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隣にいたのは、ずっと君だった
しおりを挟む春の風が、制服の袖を揺らしていた。
もうすぐ卒業。
クラスの空気は、どこか浮ついていて、
未来の話ばかりが飛び交っていた。
アナベルは静かに窓の外を眺めていた。
隣に座るカイが、何も言わずにノートを広げている。
(いつも通り。きっと最後の“いつも通り”)
卒業しても、会おうと思えば会える。
でも、それが“保証された関係”じゃないことくらい、
アナベルもカイも、よくわかっていた。
そんな午後。
寮までの帰り道、ふたりで歩く並木道。
沈黙が心地いいと感じたのは、きっと最近になってからだった。
「……言っとくけど」
不意に、カイが言った。
「俺、お前と婚約するつもりだから」
「え?」
「お前が“ちゃんと恋人になってくれるなら考える”って言ったの、覚えてるから」
「……そんなこと、言ったっけ……?」
「言った。忘れてんじゃねぇよ」
アナベルはうつむいて、
でもその口元は、きゅっと結ばれていた。
嬉しくて、苦しくて、
でも言葉にするには照れくさい。
だから、代わりに。
そっと、彼のシャツの袖を指先でつまんだ。
「……じゃあ、考えてもいい?」
「考えるだけ? どんだけ俺に試練与えんだよ……」
「でも、試練はちゃんと乗り越えるでしょ? カイなら」
彼は不服そうにため息をついて、
でもすぐに、ふっと笑った。
「……ああ。お前が待っててくれるならな」
手を繋いだのは、ほんの一瞬だった。
でも、
それだけで十分だった。
幼馴染で、ずっと拗らせてきたふたりが、
ようやく「同じ歩幅」で歩き出した春。
それが、この物語の終わりであり、
――ふたりの、はじまりだった。
(完)
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