
わざとらしく笑いながら
老いたラビは去っていった。
ユダヤ人の祈りの場シナゴーク、水を湛えたミグェを見つめながら
ハイヤーハムシェルは心の中でこう尋ねていた。
「全知の王 ヤハウェよ、あなたは見捨てられた。
全能の神 ナスィよ。驚くべき御業はどこにあるのでしょう。
勇者ギデオンへの奇跡、海を割かつモーセ王の力はどこにあるのでしょう。
シェマー・イスラエール・アドナイ・エロヒム・アドナイ・エカッド。」
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