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supplementary tuition番外編
秘密は蜜より甘く 6
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人は生きながら誰もが大なり小なり秘密を持つ。
秘密を秘密のままにしようと、嘘をつき、その嘘の露見を防ぐ為に嘘を重ねる。
いつしか秘密は嘘に塗り固められ、重苦しく人を苛んでいくものだと夢月は思っていた。
マイナスのイメージしか持てなかったのだ。
だけれど、有都を知る度にその概念は変化している。
心を閉ざす秘密や人を欺く嘘ばかりではない、今ではそう思える。
秘密とは、誰かを守る為、何かを守る為の盾。
それが自分自身の保身であったり、大切な誰かを傷つけまいとするものだったりするのだろう。
傲慢な印象を与える前者に対し、後者は自己犠牲にも似た優しい庇護欲だ。
清水蓮は、果たしてどちらなのか…………
悠都から真実を明かされ、清水蓮が益々分からなくなった。
だから、言葉を交わす事に意義を感じながら不安もある。
冷ややかさを押し出すような狭い面会室は、アクリル板で仕切られ、その板の前にパイプ椅子が一つ置かれていた。
アクリル板の向こう側は、小さな窓から差し込む日差しが反射して良く見えないが、椅子に座る人影が二つ、手前と奥にある。
恐らく板の目の前、手前が清水蓮だ。
躊躇いがちに椅子に座ると、やっとアクリル板の向こうが見えた。
色素の薄い、何を写しているのか定まらない様な双眸がジッと夢月を見つめていた。
「えー、ガッカリ」
夢月と目が合ったとたんに、清水蓮が独りごちる。
どう声をかけようか、他愛もない挨拶を交わすべきなのか、夢月なりに様々な思いを巡らせ気を張っていただけに、夢月は気が抜け、更に呆れた。
だいたい、面会を希望しておいて第一声がそれなのか。
「じゃあ、帰ります」
「わー、ちょっと待って」
席を立った夢月に、半立ちになった清水蓮が焦ったように引き止める。
アクリル板についた手の、その手首の細さがやけに目についた。
かなり痩せたのかもしれない。
夢月は仕方なくまた腰を下ろし、息を吐いた。
「私に会わせないと黙秘を続けるって刑事さんを脅すなんて、清水先生らしくないですね」
「真崎夢月さん、僕はもう先生ではないよー」
清水蓮はへらりと笑い、相変わらずの口調を見せる。
真崎夢月と呼ぶ辺りから、入籍は知っているようだ。
「…………なぜ、私だったんですか?」
「あー、それね、アルトは絶対に来ないからだよ。だけど、夢月さんが来るんなら付いてくる可能性高いでしょ?ってね、読みは大外れ、だからガッカリなの」
「彼は今日のこと、知りません」
それまで浮ついたように緩んでいた蓮の表情が、意外そうに強張った。
夢月は少なからず、そんな清水蓮の表情は初めて目にした。
「なるほどねー、あの仲良しの刑事さんに直接頼まれたんだ」
「いえ、悠都さんに、お父さんに頼まれたんです」
悠都の名を聞き、清水蓮の表情から完全に余裕が消える。
身動ぎさえ許さない様なきつい眼光には、苛立ちや怒りが垣間見えた。
それが、清水蓮と言う人間の無防備な感情のようで、夢月はそっと固唾を呑む。
悠都がずっと隠し続けた真実が、その悲しい秘密が、清水蓮を守るのではなく傷付けていたのかもしれないと感じた。
秘密を秘密のままにしようと、嘘をつき、その嘘の露見を防ぐ為に嘘を重ねる。
いつしか秘密は嘘に塗り固められ、重苦しく人を苛んでいくものだと夢月は思っていた。
マイナスのイメージしか持てなかったのだ。
だけれど、有都を知る度にその概念は変化している。
心を閉ざす秘密や人を欺く嘘ばかりではない、今ではそう思える。
秘密とは、誰かを守る為、何かを守る為の盾。
それが自分自身の保身であったり、大切な誰かを傷つけまいとするものだったりするのだろう。
傲慢な印象を与える前者に対し、後者は自己犠牲にも似た優しい庇護欲だ。
清水蓮は、果たしてどちらなのか…………
悠都から真実を明かされ、清水蓮が益々分からなくなった。
だから、言葉を交わす事に意義を感じながら不安もある。
冷ややかさを押し出すような狭い面会室は、アクリル板で仕切られ、その板の前にパイプ椅子が一つ置かれていた。
アクリル板の向こう側は、小さな窓から差し込む日差しが反射して良く見えないが、椅子に座る人影が二つ、手前と奥にある。
恐らく板の目の前、手前が清水蓮だ。
躊躇いがちに椅子に座ると、やっとアクリル板の向こうが見えた。
色素の薄い、何を写しているのか定まらない様な双眸がジッと夢月を見つめていた。
「えー、ガッカリ」
夢月と目が合ったとたんに、清水蓮が独りごちる。
どう声をかけようか、他愛もない挨拶を交わすべきなのか、夢月なりに様々な思いを巡らせ気を張っていただけに、夢月は気が抜け、更に呆れた。
だいたい、面会を希望しておいて第一声がそれなのか。
「じゃあ、帰ります」
「わー、ちょっと待って」
席を立った夢月に、半立ちになった清水蓮が焦ったように引き止める。
アクリル板についた手の、その手首の細さがやけに目についた。
かなり痩せたのかもしれない。
夢月は仕方なくまた腰を下ろし、息を吐いた。
「私に会わせないと黙秘を続けるって刑事さんを脅すなんて、清水先生らしくないですね」
「真崎夢月さん、僕はもう先生ではないよー」
清水蓮はへらりと笑い、相変わらずの口調を見せる。
真崎夢月と呼ぶ辺りから、入籍は知っているようだ。
「…………なぜ、私だったんですか?」
「あー、それね、アルトは絶対に来ないからだよ。だけど、夢月さんが来るんなら付いてくる可能性高いでしょ?ってね、読みは大外れ、だからガッカリなの」
「彼は今日のこと、知りません」
それまで浮ついたように緩んでいた蓮の表情が、意外そうに強張った。
夢月は少なからず、そんな清水蓮の表情は初めて目にした。
「なるほどねー、あの仲良しの刑事さんに直接頼まれたんだ」
「いえ、悠都さんに、お父さんに頼まれたんです」
悠都の名を聞き、清水蓮の表情から完全に余裕が消える。
身動ぎさえ許さない様なきつい眼光には、苛立ちや怒りが垣間見えた。
それが、清水蓮と言う人間の無防備な感情のようで、夢月はそっと固唾を呑む。
悠都がずっと隠し続けた真実が、その悲しい秘密が、清水蓮を守るのではなく傷付けていたのかもしれないと感じた。
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