【R18】体に刻む恋のspell

神楽冬呼

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supplementary tuition番外編

初恋ほど無意識なものはない 06

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「いい加減、夫を真崎くん呼びは変だもんね…………私も真崎だし」
「真崎夢月だもんな」
「うんっ」

やっと名前で呼べた安心感からか、目の前に嬉しそうに微笑む有都がいるからなのか、満ち足りた気持ちに夢月ははっきり頷いていた。
呼ばれるとまだくすぐったい違和感のある、愛しい人と同じ姓。家族になった実感が深く染み入ってくる。
そんな夢月を見て、有都が失笑する。

「なんかもう、さっきまで気にしてた事が吹っ飛んだ」
「気にしてた事?悠都さんとの事?」
「あー、違う。そーじゃなくて、夢月の結婚観って言うか、永遠とわの愛について」
「後夜祭の裏ジンクス?それでなんで私の結婚観??」
永遠とわの愛、誓ったつもりなさげだったから」

ふいっと有都が目を逸らす。
夢月はあの時に交わした有都との会話を思い返す。

『オレたちはもう誓ったろ?永遠とわの愛』
『…………そうだった?』


「結婚って誓うもんだろ?永遠とわの愛」
「 ──── っあ!」

夢月は思わず叫んでから慌てて口元を押さえた。
考えのない軽率な返答をした事に気持ちが焦る。

「違うの、あれは一緒にキャンプファイヤー見てないって思ったからで、裏ジンクスの事でっ…………永遠とわの愛がないって訳じゃなくて、正直『恋』がどんな感じか分かったばかりで永遠とわの愛とか難しいのが本音だけど、だけどね」

声を潜めながら一気にまくし立て、夢月は一呼吸置いてから有都の視線を捕まえた。

「有都と、ずっと一緒に生きていきたい。おばあちゃんになっても隣にいたいし、来世があるならまた出逢いたい…………と思います」
「なんで敬語」

ははっ、と笑い有都が晴れやかな顔で頬を緩める。

「それに、それが永遠とわの愛だと思うけど」
「…………そう、でした」

言われてみれば、そうだ。
何より、それが有都の思う永遠とわの愛なら、それがいい。
夢月は有都の胸に顔を寄せ、目を瞑る。

今でも人目は気になる。
知り合いに遭遇するのは怖い。
歳の差をや世間の体裁を突き付けられる事に怯えている。
だけれど以前と違い、離別の恐怖はなくなった。
何があっても共に歩める自信がついたし、紛れもない夫婦と言う公約があるお陰だ。

「裏ジンクスは必要ねーな」

有都が夢月の身体を受け止めて、髪を指に絡ませる。

「でも、あながち馬鹿にできないかも、あのジンクス」
「そーか?」
「去年のキャンプファイヤー、私、有都と目が合ってるはずだもん」
「……………………え?」

有都が夢月の両肩を掴み顔を上げさせると、信じられないと言うように双眸を見張った。

「あの時、気付いてたのか?」
「さっきまで忘れてたんだけどね。と言うか、誰と目が合ったのか分かってなかったの」
「一瞬、炎が揺れた時だったしな」
「並んで見るより効果的だったかも。一瞬だけど同じ炎を一緒に見てたんだもん」
「そーだな…………」

有都が額へとキスをくれる。

「帰ろ、夢月」

そして首を傾けた有都の瞳が覗きこんできた。

「夢月にもっと触れたくて、限界…………」

全てを求め熱を孕むその瞳に、頷いてしまいたくなる。
二人だけの空間で、気兼ねなく触れ合いたい気持ちは夢月も同じだ。
だけれど、まだやり残したことがある。
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