13年ぶりに再会したら、元幼馴染に抱かれ、異国の王子に狙われています

第4章 恋と権力の果てに

決戦前夜——カトリーナとヴィクトルの誓い

カトリーナは、部屋を出た後、  
まっすぐに来賓館を後にした。  

夜風が冷たく肌を撫でる。  
だが、彼女の胸の中には、熱い怒りが渦巻いていた。  

——もう、待っているだけではいられない。  

ルイは、確実に仕掛けてきている。  
彼はもう、半端な手段ではなく カトリーナの未来そのものを奪おうとしている。  

「……ヴィクトル」  

その名を呟いた瞬間、  
カトリーナは、自分の行き先を決めていた。  

今、彼の元へ行かなくてはならない。  

ルイとの戦いは、  
ヴィクトルと共に迎えなければならない。  




ヴィクトルの邸に足を踏み入れた時、  
すでに彼は、カトリーナが訪れることを予期していたかのように待っていた。  

彼は書斎の机に座り、  
冷えたウィスキーを傾けながら、彼女を見つめる。  

「……遅かったな」  

「殿下の策略に付き合わされていたのよ」  

カトリーナがそう言うと、ヴィクトルは面倒くさそうに眉をひそめた。  

「何を吹き込まれた？」  

「……私を王国へ戻すつもりよ」  

ヴィクトルは、その言葉に小さく舌打ちをした。  

「やっぱりな」  

「それだけじゃないわ」  

カトリーナは、静かに机に手をついた。  

「殿下は、あんたを政治的に孤立させようとしている。 
　そして、私の商談にも圧力をかけている」  

ヴィクトルの目が細まる。  

「……つまり、"お前が王子の庇護下に戻れば全てが解決する"とでも言ったんだろ？」  

「ええ。まあ、典型的な"囲い込み"ね」  

カトリーナは、冷めた声で答える。  

ヴィクトルはグラスを置き、ゆっくりと椅子から立ち上がった。  
そして、カトリーナの正面に立ち、じっとその瞳を見つめる。  

「お前、行くつもりか？」  

リリスは、一瞬だけ黙った。  

それは「迷い」ではなかった。  
ただ、どう答えようか考えていただけだ。  

「……行かないわ」  

即答だった。  

「私は、誰の庇護下にも入らない。  
　私が守るのは、私のもの。  
　私は、私の意思でここにいる」  

ヴィクトルの目が、微かに揺れた。  

——13年前、彼女は"俺を選ばなかった"。

でも今、彼女は"はっきりとここにいる"と宣言した。  

ヴィクトルは、口角を上げる。  

「そうか」  

彼は、リリスの腰を引き寄せた。  
唐突に、力強く、迷いなく。  

「なら、お前は俺のものだって、今ここで証明してやる」  

「……何を——」  

次の瞬間、彼の唇が落ちてきた。  

強引に、深く、逃げられないほど密着したキス。  
腕の力は強く、カトリーナの体を離さなかった。  

「——っ」  

一瞬、抵抗しようとしたが、すぐに力が抜ける。  
彼の舌が入り込み、甘く絡み合う。  

（……もう、逃げる理由なんてない。）  

カトリーナは、自らヴィクトルの背に腕を回し、  
彼を受け入れた。  

長い、長い口づけの後、  
ヴィクトルはカトリーナの耳元で囁く。  

「どこにも行かせねぇよ」  

「……ええ」  

「王子に何をされようが、俺がお前を守る」  

「……それは、私のセリフよ」  

カトリーナは微笑んだ。  

「私は、私のやり方で、殿下との闘いを終わらせる」  

ヴィクトルは、彼女の瞳を見て、確信した。  

この女は、俺の隣で戦うつもりだ。

それなら——  

「いいぜ、2人で徹底的に叩き潰してやる。」 

カトリーナとヴィクトルの間に、  
ようやく"並び立つ"という覚悟が生まれた。  

2人の戦いは、これから本格的に始まる。  

——決戦の幕が、上がる。