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第二章

30 何もかも1

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「暗いな。
このランプ、壊れているんじゃないのか?」

「ランプだけじゃありやせんよ。
魔道具は何もかも性能が激落ちしてやす。
壊れてるんじゃなくて、使っている魔玉が‥‥」

「あぁ、分かった、
もういい‥‥」



また『赤い魔玉』か。

ステラが魔力を充填させると赤くキラキラと輝くという魔玉。

他の魔玉と違うのは色だけではない。

そう、もっと重大な違いはその性能。

カロンによれば魔道具にその能力以上の素晴らしい働きをさせ、持ちもいい。




もうすっかり暗くなっている。

時を報せる鐘の値とメロディが鳴らなくなった為、時間の感覚が掴めない。

森の中の小さな城を出て、暗い森の中をソロソロと歩く。

森の暗さは変わらないはずなのに、とてつもなく暗い。

昨日の夜までは、本邸城を照らすランプの灯りが夜の森をも柔らかく照らしていた為、夜でも手持ちランプ一つあればサクサク歩けた。

邸中のランプの灯りがショボくなった為、森まで照らす力が無く、森の中は本来の暗さで、ランプ一つではおっかなびっくり進むしかない。






『スタード公爵邸のランプの灯りは素晴らしいですな!』
『この灯りを見ているだけで心がほっこり癒されますわ』
『当然特注でございましょう?』
『一体、どの国の何という工房で作らせているのか教えて頂けませんか?』
『『『是非、御教え下さい!』』』

『ハハハ、なに、どこにでもあるありふれたランプだが?』


口々にランプの灯りを讃え、出処を知りたがる人達に父上は満更でもない顔で受け答えして来た。

ランプだけではなく、スタード公爵邸の魔道具を褒められる度に父上のそんな様子を目にした。

魔法を――そして実は魔道具さえも否定してきた矜持はどこかへ消えていた。


‥何故今頃、その時々に押し込め無視した父上への失望が湧き上がって来るのか。

私だとて同じ。

魔道具――つまりは魔玉への――つまりはステラへの賛辞を自分へのものの様に受け取って来た。

気付きもせずに。


何て、愚かな‥‥






やっと森を抜けてスタード公爵邸本邸の森に面した裏口から中に入り食堂へ急ぐ。



「!?」



もうすぐ食堂――

という廊下で、父上がおもてなし部長と何やら揉めている!?
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