イザナギノミコト死すべし

第一話

「ハル」
恋人の本山さやかが萩浜ハルに声を掛けた。
「宿題できた」
「それほどヒマじゃないよ」
ハルがぶっきらぼうに、教科書をアタマから被った。
「この」
さやかが、教科書でハルのアタマを叩いた。
「原稿進んでんの？」
「全然」
「アンタ、取材とか苦手でしょう」
「苦手なんじゃない。やらないだけ」
ハルは某大手出版社系の文学賞に応募するために日夜、勉学（？）に勤しんでいるといいわけだった。
「そんな姿勢じゃ永遠に受賞はムリなんじゃないすかねぇ」
「この前、変なメールが届いてな。受賞はさせてやる。その代わり大事なモノをひとつ
いただくなんてかいてあったんだ。
」
「その文面だけじゃ本気なのか嘘なのかよくわかんないわね」
「ハル」
そのとき、友人の新上ヨシが声をかけてきた。
「なんだい、ヨシ」
「小説の時代考証軽くやっといたから」
「ナーーーンだ、ハル。自分の小説の時代考証、親友に任せてるの」
「それじゃあな、ハル」
ヨシが笑いながら手を振って離れて行く。
そして、そして、そして。
やがて爆発音がして、ヨシの青色の腕時計
がついた右腕がハル目がけて勢いよく
飛んできた。