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supplementary tuition番外編
初恋ほど無意識なものはない 02
しおりを挟む……………………見切り発車だったかも。
目の前にある席は夢月が知る映画館のシートではなく、まるで2人掛けのソファだ。
確かに寄り添って話をしたいとは思ったが、間に肘掛もなく、頭を隠せるほどにシートは高い、加えて隣の席とはパーテーションで区切られ、簡素な個室並み。
今までの人生において縁遠いリア充感が漂っている。
「なんか凄い席だね」
「空いててラッキーだったな、ペアシート」
場違いな空間に畏縮する夢月に有都が微笑むと「きゃっ」と前方の席から黄色い声が漏れる。
後ろも横も気にはならない仕様だが、前方席からは振り返ると丸見えの席だ。
二人連れの女子がチラチラと振り返り、密やかにはしゃいでいる。
いつものこと。
外にいると嫌でも有都の魅力を思い知る。
周囲からの羨望を受け流す事に以前より慣れてきてはいるが、それでもジリジリとした僅かな不快感が胸の底で妬きついていく。すでに落ち着いて話せる心境ではない。
有都はそんな周囲の目も意に介さずシートに背を預け、夢月の肩を抱き寄せた。
館内の照明はまだ落ちていない。
今から席に着こうと通路を歩く人もいる。
夢月は思わず蒸気した頬を隠す様に俯いた。
「夢月、構え過ぎ…………」
「だって、なんか目立ってる気がする。動物園の動物になった気分」
「あはは、誰も夢月を観に来たワケじゃねーし、気にし過ぎだって」
「皆んなは真崎くんを見てるのっ、私はオマケ」
「ちげーよ、映画観に来てんだよ」
「そう、なんだけど…………」
夢月が視線を前方に這わせると先程の女子と目が合う。
ひそひそとこちらを横目に見ながら囁き合っているようだ。粗方、どんな事を話しているのか想像できてしまう。
「……………………夢月、もしかして」
肩にあった有都の手が腰まで降りた。
数センチ先まで顔の距離を詰められ、夢月は狼狽る。
「何か期待してんの?」
家に居るともう狼狽る距離ではなくなったが、周りの視線を意識すると気恥ずかしさに頭の中まで熱くなる。
「ち、違うよ…………ただちょっと」
「ちょっと?…………」
有都の胸に手をついて夢月はほんの少し距離を稼ぐ。
余裕がないように見えた有都はすっかりいつもの調子で、気遣ったつもりでいた自分がすっかり翻弄されている。
「慣れてないから、こう言うデートみたいな」
「みたいじゃなくてデートだし、映画って言い出したの夢月だろ」
「仰る通りで…………、でもでも真崎くんみたいに恋愛スキル高くないから一緒にいるのを人に見られるとか、人前でこう言う距離になるとか、慣れてないだけで」
「恋愛スキルね、……………………」
感慨深気に呟いてからじっと夢月を見詰めると、何も言わずに有都は夢月から手を引いた。
離れた体温にホッとしたような寂しいような不思議な感覚を遣り過ごしたくて、夢月はホルダーに置いていたドリンクを手にとると、渇いた喉にむせる程に冷たいお茶を流し込んだ。
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