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6 君は、僕の…
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ハァ、ハァ、もう、冗談じゃないよ…!
おっと…
「ブラン殿下~~!? どこですの~~!?」
「おしゃべりして下さいませ~~?」
「おかしいですわね? こちらの方へ逃げ…向かわれたようですのに…?」
「あちらかしら?」
「行ってみましょう!」
「ええ、ブラン殿下~~!? これではお見合いになりませんわよ~~?」
「「「「「ブラン殿下~~~!」」」」」
‥‥行ったな。 ふぅ‥‥
全く…お見合いお茶会とかもう勘弁して欲しいよ!
そりゃ、16才にもなって婚約者が決まってない僕が悪いんだろうけど…
王家の者は少なくとも12~13才までには婚約者が決まっているモノらしい。
ここは離宮の中にある第二王妃の庭園。
第二王妃主催のお茶会が開かれている。
その目的は‥‥
第二王妃の息子である僕…第三王子の婚約者探し。
僕とは年の離れた兄上、第一・第二王子は既に結婚して子供もいる。
彼等が優秀だから、別に僕は頑張んなくていいからなんだろうけど‥‥
何故か僕は ”幸せな恋愛結婚 ”を推奨されている。
今から16年とちょっと前 ――――
生まれたばかりの僕を見た瞬間、国王である父、オリジン陛下が言ったそうだ。
『この子は自由に、幸せな一生を送って欲しい。
心から愛する人と幸せな結婚をして、長生きをして欲しい。』
って‥‥
難産で危なかった、とかいうなら分かるけど、
安産で生まれた元気いっぱいの赤ん坊の寿命まで心配してくれるって‥‥
僕への謎の溺愛がヒドすぎる。
とにかく、僕の幸せの為にという陛下の強い意向で、物心つく前からお茶会でお見合い的な事が繰り返されて来た。
『出会う令嬢の数が多い程、運命の相手に出会う確率も上がるだろう』と。
運命とか!
僕、頭ン中お花畑じゃないから!!
兄上たちは政略結婚だったとか聞くと、何か悪いし。
妙な疎外感的な気持ちもあるし‥‥
いやモチロン、政略結婚なんかしたくない。
だけど、僕だけ免除とか、複雑なんだよね…
『何で、僕にそんなに甘いの?』
と父上…オリジン陛下に訊いた事がある。
『君は私の魂の恩人だから…。
君のお陰で私の魂は歪まずに、汚れずに済んだんだ。
だから私はいつでも、過去も未来も、永遠に君の幸せを願うんだよ。』
‥‥謎が深まっただけだった‥‥
そしてお見合いは全然上手くいってない。
『どうだ? 運命の相手は見つかったか?』
なんてニコニコ顔で聞いて来る陛下の為にも最初の頃は頑張って相手を探した。
だけど‥‥
”運命の相手 ”なんているとは思えない。
僕は‥‥令嬢が苦手だ‥‥
性的に、じゃなく、生理的に。
具体的に言うと、臭いがダメなんだ。
この国の女子は、とにかく香水をつけまくる!
元々、高位貴族は家ごとに調香した特別な香りを持っている。
近付けばほんのりと香るぐらいのソレは、特に苦ではない。
ムリなのは、若い…特に令嬢がつける香水!
”狙った相手を籠絡する ”という明確な意図を持って使われるソレ。
やたら甘ったるくて、気持ち悪くなる。
さらに屁みたいな臭い(相手を ”その気 ”にさせる臭いらしい…)も混じってて、毒ガスではないのかと疑わずにはいられない。
そういう系の臭いは一昔前までは娼婦だけが使用したらしいんだけど、今では一般女子も使う様になったんだとか。
僕も大人の男になればその臭いを魅力的と思えるのかもしれないが、今はとてもそうは思えない。
僕は他の人よりも臭いに敏感なんだ。
敏感過ぎるくらい、敏感なんだ。
端的に言うと、犬並みに。
だから令嬢がつけている香水は、僕にとっては異臭、悪臭、毒臭と言ってよい。
あぁ、これじゃ一生結婚出来ないかも…
女子に近付く事すら出来ないんだから。
そのせいか、ゲイだと誤解される事も多い。
彼等曰く、
『女子が苦手でファザコンなんて、キマリじゃん?』
いやいや、正確に言えば、苦手なのは女子ではなく女子が使う香水。
ファザコンはそうだけど、マザコンでシスコンでブラコンでもある。
家族全員、大好きだ。
こーゆーの、何て言うんだろ?
ファミコン??
違うよね…
カサッ…
はッ!?
お見合いに疲れ果て、とりとめのない思考に陥っていた僕は、一人の令嬢が近付いて来ていたのを気付けなかった。
その令嬢も、体育座りで中低木に隠れていた僕に気付いていなかった様だ。(うん、当たり前だな‥)
驚いて足を止めた彼女に、まず、僕が不審者ではない事を伝えなければならないと、立ち上がる。
「驚かせてしまって、申し訳ない。
私は‥‥ハッ!」
お茶会に遅れて到着したであろう彼女は、藍色と白の落ち着いた、でも可愛らしいワンピース姿。
長くて艶やかなストレートの藍黒の髪がサラサラと風に揺れている。
藍色の瞳は大きく見開かれ、僕を見つめている‥‥
二人の距離2メートル弱。
なぜこんな至近距離まで気付かなかったのか…
それは、彼女が例の香水をつけていないから。
今こうして目の前に立つ彼女からは爽やかな香り。
それに混じってどこか懐かしい、あたたかな…
そう、お日様の様な香りも…
そんな魅力的な香りに包まれた僕は ――――
思い出した。
アイちゃん、
藍ちゃん、
あぁ‥‥!!
思い出したよ!!
君は、僕の永遠の存在!!!
おっと…
「ブラン殿下~~!? どこですの~~!?」
「おしゃべりして下さいませ~~?」
「おかしいですわね? こちらの方へ逃げ…向かわれたようですのに…?」
「あちらかしら?」
「行ってみましょう!」
「ええ、ブラン殿下~~!? これではお見合いになりませんわよ~~?」
「「「「「ブラン殿下~~~!」」」」」
‥‥行ったな。 ふぅ‥‥
全く…お見合いお茶会とかもう勘弁して欲しいよ!
そりゃ、16才にもなって婚約者が決まってない僕が悪いんだろうけど…
王家の者は少なくとも12~13才までには婚約者が決まっているモノらしい。
ここは離宮の中にある第二王妃の庭園。
第二王妃主催のお茶会が開かれている。
その目的は‥‥
第二王妃の息子である僕…第三王子の婚約者探し。
僕とは年の離れた兄上、第一・第二王子は既に結婚して子供もいる。
彼等が優秀だから、別に僕は頑張んなくていいからなんだろうけど‥‥
何故か僕は ”幸せな恋愛結婚 ”を推奨されている。
今から16年とちょっと前 ――――
生まれたばかりの僕を見た瞬間、国王である父、オリジン陛下が言ったそうだ。
『この子は自由に、幸せな一生を送って欲しい。
心から愛する人と幸せな結婚をして、長生きをして欲しい。』
って‥‥
難産で危なかった、とかいうなら分かるけど、
安産で生まれた元気いっぱいの赤ん坊の寿命まで心配してくれるって‥‥
僕への謎の溺愛がヒドすぎる。
とにかく、僕の幸せの為にという陛下の強い意向で、物心つく前からお茶会でお見合い的な事が繰り返されて来た。
『出会う令嬢の数が多い程、運命の相手に出会う確率も上がるだろう』と。
運命とか!
僕、頭ン中お花畑じゃないから!!
兄上たちは政略結婚だったとか聞くと、何か悪いし。
妙な疎外感的な気持ちもあるし‥‥
いやモチロン、政略結婚なんかしたくない。
だけど、僕だけ免除とか、複雑なんだよね…
『何で、僕にそんなに甘いの?』
と父上…オリジン陛下に訊いた事がある。
『君は私の魂の恩人だから…。
君のお陰で私の魂は歪まずに、汚れずに済んだんだ。
だから私はいつでも、過去も未来も、永遠に君の幸せを願うんだよ。』
‥‥謎が深まっただけだった‥‥
そしてお見合いは全然上手くいってない。
『どうだ? 運命の相手は見つかったか?』
なんてニコニコ顔で聞いて来る陛下の為にも最初の頃は頑張って相手を探した。
だけど‥‥
”運命の相手 ”なんているとは思えない。
僕は‥‥令嬢が苦手だ‥‥
性的に、じゃなく、生理的に。
具体的に言うと、臭いがダメなんだ。
この国の女子は、とにかく香水をつけまくる!
元々、高位貴族は家ごとに調香した特別な香りを持っている。
近付けばほんのりと香るぐらいのソレは、特に苦ではない。
ムリなのは、若い…特に令嬢がつける香水!
”狙った相手を籠絡する ”という明確な意図を持って使われるソレ。
やたら甘ったるくて、気持ち悪くなる。
さらに屁みたいな臭い(相手を ”その気 ”にさせる臭いらしい…)も混じってて、毒ガスではないのかと疑わずにはいられない。
そういう系の臭いは一昔前までは娼婦だけが使用したらしいんだけど、今では一般女子も使う様になったんだとか。
僕も大人の男になればその臭いを魅力的と思えるのかもしれないが、今はとてもそうは思えない。
僕は他の人よりも臭いに敏感なんだ。
敏感過ぎるくらい、敏感なんだ。
端的に言うと、犬並みに。
だから令嬢がつけている香水は、僕にとっては異臭、悪臭、毒臭と言ってよい。
あぁ、これじゃ一生結婚出来ないかも…
女子に近付く事すら出来ないんだから。
そのせいか、ゲイだと誤解される事も多い。
彼等曰く、
『女子が苦手でファザコンなんて、キマリじゃん?』
いやいや、正確に言えば、苦手なのは女子ではなく女子が使う香水。
ファザコンはそうだけど、マザコンでシスコンでブラコンでもある。
家族全員、大好きだ。
こーゆーの、何て言うんだろ?
ファミコン??
違うよね…
カサッ…
はッ!?
お見合いに疲れ果て、とりとめのない思考に陥っていた僕は、一人の令嬢が近付いて来ていたのを気付けなかった。
その令嬢も、体育座りで中低木に隠れていた僕に気付いていなかった様だ。(うん、当たり前だな‥)
驚いて足を止めた彼女に、まず、僕が不審者ではない事を伝えなければならないと、立ち上がる。
「驚かせてしまって、申し訳ない。
私は‥‥ハッ!」
お茶会に遅れて到着したであろう彼女は、藍色と白の落ち着いた、でも可愛らしいワンピース姿。
長くて艶やかなストレートの藍黒の髪がサラサラと風に揺れている。
藍色の瞳は大きく見開かれ、僕を見つめている‥‥
二人の距離2メートル弱。
なぜこんな至近距離まで気付かなかったのか…
それは、彼女が例の香水をつけていないから。
今こうして目の前に立つ彼女からは爽やかな香り。
それに混じってどこか懐かしい、あたたかな…
そう、お日様の様な香りも…
そんな魅力的な香りに包まれた僕は ――――
思い出した。
アイちゃん、
藍ちゃん、
あぁ‥‥!!
思い出したよ!!
君は、僕の永遠の存在!!!
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