永遠に君を愛するワン!

ハートリオ

文字の大きさ
6 / 8

6 君は、僕の…

しおりを挟む
ハァ、ハァ、もう、冗談じゃないよ…!
おっと…


「ブラン殿下~~!? どこですの~~!?」
「おしゃべりして下さいませ~~?」
「おかしいですわね? こちらの方へ逃げ…向かわれたようですのに…?」
「あちらかしら?」
「行ってみましょう!」
「ええ、ブラン殿下~~!? これではお見合いになりませんわよ~~?」
「「「「「ブラン殿下~~~!」」」」」

‥‥行ったな。 ふぅ‥‥


全く…お見合いお茶会とかもう勘弁して欲しいよ!
そりゃ、16才にもなって婚約者が決まってない僕が悪いんだろうけど…

王家の者は少なくとも12~13才までには婚約者が決まっているモノらしい。


ここは離宮の中にある第二王妃の庭園。
第二王妃主催のお茶会が開かれている。
その目的は‥‥
第二王妃の息子である僕…第三王子の婚約者探し。
僕とは年の離れた兄上、第一・第二王子は既に結婚して子供もいる。
彼等が優秀だから、別に僕は頑張んなくていいからなんだろうけど‥‥
何故か僕は ”幸せな恋愛結婚 ”を推奨されている。

今から16年とちょっと前 ――――
生まれたばかりの僕を見た瞬間、国王である父、オリジン陛下が言ったそうだ。

『この子は自由に、幸せな一生を送って欲しい。
心から愛する人と幸せな結婚をして、長生きをして欲しい。』

って‥‥
難産で危なかった、とかいうなら分かるけど、
安産で生まれた元気いっぱいの赤ん坊の寿命まで心配してくれるって‥‥
僕への謎の溺愛がヒドすぎる。

とにかく、僕の幸せの為にという陛下の強い意向で、物心つく前からお茶会でお見合い的な事が繰り返されて来た。
『出会う令嬢の数が多い程、運命の相手に出会う確率も上がるだろう』と。

運命とか!
僕、頭ン中お花畑じゃないから!!
兄上たちは政略結婚だったとか聞くと、何か悪いし。
妙な疎外感的な気持ちもあるし‥‥
いやモチロン、政略結婚なんかしたくない。
だけど、僕だけ免除とか、複雑なんだよね…

『何で、僕にそんなに甘いの?』

と父上…オリジン陛下に訊いた事がある。

『君は私の魂の恩人だから…。
君のお陰で私の魂は歪まずに、汚れずに済んだんだ。
だから私はいつでも、過去も未来も、永遠に君の幸せを願うんだよ。』

‥‥謎が深まっただけだった‥‥


そしてお見合いは全然上手くいってない。

『どうだ? 運命の相手は見つかったか?』

なんてニコニコ顔で聞いて来る陛下の為にも最初の頃は頑張って相手を探した。
だけど‥‥
”運命の相手 ”なんているとは思えない。

僕は‥‥令嬢が苦手だ‥‥
性的に、じゃなく、生理的に。

具体的に言うと、臭いがダメなんだ。
この国の女子は、とにかく香水をつけまくる!

元々、高位貴族は家ごとに調香した特別な香りを持っている。
近付けばほんのりと香るぐらいのソレは、特に苦ではない。

ムリなのは、若い…特に令嬢がつける香水!
”狙った相手を籠絡する ”という明確な意図を持って使われるソレ。
やたら甘ったるくて、気持ち悪くなる。

さらに屁みたいな臭い(相手を ”その気 ”にさせる臭いらしい…)も混じってて、毒ガスではないのかと疑わずにはいられない。
そういう系の臭いは一昔前までは娼婦プロだけが使用したらしいんだけど、今では一般女子シロウトも使う様になったんだとか。
僕も大人の男になればその臭いを魅力的と思えるのかもしれないが、今はとてもそうは思えない。


僕は他の人よりも臭いに敏感なんだ。
敏感過ぎるくらい、敏感なんだ。
端的に言うと、に。
だから令嬢がつけている香水は、僕にとっては異臭、悪臭、毒臭と言ってよい。

あぁ、これじゃ一生結婚出来ないかも…
女子に近付く事すら出来ないんだから。

そのせいか、ゲイだと誤解される事も多い。
彼等曰く、

『女子が苦手でファザコンなんて、キマリじゃん?』

いやいや、正確に言えば、苦手なのは女子ではなく女子が使う香水。
ファザコンはそうだけど、マザコンでシスコンでブラコンでもある。
家族全員、大好きだ。
こーゆーの、何て言うんだろ?
ファミコン??
違うよね…


カサッ…

はッ!?


お見合いに疲れ果て、とりとめのない思考に陥っていた僕は、一人の令嬢が近付いて来ていたのを気付けなかった。

その令嬢も、体育座りで中低木に隠れていた僕に気付いていなかった様だ。(うん、当たり前だな‥)

驚いて足を止めた彼女に、まず、僕が不審者ではない事を伝えなければならないと、立ち上がる。


「驚かせてしまって、申し訳ない。
私は‥‥ハッ!」

お茶会に遅れて到着したであろう彼女は、藍色と白の落ち着いた、でも可愛らしいワンピース姿。
長くて艶やかなストレートの藍黒の髪がサラサラと風に揺れている。
藍色の瞳は大きく見開かれ、僕を見つめている‥‥

二人の距離2メートル弱。
なぜこんな至近距離まで気付かなかったのか…
それは、彼女が例の香水をつけていないから。

今こうして目の前に立つ彼女からは爽やかな香り。
それに混じってどこか懐かしい、あたたかな…
そう、お日様の様な香りも…

そんな魅力的な香りに包まれた僕は ――――

思い出した。

アイちゃん、
藍ちゃん、

あぁ‥‥!!

思い出したよ!!


君は、僕の永遠の存在!!!


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

初体験の話

東雲
恋愛
筋金入りの年上好きな私の 誰にも言えない17歳の初体験の話。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...