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38 追い詰められる男爵令嬢
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「はあぁ!?」
王太子宮では、王女襲撃に失敗したらしいという報せに苛つくクピドゥスの神経を更に逆撫でする事を王太子が言い出していて――
「‥何でよ!?何で今更王女様をエスコートしてやるのよ!?アタシをエスコートしてくれる約束でしょう!?」
「だから、入場の時だけでいいって言ってくれてるから!その後は君をエスコートするからさ‥」
「嫌よ!アタシの入場はどうなんのよ!?独りで入場するなんて負け組ですって言ってる様なもんじゃない!そんな惨めな思いは絶対嫌!」
「だけど外国からの賓客も多いんだ。私が妃となるピウス姫をエスコートしなかったら彼らに変に思われてしまうんだよ」
「!?…テナ様最初に言ってたよね?…王女様を妃にする積もりは無いって…もうあんな女知らないって!」
「それはその時は多分カッとなっていて言ったのかもしれないけど、ピウス姫は3才からの婚約者なんだ。私の妃となるのは彼女しかいない」
「――王女様と結婚したら…アタシの事、どうする積もり?」
どういう事…アタシにメロメロなんじゃないの!?…いや…メロメロだった…ついこの間…王女様が現れるまでは…!
クピドゥスの心に嵐が吹き荒れる。
「いや、君の事もちゃんと…しかるべき嫁ぎ先を見つけてやる積もりだ」
「ッ!?」
(この野郎!愛人にする気も無いのかよ!?…結婚してあの王女様を手に入れたらアタシはお払い箱ってか?――あぁそうかい!だけどね、お生憎様、そうはさせないよ!…クソ野郎が!…くそっ!今すぐぶちのめしてやりたい!でも今は‥落ち着けアタシ!)
「…ホントぉ?嬉しいわぁ…だったら卒業パーティ終了までは私を優先すると約束してぇ?入場エスコートも断ってぇ?」
「…え?」
「いいでしょう?…卒業パーティーが終わるまででいいのぉ――そうしてくれたら、お礼に王女様が泣いて喜ぶような閨テク、色々教えてあげるからぁ」
「!‥ピウス姫が泣いて喜ぶォッ‥」
「え‥あ、やだ!テナ様ったら鼻血!‥ほら上を向いて!」
おでこに青筋を立てながら介抱してくれる男爵令嬢に王太子は『分かった』と。
(卒業パーティーは明後日…ピウス姫とはその後いくらでもラブラブイチャイチャ出来るんだ――何よりピウス姫が泣いて喜ぶ閨テクは是非とも知らねばならない…)
そう考えクピドゥスの要求を呑むことにする。
翌朝。
義父の手下に義父の邸に呼び出されたクピドゥス。
「何なのよパパこんな朝っぱらから?アタシ学校があ‥」
バキィッ!
「‥ァッ!?」
いきなり拳で頬を殴られたクピドゥス。
「‥ッ痛ぇ!‥何しやが‥」
「このクソガキが!何て厄介事を持ち込んでくれたんだッ!」
「何の事だよッあぁ痛え、畜生がッ‥ぎゃあッ!?」
綺麗にセットしてあった髪をグシャリと掴まれ窓際へ連れて行かれるクピドゥス。
「痛え、離せッ‥何なんだよぉ‥」
クピドゥスは全く訳が分からない。
この義理の父親がクピドゥスに手を上げたのは初めてだし、こんなに怒り狂っているのも初めてだ。
「アレを見ろ!」
「なに‥
なッ!?」
ドロースス男爵の邸の裏側には大きな川…アッロガーンス川が流れていて。
すぐ近く…邸からよく見える所にドロースス男爵が架けた立派なドロースス橋がある。
その橋に――
「あッ、あいつら…だ、誰があんなことッ!?」
「王女様を守ってる護衛だろ!テメェ、一体誰を相手にしてんだよ!?この始末、どうつけるつもりだッ!?」
「ど、どうって…ちょ、どこ行くんだよ!?」
「俺は逃げる!あいつらがウチの者だって知っててわざわざあそこに吊るしたんだ!『次はお前だ』ってな!」
「待ってよ、アタシを放って行くっての!?アタシはどうなんのさ!?」
「知るか!テメエのケツはテメエで拭きやがれ!――あぁクソッ!テメエなんかに関わらなきゃよかった…テメエの母親が言ってたんだ――疫病神だってな!」
「…な…」
一瞬頭が真っ白になるほどの感情がクピドゥスを襲う。
「何言ってんだよ!アタシを選んだのはソッチじゃねーか!…」
その声は震えているが…
怒りなのか嘆きなのかは本人にも分からない――
王太子宮では、王女襲撃に失敗したらしいという報せに苛つくクピドゥスの神経を更に逆撫でする事を王太子が言い出していて――
「‥何でよ!?何で今更王女様をエスコートしてやるのよ!?アタシをエスコートしてくれる約束でしょう!?」
「だから、入場の時だけでいいって言ってくれてるから!その後は君をエスコートするからさ‥」
「嫌よ!アタシの入場はどうなんのよ!?独りで入場するなんて負け組ですって言ってる様なもんじゃない!そんな惨めな思いは絶対嫌!」
「だけど外国からの賓客も多いんだ。私が妃となるピウス姫をエスコートしなかったら彼らに変に思われてしまうんだよ」
「!?…テナ様最初に言ってたよね?…王女様を妃にする積もりは無いって…もうあんな女知らないって!」
「それはその時は多分カッとなっていて言ったのかもしれないけど、ピウス姫は3才からの婚約者なんだ。私の妃となるのは彼女しかいない」
「――王女様と結婚したら…アタシの事、どうする積もり?」
どういう事…アタシにメロメロなんじゃないの!?…いや…メロメロだった…ついこの間…王女様が現れるまでは…!
クピドゥスの心に嵐が吹き荒れる。
「いや、君の事もちゃんと…しかるべき嫁ぎ先を見つけてやる積もりだ」
「ッ!?」
(この野郎!愛人にする気も無いのかよ!?…結婚してあの王女様を手に入れたらアタシはお払い箱ってか?――あぁそうかい!だけどね、お生憎様、そうはさせないよ!…クソ野郎が!…くそっ!今すぐぶちのめしてやりたい!でも今は‥落ち着けアタシ!)
「…ホントぉ?嬉しいわぁ…だったら卒業パーティ終了までは私を優先すると約束してぇ?入場エスコートも断ってぇ?」
「…え?」
「いいでしょう?…卒業パーティーが終わるまででいいのぉ――そうしてくれたら、お礼に王女様が泣いて喜ぶような閨テク、色々教えてあげるからぁ」
「!‥ピウス姫が泣いて喜ぶォッ‥」
「え‥あ、やだ!テナ様ったら鼻血!‥ほら上を向いて!」
おでこに青筋を立てながら介抱してくれる男爵令嬢に王太子は『分かった』と。
(卒業パーティーは明後日…ピウス姫とはその後いくらでもラブラブイチャイチャ出来るんだ――何よりピウス姫が泣いて喜ぶ閨テクは是非とも知らねばならない…)
そう考えクピドゥスの要求を呑むことにする。
翌朝。
義父の手下に義父の邸に呼び出されたクピドゥス。
「何なのよパパこんな朝っぱらから?アタシ学校があ‥」
バキィッ!
「‥ァッ!?」
いきなり拳で頬を殴られたクピドゥス。
「‥ッ痛ぇ!‥何しやが‥」
「このクソガキが!何て厄介事を持ち込んでくれたんだッ!」
「何の事だよッあぁ痛え、畜生がッ‥ぎゃあッ!?」
綺麗にセットしてあった髪をグシャリと掴まれ窓際へ連れて行かれるクピドゥス。
「痛え、離せッ‥何なんだよぉ‥」
クピドゥスは全く訳が分からない。
この義理の父親がクピドゥスに手を上げたのは初めてだし、こんなに怒り狂っているのも初めてだ。
「アレを見ろ!」
「なに‥
なッ!?」
ドロースス男爵の邸の裏側には大きな川…アッロガーンス川が流れていて。
すぐ近く…邸からよく見える所にドロースス男爵が架けた立派なドロースス橋がある。
その橋に――
「あッ、あいつら…だ、誰があんなことッ!?」
「王女様を守ってる護衛だろ!テメェ、一体誰を相手にしてんだよ!?この始末、どうつけるつもりだッ!?」
「ど、どうって…ちょ、どこ行くんだよ!?」
「俺は逃げる!あいつらがウチの者だって知っててわざわざあそこに吊るしたんだ!『次はお前だ』ってな!」
「待ってよ、アタシを放って行くっての!?アタシはどうなんのさ!?」
「知るか!テメエのケツはテメエで拭きやがれ!――あぁクソッ!テメエなんかに関わらなきゃよかった…テメエの母親が言ってたんだ――疫病神だってな!」
「…な…」
一瞬頭が真っ白になるほどの感情がクピドゥスを襲う。
「何言ってんだよ!アタシを選んだのはソッチじゃねーか!…」
その声は震えているが…
怒りなのか嘆きなのかは本人にも分からない――
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