【R18】体に刻む恋のspell

神楽冬呼

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supplementary tuition番外編

初恋ほど無意識なものはない 01

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 真崎くんが、アレから少しおかしい…………

何やら物思いに耽る姿が増えたし、声をかけても上の空だったりもする。
かと思えば、熱を帯びた瞳で眺めてきたりする。
焦がれるように痛いくらい切ない視線は、自分が恋を自覚する前に授業中に向けられていたものと同じで、目が合うと逸らされる。

秘密を持った上に開き直り、挙句に打ち明ける前にバレてしまい、怒りを抑えようと父親の目前でキスをブチかましてしまったのだ。
だけれど、打ち明けるまでもなくお見通しだった有都は、あの後は怒るでもなく責めるでもない。
相変わらず悠都を邪険にしているから、気にしていない訳ではないだろうに…………

 …………ちゃんと話さなきゃな。

そう思っていた矢先のWデート、気分を変えられると思っていた。

「適当に注文しといて」

それは望ましくない方向へと悪化した。
様子がおかしいとは言え、決して機嫌は悪くはなかったはずなのに、急に、どのタイミングからか、有都は無言になっていた。

「なんだろねー、あれ」
「ヤキモチの暴走?」

春香と佐竹が顔を合わせ怪訝に眉をしかめている。
有都は普段は感情が掴みにくい。
冷静沈着、年齢の割に思慮深く状況判断に長けているのだ。それが全く余裕なく見える。

「二人共、ごめんね。あとは若いお二人で、ね」

夢月は財布から数枚千円札を取り出しテーブルに置くと、二人の反応を待つ事なく有都の後を追った。

「真崎くんっ」

丁度店を出ようとしている有都のシャツを掴み引き止める。
驚いたように瞠った目が振り返ると、夢月を見下ろし不思議そうに細められた。

「予定変更。デート行こ、二人だけで」

夢月の言葉に、有都はチラリと佐竹たちを一瞥してから口端に笑みを乗せる。

「…………どこ行く?」
「じゃあ、映画」
「映画かよ」

シャツを掴む夢月の手を握ると有都が歩き出す。
夢月がとりあえず思い付きで口に出した事に気付いているように、有都は小さく笑った。
観たい映画があった訳ではない。
映画館なら互いの距離も近い、二人で寄り添って話が出来ると思ったのだ。
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