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第一章

31 出て行く前に、ただ一つ

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婚約を解消し、接近禁止の魔法契約を結んだ後、森の中の城で髪を洗い、肉襦袢付きドレスを脱いで身軽になったステラ。

何も持って来ていないし、何も持っていくつもりはない。

ステラに個人的な物は何一つ無い。

身一つで出るだけだからこれで出て行く準備は終了!


でもただ一つ、この森には自分よりも大切な存在がいる!



ステラはいつも白クマと会う場所まで行き、『出て来て』と呼びかける。

ガサガサと木の陰から出て来てくれた白クマに抱きつこうとしたステラ。



「何があったんだ?
昼間から泥髪と肉襦袢付きドレスから解放されているなんて。
そんな姿、ディングに見られたら‥‥」



ステラのダイビングもふもふチャレンジを華麗にかわした白クマが心配そうに表情を歪ませる。

いや、実際は無表情だが、6年間の付き合いで、ステラは白クマの表情が読める様になっている。

抱きつこうとしてかわされた為、草の上にうつぶせに倒れたまま切ない瞳を白クマに向けていたステラ。

気を取り直して元気に起き上がり、嬉しい報告をする。



「婚約解消成立したの!
私はもう自由だから、公爵令息の命令を聞く義務なんて無いの!」

「!!
そうか、やったな!」

「うん!
ありがとう!
本当はね、一か月後の王立高等学校卒業の時に婚約解消される予定だったんだ。
万が一婚約解消されなかったら自分から言い出す予定で心積もりしてた。
そのどっちでもなく、いきなり今婚約解消となって驚いたけど、凄く清々した気分だから良かった!
あと一ヶ月を何とかしのいで、ちゃんと卒業すれば仕事も見つかるだろうし。
あ‥‥それでね、
接近禁止の魔法契約も結んだの。
さっきから24時間後に執行されるから、出来るだけ早くここを出て行かなきゃならなくて‥‥」

「接近禁止の魔法契約か。
それはいいな!
アイツ、今のステラを見たら、狂った様に近付きたがるだろうが、物理的に不可能になる。
ザマアミロ、だな」

「向こうが不安がっていたから親切心よ?
婚約解消後に私に纏わりつかれるんじゃないかって随分と心配そうだったから。
私の方は魔法契約なんかなくたって結界を張る事も出来るし何の心配も無いもの」



アッケラカンと言うステラに、白クマもそれはそうだと頷くと。

ステラはスッと真剣な顔になり、白クマを神秘的なゴールドの瞳で見つめる。

その切羽詰まった様子に、白クマもロイヤルパープルの瞳で見つめ返す。



「それでね、」
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