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第三章

29 パニックに陥る人たち

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「うおぉぉぉ~~!」
パチパチパチパチパチ
「きゃぁぁぁ~~!」
パチパチパチパチパチ
「わぁぁぁぁ~~!」
パチパチパチパチパチ



感極まり過ぎて、拍手しながら言葉にならない歓声を上げる人々。


ティスリー王国宮殿の大ホール。

王立高等学校卒業パーティー。


鳴りやまない拍手と歓声で揺れる大ホールで、突然それは起こった。



「ハッ‥‥!?」
「い‥‥いない!?」
「二人が消えた!?」



大ホール中央で抱き合う二人が突然消えたのだ。

感動のあまり号泣しながら拍手し歓声を上げていた人々は、称賛対象のゴールデンカップルが忽然と消えた事にパニック状態で右往左往する。



「何だ!?
何が起こった!?」

「分からない!
消えてしまった!」

「一体、どうやって?
まさか‥‥」


まさか、魔法で!?


『瞬間移動』
『転移魔法』

――そんな凄過ぎる魔法などお伽話だ!

というのが常識だが。

だが、お伽話でもあり得ないほどに美し過ぎる二人を目の当たりにした人々は、突飛な考えを笑い飛ばす事が出来ない。



「‥‥あり得る」

「二人はきっと天上人
‥‥天上界に帰られたに違いない」

「どうぞ、どうぞお幸せに!」



再び感極まり熱い涙を流す人々。



一体、いつになったら床に転がったままの王家に気付くのだろうか‥‥







そして、ここにもパニック状態の人が一名。



「え? はれ?
今フワッとなって‥‥
ッ、こッ、こここ、
ここ、どこぉッ!?」



キョロキョロと辺りを見回しながら、絶叫質問したのはステラ。

体がフワリと浮いた様な感覚に、白クマさ‥‥キールの胸から顔を離してみれば、自分が全然別の場所にいる事に気付いて。



「ここは俺の私室だ」



落ち着いた声で答える白クマ‥‥キールは、ステラの腰に回した手を緩めはするが、離しはしない。

なので、ステラは部屋中を駆け回って確認したいのに、させてもらえない。

ステラは、困った様に背の高い白ク‥‥キールを見上げる。

白‥‥キールの顔からは謎の笑顔は消えており、何とも真面目な顔でステラを見つめている。



「どこの、キール様の私室?」

「ミッドシップ王国」

「ミッドシッ‥‥
キール様の国‥‥ティスリー王国からかなり遠くの大国だよね!?
ここ、もうティスリー王国じゃないの!?」

「ミッドシップ王国」

(あ‥‥この感じ)
「‥‥もしかして何か怒ってる?」

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

(怒ってるのね)
「私、何かしてしまった?」

「俺のこの姿‥‥
呪いが解けた本来の姿を見てガッカリしてたな‥‥」

「‥‥ッッ」
(バ‥‥
バレてたッ!!)
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