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68.走れ!悠人!!

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バキューン! 「キャァァァァァ~~~~~ンッ!!」

ドキューン! 「ヒィァァァァァ~~~~~ンッ!!」

ズキューン! 「イクゥゥゥゥゥ~~~~~ンッ!!」


賢明なるあなたなら、もうお気づきだろう・・・


泉あれんが11日間の眠りから目を覚ましたのだ。
ちなみに丁度その時、それまでずっとベッド脇にへばり付いていた吉田悠人は、シャワーを浴びにホテルに戻ってしまっていた為、その瞬間に居合わせなかった。

何をやっているんだ、吉田君・・・マヌケか?


ともあれ、『海辺なのに山田サナトリウム』では、療養所始まって以来の大変な事態に陥っていた。

“銀髪の眠り姫”がとうとう目覚めた!!――と言うので、スタッフが駆けつける!

駆け付けたスタッフ(女性)に、あれんはまだ目覚めたばかりでボンヤリしつつも、お礼を言わねばと、

「お世話になってます。 ありが・・」

ズッキュ~~ン! 「アァァァァァ~~~~~ッッ!!」
ダンッとドアに体をぶつけた後、ズズズッドスン!と座り込んでしまうスタッフ。
失禁・・・してる! 「アゥ、アゥ、アァ、アァ・・・アン・・」熱い・・小刻みに揺れるカラダをどうする事も出来ない・・乱れたまま、整わない呼吸・・・余韻が中々去ってくれない・・だって、女ですもの・・・

物音を聞き、駆け付ける別スタッフ(男性)!
「どうしましたか!?・・はっ・・!? あ、あぁっ!!」 

俺は今、何を見ている!? 目の前の、彼・・・彼は、一体・・・!?

リアルは勿論、画像でも見た事ない程に美しい、濃い青の瞳を困惑で潤ませる美し過ぎる銀髪超絶美少年の 破・壊・力!!!


「・・あ・・あの・・??」 訳が分からず声をかける泉あれん。


ズドッキュゥゥゥ~~~~~ンッッッ!!「ウォォォォ~~~~~~ッッ!!!」


普段は温厚で先輩後輩の信頼も厚い中堅スタッフの(エロ)魂の咆哮に、バタバタと次々に駆け付ける療養所関係者!


「どうした!? 一体何が・・ あぁぁッッ」 バタッ

「ちょ、落ち着いて! いつも通りに・・ はぁぁぁぁんッッ!?」 グワクゥッ

「君達、一体何をやっているんだ!? しっかりし給え・・え、えぇぇ~~~!?」ヨロヨロッ ズシャァッ・・


11日間も眠り続け、やっと目覚めた泉あれんを誰もケア出来ない・・・!
少し離れた場所からこの異常事態を目の当たりにした療養所長・山田先生。

恍惚の表情で床に転がる肉塊達・・ある者はヨダレまみれになり、ある者は鼻血を流し、ある者は悶え続け・・・彼等から分泌された様々なものが床を汚して・・

なっ・・、何たる痴態・・・!!
高い理念はどうした!?
彼等は本当にこの療養所のスタッフなのか!?
私が厳しく育て上げた、誇り高き部下たちがまるでケダモノに・・・


はっ・・!! この事態に困り果てる銀髪超絶美少年・泉あれん君が・・ゆっくりと顔を上げ、私の方を見・・・いけない!! ササッ!


山田先生は思わず柱に身を隠す・・・ドクンッドクンッ・・何故かは分からないが、彼と目を合わせてはいけない様な気がする・・彼から放出されている“何か”をまともに浴びてしまったら、私も卑しい肉塊に成り下がり、床に転がる運命だろう・・
それだけは、許されない! 私は、誇り高き療養所長なのだ!


ダッ! とにかく、今やるべきことは・・・
事態を重く見た山田先生は、療養所長室に駆け込むと、机の鍵付きの引き出しから、とっておきの便せんを取り出し、震える手でラヴ・レタアをしたため始める・・

《拝啓、突然このような手紙、御許し下さい。 君がこの療養所へ来てから11日が過ぎましたね・・》

が、途中でハッと気付き、「バカな・・・何をやっているのだ、私は!」と、自分の愚かさを恥じる言葉を呟き、部屋の鍵を掛けて、ふけり始める。
年齢と共に性衝動を失い久しい・・不満気だった妻も今ではもう完全に諦めてる。

だが・・・キてる! 泉君のあの白い肌を思い浮かべるだけで・・コレは一体、何なのだろう・・・何だって、いい! 例え自慰行為でも、男の悦びを感じたい!
「いっ、イケる、久しぶりに、イケる!・・イクッ!・・アァッ、ハァァッ・・」
・・だって、男だもの・・・




『海辺なのに山田サナトリウム』にほど近いホテルの浴室。
シャワーを浴びながら、吉田悠人は、あれんを想う。

俺を助けに来た時、あれんは俺を“悠人”と呼んだ・・風奏破の事も思い出した・・記憶が戻ったんだ・・だが・・今回目覚めたら、また、何かしらの記憶を失くしているのだろうか・・愛の言葉も・・キスも・・色々・・

それでも、目覚めてくれさえすれば、それでいい。
それだけで、いい! だから、どうか目覚めて欲しい・・・

ふと、スマホが鳴った気がした。(*スマホは、いつの間にか直っていた)
浴室を出て、バスタオルで体を拭きながら、急いでスマホに出る。
あれんに関する事かもしれないので、電話には出る様にしている。


「はい・・」


『あ、俺。 突然で悪いんだけど、何でもいいから服貸してくれない?』


「ッッッ!?」
あまりの事にスマホを落としそうになる。


「あッ・・あれんッッ!!?」


『わ、すごい、よく分かるね?』


分からいでか!!!
「なっ、目、覚めたのか!!? 覚めたんだよな、 え? いつ?」


『ちょい前に・・で、何かここ、空気が変だから、すぐ出たいんだけど、何と俺の服が無いんだよ。 ゴリラズのはデカいし、ノンちゃんのは小さいし、君のならちょっと大きめくらいだろうから・・え? あれ? ばーちゃん!? ばーちゃん来たよ。え? 何、着替え持って来てくれたの? ぅあ~、助かる、助かった! あ、服はいいや。 ばーちゃん持って来てくれたから。』


「あ・・・、そ、そう・・・」
吉田悠人は、言葉が出ない。 言いたい事がありすぎて、聞きたい事がありすぎて、想いが溢れすぎて、言葉が出ない!!


『あ、じゃ、』とあれんが言う。


「ッ!!」 あぁ、切られてしまう・・まだ話したい・・まだ君と・・
なのに言葉が出ない! 何であれんが絡むと、俺はこんなにもヘタレなんだ?!!
自分が情けなくて、腹立たしくて、唇を噛む・・・


『・・会いたいから、早くおいで? 悠人。』とあれんが続ける。


「!!!」 そうだった! あれんは、俺以上に俺の気持ちを分かってくれて、俺が欲しい言葉をくれる・・!


「・・すぐ行く!!」
嬉しさダダ漏れの弾んだ声で答え、吉田悠人は、Max急ぐ。
溢れる喜びに輝いて、愛する人のもとへ、

走れ! 悠人!!
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