13年ぶりに再会したら、元幼馴染に抱かれ、異国の王子に狙われています

第4章 恋と権力の果てに

決戦

　——王子の寝室に、重い緊張が張り詰めた。  

　ヴィクトルは、鋭い眼差しでルイを睨みつけたまま、剣を低く構えていた。  
　一方のルイは、余裕の笑みを浮かべながらも、  
　その目には危険な光が宿っていた。  

　「……ふん、単身で乗り込んできたか」  

　ルイは、ゆっくりと立ち上がり、  
　まるで挑発するようにカトリーナの肩を抱いた。  

　「僕の腕の中にある女を取り戻したくて、  
　ここまで無様に足を運んだわけか」  

　ヴィクトルの目が鋭く光る。  

　「……手を離せ」  

　ルイは、面白がるようにカトリーナの髪を指で梳いた。  

　「お前がここに来る前に、  
　この女の唇も肌も、すべて俺のものになっていたら……どうする？」  

　カトリーナは、静かに目を細めた。  

　「……私の意思を無視して、  
　何かをしたとでも言いたいのなら、今すぐ死を覚悟しなさい」  

　ルイは、その言葉に笑みを深めた。  

　「お前の意思？　そんなもの、何の意味がある？」  

　ヴィクトルの指が、柄にかかった。  

　「……今すぐ、その手を離さなければ、  
　お前をこの場で切り捨てる」  

　ルイの唇が、皮肉気に歪む。  

　「そんなことで戦争を起こす気か？」  

　ヴィクトルの瞳が冷え切る。  

　「お前がカトリーナに何かをするなら、戦争だろうが何だろうが関係ない。  
　俺は、お前を殺す」  

　空気が、一瞬で凍りついた。  

　ルイは、一瞬だけ黙り込んだ。  

　そして——  

　「……なるほど、"本気"というわけか」  

　ルイは、リリスの肩から手を離し、  
　そのままゆっくりと向き直った。  

　「いいだろう」  

　ルイは、剣を抜く。  

　「お前が、僕よりふさわしい男だと証明できるなら、  
　カトリーナを連れて行くがいい」  

　ヴィクトルは、すでに一歩前に踏み出していた。  

　「……証明するまでもない」  

　そして——  

　剣が閃く。  


　——銀の刃と刃が、激しくぶつかり合う。  

　ルイの剣は鋭く、  
　彼がただの甘い王族ではないことを示していた。  

　しかし——  

　ヴィクトルの剣は、それをさらに上回っていた。  

　彼は最初の一撃で、ルイの刃を弾き、  
　流れるように踏み込む。  

　「っ……！」  

　ルイは、かろうじて後退して体勢を立て直す。  

　「……なるほど、お前のは"戦場を知る剣"だ」  

　ルイは、再び構えながら笑った。  

　「だが、僕もそう簡単には負けるつもりはない 」

　「……お前が、"俺と渡り合える"と本気で思ってるのか？」  

　ルイは、静かに息を吐いた。  

　そして——  

　「いや。」  

　瞬間、彼の剣の軌道が変わる。  

　——標的は、カトリーナ。  

　ルイは、ヴィクトルの方へ刃を向けた。  

　「僕が勝てないのなら、"お前のもの"を壊せばいい」  

　ヴィクトルの表情が、わずかに歪む。  

　「——やれるものなら、やってみろよ」  

　ヴィクトルの瞳が、揺らぐことなくルイを捉えた。  

　ルイの剣が振り下ろされる瞬間——  

　「——遅い」 

　ヴィクトルの剣が、その刃を受け止め、  
　強引にルイの剣を弾き飛ばした。  

　——ガシャン！  

　剣が床に転がる音が響く。  

　ルイは、信じられないようにヴィクトルを見つめた。  

　「……っ、貴様……！」  

　ヴィクトルは、冷たい目でルイを見下ろした。  

　「お前は、"俺のもの"に手を出しすぎた」  

　そして——  

　ヴィクトルの拳が、ルイの顔面を打ち抜いた。

　ルイの身体が、床に叩きつけられる。  

　ヴィクトルは、剣を収め、  
　ゆっくりとカトリーナの方へと向き直った。  

　「……怪我は？」  

　カトリーナは、微かに笑った。  

　「この程度で、私がやられると思って？」  

　ヴィクトルは、フッと笑った。  

　「……いい女だな」  

　カトリーナは、彼の言葉に目を細めた。  

　「ええ。"いい男"を選んだから」  

　ヴィクトルは、無言でカトリーナの腰を引き寄せ、  
　そのまま彼女の唇を奪った。  

　ルイは、床に倒れたまま、それを見つめるしかなかった。  

　「……負けた、か……」  

　その呟きは、虚しく闇に溶けていった。  

　——この戦いは、ヴィクトルとカトリーナの勝利で幕を閉じた。