【R18】体に刻む恋のspell

神楽冬呼

文字の大きさ
31 / 44
supplementary tuition番外編

追憶の彼女 03

しおりを挟む
過去二度のキャンプファイヤー、一度目はその場にいなかった。
二度目は、炎越しに彼女を眺めた。
18才になるまでは想いを明かさない。距離も縮めない。
その炎は自分へのいましめを噛み締めるには都合の良いものだった。
揺らめく熱が時折視界を遮ながら、彼女の微笑みを照らし、その距離を知らしめる。

炎がやけに綺麗で嫌味なほどに鮮やかだった。

後夜祭のキャンプファイヤー、それは恋人のいない男子生徒たちには神聖で特別なもの。
軽く30年以上前から校内で語り継がれてきた口伝ジンクスである。

在校中にその炎を恋人と見なければ、生涯独身、運命の出会いには恵まれない、と言う。

それを頑なに信じる佐竹にとっては、今後の人生を脅かすほどに後夜祭のキャンプファイヤーは神聖な儀式なのだ。

「その炎、一人で見るになかにけり!」
「眉唾すぎ…………」

ジンクスを熱く語る佐竹を有都は受け流す。
信号が青に変わり歩き出した有都を追い越し、佐竹が前に出た。そして振り向くと、じろりと有都に非難の目を向けた。

「真崎、あのジンクス舐めてっと痛い目見るぜ」
「オレはどーでもいい」
「だよな、そうでしょうとも、あんな可愛いカノジョいたらそーなるわ!」

ホームセンターの入口で叫ぶ佐竹を横目に有都は素知らぬ顔で塗料コーナーを目指す。

ジンクスを信じてるか否かと問われたら、信じ込んではいない。
ただ炎越しに彼女を眺めながら「三度目は一緒に」そう思いはした。
隣に並んでそれを眺める事が、儚く奇跡の様に尊いことのように思えたのだ。

ゆうくん…………、有くんってばっ」

塗料の棚を眺めながら、思い耽っている有都の腕が不意に掴まれる。
聞き覚えのあり過ぎる鈴を転がすような声音に、有都は思い切り眉をしかめていた。

「もー、何度も呼んでるのにっ」

やっと有都を振り向かせた春香が、頬を膨らます。

「…………何の用?」
「用がないと呼んじゃダメなの?」
「見かけたからって声を掛け合う仲ではねーな」

腕を振り払う有都に、春香は不満げに顔をしかめた。
夢月から春香の事は聞いている。
蓮の一件を謝っていたと、春香なりに罪悪感を抱いているのだろうと、夢月は言っていたが…………

 …………そーは思えねぇな。

それだったら見かけたくらいでは声をかけてこないだろう。
それに倦怠期がどうのと夢月に吹き込んだ張本人だ。油断ならない。

「有くんは何してるの?私はね、学校祭の買い出しぃ」
「……………………」
「ねーねー、聞いてる?ねー、有くん」

無視を決め込みペンキの缶を手に取る有都の顔を、春香が覗き込もうとした時だった。

「あっ、いたいた!置いてくなよ、真崎ぃ、軽く迷子になったじゃんか」

バタバタと靴底を鳴らし佐竹が棚の間を走ってくる。
佐竹の方向からは春香が隠れて見えなかったらしい。近づいて春香が有都の影から顔を出し、慌てて足を止めた。

「え?あ? ──── えっ?!真崎の追っかけの??」

見覚えのあるその顔に佐竹は狼狽ている。
このタイミングで佐竹と立ち去ろうと有都が春香に背を向けたとたん、春香がガッシリとシャツの背後を掴んだ。

「はじめまして、幼馴染の春香ですっ」
「あれ?幼馴染なんだ」
「はい、そーなんです」
「オレは真崎のクラスメイトやってる佐竹まこと!よろしくね、春香ちゃん」

最初の狼狽えはどこへやら、幼馴染と聞いたとたんに佐竹は目を輝かせ距離を詰めてくる。
嫌な予感しかしない。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...