Passing 〜僕達の「好き」〜

*花*

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「いらっしゃいませー!」

私達が入ると同時に、笑顔が素敵で、声が元気な女店員さんが出てきた。

「今日は何名様でしょうか?」
「あぁ、2人で」
「かしこまりました!では、あちらの席へどうぞ」

と、私達は窓辺の席へと案内された。椅子に腰かけ、慣れた手つきで、昊明はメニュー表をパラパラとめくった。すると、「あった」と嬉しそうに指さした。普段も、こんな感じなのだろうか。

初めて出会った時は、「無口」「冷徹」「怖そう」の三拍子が揃っていた。でも、仲良くなるにつれて、そのイメージも崩れていった。普通に話したり、遊んだりしていた。その内、だんだん昊明の本性が顕になっていって、今の昊明になった。でも、私が見ない間に何か変わっているのかもしれない。

私は、じっと見つめていると、昊明は頭に?マークを浮かべ、「ん、何?」と聞いてきた。「あぁ、ううん、何でもない」と適当にはぐらかし、私はチーズケーキを頼むことにした。
チャイムを鳴らすと、さっきの店員さんが「はーい」と明るく高い声を出して、こっちに駆け寄ってきた。

「ご注文はお決まりでしょうか?」
「えーっと……このプリンとコーヒーと……後はチーズケーキをお願いします」
「かしこまりました!ご注文は、プリン、コーヒー、チーズケーキでよろしいでしょうか」
「はい」
「では、少々お待ちください」

とキラキラと輝く笑顔とともに、ぺこりとお辞儀をしてから、店員さんは厨房へ駆けて行った。今さら思ったが、外見や中と、どちらも綺麗で清潔感があるカフェだなと思った。そして、おしゃれでレトロチックな雰囲気がある。そんなに人は混んでいなかった。

……結構好きかも。また、時間あったら昊明と一緒に……って、私、さっきから昊明のことしか考えてない……!?……そうだ、景瑠高校に来てから、全然周りの人と話せてなかった。そもそも、自分から話しかけにいくのが怖かった。勇気がなくて、引っ込み思案だから、隣の昊明としか話せてなかった。

あぁ、明日はどうしようか、とぼんやりと悩んでいると、「お待たせいたしましたー」と今度は別の店員さんがやってきた。

「プリンと、コーヒーと……チーズケーキでございます。ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「はい」
「では、ごゆっくりどうぞー」

とお辞儀をし、別のお客さんのところへ行った。

「やっと来たー!美味しいんだよなぁ~……」
「そうなんだ」
「うんうん……あぁ、時雨も食べてみる?」
「……え?いいの?」
「うん。じゃ、口開けて?食べさせてあげるからさ」
「……うん!?」

昊明はプリンを1口分すくった。そして、私の方に突きつけてくる。幸い、まだ食べていなかった。……ん?どっちにしろこれって……関節キスになるのでは!?しかも、あーんって……いや、絶対正体バレてるでしょ。私があなたの幼なじみだって……

私は恐る恐るそのプリンに近づき、小さく口を開けた。すると、「はい」というちょっぴり甘い声と同時に、プリンが口の中へ運ばれた。口の中に甘いバニラエッセンスの香りと、ほろ苦いカラメルソースが残る。

「……ん!美味しい!」

とは言ったものの、周りの冷ややかな視線が少し気になった。いや、気にしすぎなのかもしれない。けど、何か怖かった。でも、ともかく人前でよく頑張ったぞ、私。
いやそれより、本当にこのプリン美味しい。今まで食べてきた中でもダントツで1番だ。
「このプリン美味しいね」ともう一度言うと、昊明は「だろぉ?」と自信に満ち溢れた満足気な顔をした。自分で作ったわけじゃないのにな、そう思いながらも、私は少し微笑ましく思った。

「……あ、なぁなぁそのチーズケーキ食べさせてよ、あ」

そう言うと、軽く口を開けて私の「あーん」を待機していた。

……もう、これ本当のじゃん。あぁ、これが素の姿だったらなぁー……

私は、あーぁと心の中で、後悔と悲しみの混じったため息を吐いた。そして、渋々1口分のチーズケーキを取り、昊明に食べさせた。
「ん、上手い」と口角を上げ、ふふっと綻んだ。綻んだ顔を見ると、何だか気持ちが和らいでいくような気がした。さっきの気持ちも全部流されていく。

……今日で、一気に距離が縮まったなぁ~……初日でこうなるとは……

この後どうなるんだろうかと、ぼやっと考えながら、私は残りのチーズケーキを頬張った。





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