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72. 現実を突き付けてでも…

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「…といっても、大抵のハンターがそうだ。
ここが元からソロダンジョンなのであれば、もう少し難易度は下がっていたんだろうけど…
このダンジョンは、全300体の手下ゴブリンと、一体の王…
つまり、ゴブリンの群れの討伐がクリア条件だ。
つまり、君はボス戦に入らないといけないんだが…君の今の力量だと、絶対に無理だ」

「うっ…で、でも…僕は…」

少年はなにか事情があるかのように、食い下がらなかった。

「君の武器はなんだ?」

「こ、これです…」

【素朴な鉄の短剣☆1】
ハンターショップで購入した初心者用の装備。

追加効果はなし、刃も欠けているから、恐らくこれは初心者というより…模擬戦とか、訓練用の剣…だな。
となると、これで初心者がゴブリンを斬るのは難しい。
加えて、ゴブリンキングなんてのは以ての外…か。

「…うん、やっぱり攻略は出来ない。
良いか?この短剣は、訓練用のものであって戦闘用のものでは無い」

「…え?」

そう伝えると、少年は不思議そうに耳を傾ける。

「まず、刃が欠けている…というより、これは潰したんだろうね。
つまり、切れ味自体は皆無なんだ。
俺みたいなハンターなら…ザシュッ…
こんな感じで、切れるんだが…まぁ、この方法は特殊で君には使えないんだ。
だから、君は…そうだね、まずは装備を整えて、レベル上げをするところからだ」

この子のステータスは…うーん、貧弱…といっても、まぁ強い方ではあるか…
んで、スキルは…解体と短剣術の2つ。最低限、といった所だな。
んでもって、称号に財閥の息子ってあるから…子遊び程度、ねぇ…

「悪いことは言わない。ここの攻略は諦めて、もう少しランクの低いソロダンジョンから入ることだ」

「…僕には、お金が必要なんです…!」

そう叫び、少年は森の中へと走っていった。
しかし、その数秒後…少年の走った方から、大きな悲鳴が上がる。

「ビクッ…今のは…チッ…だから言ったんだろうが…ダダダッ」

…彼駆け付けた先には、見た事のない、黒いほっそりとしたゴブリン立っていた。

亜種、変異種…いや、新種?キングの進化先、か…オーラ的にも、キングよりかは上だろう。

「…ザンッ!」

「…え?」

それは、突然のことだった。彼が剣を軽く一振すると、さっきまでそこに居た筈の黒い魔物が消えていた。というよりも…その後ろにあった地形ごと、だった。

「…少年、ダンジョンにて焦りは禁物だ。
今後は助けないから気を付けろ」

そう言い放ち、彼は消えた地形の下に降りていった。
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