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◇素敵な時間②
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「うるさいよ。今のは口説いてない」
ふたりは仲がいいのか、和久井さんは佐藤さんにぶっきらぼうに言い返し、他の人たちの笑いを誘った。
「別に口説いてもいいじゃないですか。こっちはこっちで飲みましょ?」
佐藤さんの隣には美里が座っている。
宣言どおり、彼女が佐藤さんの横槍を阻止しようとしているのだとわかった。
「ごめんね。アイツは飲み会大好きだから。今日も気合入っちゃって、あの調子」
ノリがいいだけで悪いヤツではないのだと、和久井さんが苦笑いの笑みをたたえつつフォローした。
「今日は飲み会だしプライベートだから“舞花ちゃん”って呼ぼうかな。“夏野さん”だと固いよね」
和久井さんの発言に驚いて、思わず飲み物を噴き出しそうになった。
初対面じゃないからいいよね? と笑顔で言われると、恥ずかしさとうれしさで顔が熱くなっていく。
彼にとっては他意はないのだと頭ではわかっているのに。
今日の飲み会は、自分のペースで進めていけるなどとは考えていなかったけれど、すでに和久井さんのペースだ。私は完全に翻弄されている。
「舞花ちゃんは、お酒はいけるほう?」
「あ、いえ、弱いですし、甘いやつしか飲めないです」
子どもっぽいと思われただろうかと気になりつつも、私は自分のマンゴーサワーのグラスを掲げた。
「そっか。……そういう女の子はわりと多いよね」
私の返事を聞いた和久井さんが、どうしてだか寂しそうに見えた。
愛想笑いの笑みを浮かべながらも、なにかを思い出したような表情をしていた。
もしかしたら私がまずいことを言ったのかもしれない。話題変えよう!
「和久井さんは、お休みの日はなにしてるんですか?」
自然な話題チェンジだ。そして、それは私が本当に聞きたいことでもあった。
「学生時代は友達と遊んだりしてたけど、今は溜まった洗濯をしたり、たまには自炊しようかと料理してみたり。普通だよ」
「和久井さんはなにかスポーツしてそうなイメージでした」
「ああ、昔はサッカーやってた」
サッカーかぁ……それは和久井さんらしい。
ボールを蹴っている姿は、めちゃくちゃカッコいいと思う。
「舞花ちゃんは?」
「え、えっと……その……」
まさか反対に聞き返されるとは思っていなくて、言葉に詰まってしどろもどろだ。
「“食べ歩き”ですかね」
「食べ歩き? 舞花ちゃんが? 意外だな。なにを食べに行くの?」
「おいしいラーメンです」
かなり驚かれたけれど、和久井さんが興味津々な表情をしてくれた。
「ひとりで行くの?」
「はい。SNSとかで評判になってるラーメンを食べたくなっちゃうんですよね。ちょっとくらい遠くてもお休みの日にそのラーメン屋さんまで行って、実際に味を確かめるんです」
「いい趣味だね。今度俺も誘ってよ。ラーメン大好きなんだ」
はい、と答えつつも、恥ずかしくて顔を赤く染めてしまう。
ラーメンなんて、女の子らしくない趣味だと自分でもわかっているのに、どうして正直に口にしたのだろう。
さっきの誘ってよって発言は、ふたりで行こうって意味に取れるけれど……
いや、きっと社交辞令だ。本気にしてはダメ。
でも、なんだかうれしい。
和久井さんが私と同じくラーメン好きなのも、たとえ社交辞令だとしても、今度一緒にと言ってくれたことも。
ふたりは仲がいいのか、和久井さんは佐藤さんにぶっきらぼうに言い返し、他の人たちの笑いを誘った。
「別に口説いてもいいじゃないですか。こっちはこっちで飲みましょ?」
佐藤さんの隣には美里が座っている。
宣言どおり、彼女が佐藤さんの横槍を阻止しようとしているのだとわかった。
「ごめんね。アイツは飲み会大好きだから。今日も気合入っちゃって、あの調子」
ノリがいいだけで悪いヤツではないのだと、和久井さんが苦笑いの笑みをたたえつつフォローした。
「今日は飲み会だしプライベートだから“舞花ちゃん”って呼ぼうかな。“夏野さん”だと固いよね」
和久井さんの発言に驚いて、思わず飲み物を噴き出しそうになった。
初対面じゃないからいいよね? と笑顔で言われると、恥ずかしさとうれしさで顔が熱くなっていく。
彼にとっては他意はないのだと頭ではわかっているのに。
今日の飲み会は、自分のペースで進めていけるなどとは考えていなかったけれど、すでに和久井さんのペースだ。私は完全に翻弄されている。
「舞花ちゃんは、お酒はいけるほう?」
「あ、いえ、弱いですし、甘いやつしか飲めないです」
子どもっぽいと思われただろうかと気になりつつも、私は自分のマンゴーサワーのグラスを掲げた。
「そっか。……そういう女の子はわりと多いよね」
私の返事を聞いた和久井さんが、どうしてだか寂しそうに見えた。
愛想笑いの笑みを浮かべながらも、なにかを思い出したような表情をしていた。
もしかしたら私がまずいことを言ったのかもしれない。話題変えよう!
「和久井さんは、お休みの日はなにしてるんですか?」
自然な話題チェンジだ。そして、それは私が本当に聞きたいことでもあった。
「学生時代は友達と遊んだりしてたけど、今は溜まった洗濯をしたり、たまには自炊しようかと料理してみたり。普通だよ」
「和久井さんはなにかスポーツしてそうなイメージでした」
「ああ、昔はサッカーやってた」
サッカーかぁ……それは和久井さんらしい。
ボールを蹴っている姿は、めちゃくちゃカッコいいと思う。
「舞花ちゃんは?」
「え、えっと……その……」
まさか反対に聞き返されるとは思っていなくて、言葉に詰まってしどろもどろだ。
「“食べ歩き”ですかね」
「食べ歩き? 舞花ちゃんが? 意外だな。なにを食べに行くの?」
「おいしいラーメンです」
かなり驚かれたけれど、和久井さんが興味津々な表情をしてくれた。
「ひとりで行くの?」
「はい。SNSとかで評判になってるラーメンを食べたくなっちゃうんですよね。ちょっとくらい遠くてもお休みの日にそのラーメン屋さんまで行って、実際に味を確かめるんです」
「いい趣味だね。今度俺も誘ってよ。ラーメン大好きなんだ」
はい、と答えつつも、恥ずかしくて顔を赤く染めてしまう。
ラーメンなんて、女の子らしくない趣味だと自分でもわかっているのに、どうして正直に口にしたのだろう。
さっきの誘ってよって発言は、ふたりで行こうって意味に取れるけれど……
いや、きっと社交辞令だ。本気にしてはダメ。
でも、なんだかうれしい。
和久井さんが私と同じくラーメン好きなのも、たとえ社交辞令だとしても、今度一緒にと言ってくれたことも。
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