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◇本気の恋を教えます⑧
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「宇田さんはもう帰るんですか? ずいぶん早いですね。花火、見ていかないんすか?」
駅方向に向っているので、宇田さんたちはもう帰るということだ。お祭りはまだ、始まったばかりなのに。
「ああ。妹が体調がすぐれないみたいで。来たいっていうから連れて来たけど仕方ないよな」
宇田さんが妹さんを気遣うように視線を向ける。
せっかく来たのにという言葉とはうらはらに、きっと心配しているのだ。
「遥ちゃんも今日は仕事だから来れないし。俺たちだけで楽しむのもなんだか気が引けるから、出店でお土産を買って帰れば満足だ」
竣もカッコいいけれど、宇田さんもかなりモテそうな気がする。
落ち着きがあって、包容力のあるやさしい人だと思うから。
「和久井は今からだろ?」
「ええ、そうです。今から出店を見て、花火を楽しんで、彼女を“お持ち帰り”する予定だったのに、ここでいきなりの足止めですよ」
「別に俺は引き止めて邪魔してるつもりはないよ」
竣にそう言われたからか、宇田さんは「じゃあ、早く行ってこーい」とヒラヒラ手を振りながら、妹さんと共に行ってしまった。
竣は再び私の手を引いて歩き出す。
「宇田さんと仲がいいのね」
「え? 仲良くないよ。普通かな」
「でも、やさしい感じだったし、素敵な先輩だよね」
「あの人はやさくないって! 職場じゃ鬼だ」
しかめっ面をする竣がおかしくて、歩きながら思わずクスクスと笑ってしまった。
「鬼なの?」
「ああ。仕事に関しては用意周到で抜かりがない。それに宇田さんには営業の“センス”がある。勘も鋭い。自身が、たゆまぬ努力の塊だから、後輩にも厳しい」
「あんなにやさしそうな感じなのに……」
「プライベートはよく知らないけどね」
仲良くないと竣は否定したけれど、私にはそうは思えない。
宇田さんのことを、先輩として尊敬しているのが今のでよくわかったから。
「素敵だね」
「え?! 宇田さんが素敵?!」
私がポツリとつぶやいた言葉に、竣がものすごく反応した。
「ふたりの関係が素敵だなって思ったの」
「ビックリした。舞花が宇田さんに興味を持ったのかと……」
「それはありえないよ。私は竣しか見えていないのに」
そこで会話が止まり、隣を歩く竣を見上げれば、竣はまっすぐ前を見据えながらも顔を少し赤くしていた。
もしかして珍しく照れているのだろうか。
ふたりであちこち出店を見て歩き、お祭り気分を満喫した。
「舞花、あっち行こ」
ヒューっと一発、最初の花火が打ち上がると、竣は私の手を引いて花火がよく見える場所へと移動した。
「うわぁ、綺麗だね」
花火独特のドーンという迫力のある音がする。
空に広がる色とりどりの花火に、私は感嘆の声をあげた。
「花火デートもいいな」
隣で花火を見ている竣も、とても満足そうだ。
私はふたりで仲良くデートできたこと自体が、本当にうれしい。竣と一緒にいるだけで心が満たされる。
駅方向に向っているので、宇田さんたちはもう帰るということだ。お祭りはまだ、始まったばかりなのに。
「ああ。妹が体調がすぐれないみたいで。来たいっていうから連れて来たけど仕方ないよな」
宇田さんが妹さんを気遣うように視線を向ける。
せっかく来たのにという言葉とはうらはらに、きっと心配しているのだ。
「遥ちゃんも今日は仕事だから来れないし。俺たちだけで楽しむのもなんだか気が引けるから、出店でお土産を買って帰れば満足だ」
竣もカッコいいけれど、宇田さんもかなりモテそうな気がする。
落ち着きがあって、包容力のあるやさしい人だと思うから。
「和久井は今からだろ?」
「ええ、そうです。今から出店を見て、花火を楽しんで、彼女を“お持ち帰り”する予定だったのに、ここでいきなりの足止めですよ」
「別に俺は引き止めて邪魔してるつもりはないよ」
竣にそう言われたからか、宇田さんは「じゃあ、早く行ってこーい」とヒラヒラ手を振りながら、妹さんと共に行ってしまった。
竣は再び私の手を引いて歩き出す。
「宇田さんと仲がいいのね」
「え? 仲良くないよ。普通かな」
「でも、やさしい感じだったし、素敵な先輩だよね」
「あの人はやさくないって! 職場じゃ鬼だ」
しかめっ面をする竣がおかしくて、歩きながら思わずクスクスと笑ってしまった。
「鬼なの?」
「ああ。仕事に関しては用意周到で抜かりがない。それに宇田さんには営業の“センス”がある。勘も鋭い。自身が、たゆまぬ努力の塊だから、後輩にも厳しい」
「あんなにやさしそうな感じなのに……」
「プライベートはよく知らないけどね」
仲良くないと竣は否定したけれど、私にはそうは思えない。
宇田さんのことを、先輩として尊敬しているのが今のでよくわかったから。
「素敵だね」
「え?! 宇田さんが素敵?!」
私がポツリとつぶやいた言葉に、竣がものすごく反応した。
「ふたりの関係が素敵だなって思ったの」
「ビックリした。舞花が宇田さんに興味を持ったのかと……」
「それはありえないよ。私は竣しか見えていないのに」
そこで会話が止まり、隣を歩く竣を見上げれば、竣はまっすぐ前を見据えながらも顔を少し赤くしていた。
もしかして珍しく照れているのだろうか。
ふたりであちこち出店を見て歩き、お祭り気分を満喫した。
「舞花、あっち行こ」
ヒューっと一発、最初の花火が打ち上がると、竣は私の手を引いて花火がよく見える場所へと移動した。
「うわぁ、綺麗だね」
花火独特のドーンという迫力のある音がする。
空に広がる色とりどりの花火に、私は感嘆の声をあげた。
「花火デートもいいな」
隣で花火を見ている竣も、とても満足そうだ。
私はふたりで仲良くデートできたこと自体が、本当にうれしい。竣と一緒にいるだけで心が満たされる。
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