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第一章

26 『ツン』なのに

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ふわりと空を見上げて、ステラがウットリと呟く。



「綺麗‥‥
何て神々しく美しいの‥‥
あなたの魔力ね」



ステラの見上げる先には金のオーラを纏った紫龍が緩やかに空を泳いでいる。

翼は今は畳まれているのか見えない。

既に夕焼け空も去り暗くなった夜空に沈み込む事なく輝くロイヤルパープル。



「あなたの紫龍が翼を広げてくれた。
まるで抱きとめようとしているかの様に。
その姿に私の赤龍は癒されて、怒りや恐怖から解放されたの。
その瞬間、赤龍を暗く濁らせていた黒いものが消えて、本来の色を取り戻せた。
本来の魔力なら、私自身だもの。
意識する事も無く制御できる。
本当に本当にありがとう!
それに、白クマさん自身も、私の体を赤龍から守ろうとしてくれた。
凄くビックリした。
既に死んでいた肉体を庇おうとするなんて‥‥」

「あれ以上損壊したら生き返れなくなる」

「ふつう、あの時点でもうアウトだよ?」

「それでも、あれ以上傷つくのは可哀想だと思った」

「‥‥ッ!」



(や、優し過ぎる!
いつもぶっきらぼうで
『ツン』なのに‥‥)


胸がドキドキして変。
何だか顔も凄く熱い。


何だか、居ても立っても居られない、変な感じ?


美しい紫龍が光となって白クマさんに吸い込まれて行くのを見ながら、ステラは一生懸命考える。


きっと男の子は女の子に対して特別な魔法の力を持っているんだ。

でも、誰でも魔法を掛けられるわけじゃなくて‥‥

だって、6才の時から婚約しているディング様には何も感じない。

婚約したと言っても、国が違って殆ど会わなかったし、今、こうしてディング様の家の別邸に暮らす様になっても、おかしな事を言われたり、変なヘアスタイルをさせられたり、迷惑しか感じない。

だからきっと、魔法を掛けられるのは、女の子にとって特別な男の子。

えと、つまり‥‥

白クマさんは白クマだけど、私にとって『特別な男の子』なのかな‥‥


『特別な友達』ってだけじゃなくて?

んんん???
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