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おまけ わたしから、触れてもいい?
しおりを挟む夜の部屋は静かで、
カイはベッドに寝転んだまま、本を読んでた。
「お前、また眠れねぇの?」
私が枕の端をぎゅっと握っているのに気づいたのか、
カイが目を向ける。
「……うん。なんか、胸が……そわそわする」
「また熱?」
「ちがう。そういうんじゃなくて……」
言葉を飲み込んで、
でも今夜は――黙っていられなかった。
「……触れたい、なって思って」
カイが、目を見開くのがわかった。
「……ん?」
「わたしから、……触れても、いい?」
自分の声が震えていた。
でももう、止まらなかった。
今までずっと、カイにされる側だった。
流されて、応じて、
そのたびに胸がぎゅうっとなって。
でも今夜は、
“わたしの気持ち”をちゃんと渡したかった。
カイは黙ったまま、しばらく私を見ていた。
そして、
小さく、まぶたを伏せて呟いた。
「……バカ。……そんなこと言われたら、我慢できねぇじゃん」
最初に触れたのは、私の手だった。
彼の頬にそっと手を当てて、髪を撫でて――
ほんの少し身を乗り出して、
キスをした。
唇が合わさる感触に、
カイの手がびくりと震えるのがわかった。
「……ほんとに、お前がやんの?」
「うん」
「……緊張してんの、こっちなんだけど」
その言葉に、小さく笑った。
いつもはあんなに強引で、俺様で、
でも今は――
私の仕草ひとつに、心が揺れてる。
(ああ……嬉しい)
(こんな顔、カイもするんだ)
彼のシャツをゆっくり外す。
鎖骨に、胸に、唇を這わせる。
カイは黙って、私の頭を撫でていた。
指先が優しく、少しだけ震えていて、
その感触だけで胸がいっぱいになった。
その夜、私は初めて――
「自分から愛したい」と思った。
終わったあと、
カイは言った。
「……今日のお前、ずるい」
「え?」
「……俺、いま……たぶん、お前のこと、どうしようもなく好きなんだけど」
「前から、ずっとじゃないの?」
「いや、今日のは反則。……ほんと、反則」
そう言って、後ろから抱きしめられた腕が、
どこまでも優しかった。
私たちは――
特に変わったようで、何も変わっていない。
カイは相変わらず、ふざけたようにキスしてくるし、
私も相変わらず、流されがちで、顔を真っ赤にしている。
でも、ひとつだけ違うのは。
キスのあと、ちゃんと「好き」って言ってくれること。
それがあるだけで、こんなにも心が救われるなんて、知らなかった。
「なあ、アナベル」
「なに?」
「今日も、唇ちょうだい」
「……もう、恋人なんだから、ちょうだいじゃないよ」
「うるせ。じゃあ、キスする」
「……うん」
そうやって、また唇が重なるたび、
私は、恋をしてよかったと思える。
流されやすい私と、不器用なカイ。
ゆっくりだけど、ちゃんと歩いていく恋の物語は、まだ終わらない。
終わらせたくない。
だって、私はこの人に――
心まで全部、預けてしまったのだから。
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