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ヒマだっていうけれど

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暇太郎はヒマだった。
ともかく信じられないくらい、驚異的に、毎日が恐ろしくヒマだったのだ。 
カイシャをリストラされてからというもの、朝早くから夕方まで公園暮らし。
何とか帰宅出来る30年ローンで買った小さなマイホーム🏠があるにはあるものの、お先真っ暗という状況に変わりわないのだった。
「どうするのよ、一体」
妻の愛香が追求してくる。
「わたしたちにはまだ食べ盛りの子ども🧒がふたりもいるのよ」
「大丈夫だ」
「どうして」
「オレたちにはアレがある」
「ヘソクリ?」
「もっとスゴイものだ」
暇はいかにも自信ありげだ。
「もったいつけてないで教えてよ」
「宝くじだ」
暇が胸元から10枚ほどの紙片を
出した。
「当たるわけないじゃない、そんなモノ」
「表宝くじにはな」
「表宝くじ?」
「ああ、でも裏宝くじには」
暇が紙片と雑誌を見比べた。
「当たってるの?」
「一万円」
「なんだ一万円ぽっち」
「この前は5000円、その前が1000円だったから」
「確実に成果は上がってるか」
愛香もフムフムというようなポーズだ。
「いまいくら出して買ってるの」
「300円」
「もっと投資しましょうよ」
「いくら」
「50万円」
「そんなに」
暇は心底、驚いて腰を抜かしそうになった。
「きっと三百万円くらいにはなって、戻ってくるわよ」
しかし、いつまで経っても大金が当たったという吉報は暇と愛香には届かなかった。

「裏宝くじ協会、莫大な負債を抱えて倒産だって」
暇が雑誌を読みながらそういうと、
「やっぱり世の中うまい話は転がって
ないのね」
妙に納得する愛香だった。
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