31 / 70
第2章 再会
熱を帯びる夜
しおりを挟む——夕方までのひととき。
久しぶりに、誰の目も気にせずに過ごせた時間だった。
屋敷の庭を散策し、昔のように何気ない会話を交わしながら、
気づけば昔の関係に戻ったかのように自然に笑い合っていた。
そして、夜が訪れ——
カトリーナは、ヴィクトルの屋敷の寝室にいた。
薄暗い部屋の中、
ヴィクトルの手が彼女の腰を抱き寄せる。
「……まだ帰るって言わねぇのか?」
低く、どこか甘く笑いを含んだ声が落ちる。
カトリーナは、腕をヴィクトルの首筋に回しながら、
わずかに目を細めた。
「……あんたは帰れって言わないの?」
ヴィクトルは、クスっと笑うと、
そのまま彼女の唇を塞いだ。
——深く、甘く。
彼の舌がゆっくりと絡み、
吐息が漏れるほどに、口内を弄るように貪る。
カトリーナも応えるように、ヴィクトルの後頭部に指を絡ませた。
(……止まらない)
そんな考えが頭をよぎる前に、身体がヴィクトルを求め始めていた。
ヴィクトルの腕が、カトリーナの太ももを掴む。
「……っ」
次の瞬間、ふわりと身体が浮いた。
——抱き上げられる。
カトリーナが驚いたように息を呑むと、
ヴィクトルは軽く笑って、そのままベッドへと彼女を下ろした。
「……意外と軽ぇな」
カトリーナは、僅かに睨むようにヴィクトルを見上げたが、
それすらも彼は楽しそうに受け止める。
そして——
「ほら、もう逃げられねぇぞ?」
カトリーナの背後にあるクッションと壁。
完全に身動きが取れなくなる位置に押し込まれる。
ヴィクトルは、彼女の膝の横に手をつき、
顔を近づけながら囁いた。
「……俺ばっかり待たされてたんだからな」
言葉の意味を考える暇もなく、
再び深いキスが降ってくる。
ヴィクトルの手が、カトリーナのブラウスのボタンをゆっくりと外していく。
最初は、焦らすように。
ひとつひとつ、慎重に。
「……」
カトリーナは、ヴィクトルの動きを止めようとはしなかった。
むしろ、その手の動きに誘われるように、
指先が彼のシャツの襟元を掴む。
ヴィクトルは、微かに笑うと——
「……そんな顔するなよ」
ブラウスが完全に開かれ、
キャミソール越しに露わになった柔らかな胸元へと唇を寄せた。
「っ……」
カトリーナの息が、僅かに詰まる。
キャミソールの薄い布地を通して、
彼の唇の熱が、直接肌へと伝わってくる。
「……こういうとこ、やっぱり綺麗だな」
ヴィクトルの声が、いつもよりも低く、甘く響く。
——次の瞬間。
彼の唇が、胸の谷間に落とされた。
「……っ」
温かく、湿った感触。
カトリーナの指が、シーツを掴む。
そのまま、ヴィクトルは舌を滑らせ、
ゆっくりと赤く滲むような跡を残す。
「……これで、ちゃんと”俺のもん”って分かるな?」
カトリーナは、熱に浮かされたように目を細め、
ヴィクトルの髪をそっと撫でた。
「……最初から、そんなの……」
「ん?」
「……決まってるじゃない」
ヴィクトルは、一瞬驚いたように彼女を見つめ——
次の瞬間、さらに強く、深くキスを落とした。
——夜は、まだ終わらない。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む
浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。
「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」
一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。
傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて
木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。
前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)
君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!!
打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる