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ACT1

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 ランチとスイーツを食べて落ち着いたところで玲児に聞いてみた。
「もしかして真哉のジイさんの連絡先を知ってるのか?」
「スマホの番号は知ってるけど、出るかなぁ」
 まぁそうだろうな。求婚した途端、天国から地獄に突き落とした人間の電話なんて出る訳……
「もしもし、トウヤさん? うん、レイだよ久しぶりだねー」
 マジかよ、未練タラタラじゃねえか。玲児もまさか電話に出るとは思わなかったらしく、こっちに声を出さずに『どうすんの?』と合図を送ってくる。
 俺は素早くコースターの裏に『今いる場所を聞いて、近かったら待ち合わせの約束を取り付けてくれ』と書いて見せた。
 玲児はこくりと頷くとコッチにウインクをしてにっこりと微笑み甘えるように話し出す。
『ねぇ、今は何処にいるの? イスタンブールなの良いなぁ、また遊びに行きたいよ。それで久しぶりにトウヤさんに会いたいと思って連絡したんだー。うん、うん、来てくれるの? ありがとう~嬉しい。じゃあ、またね』
 玲児は通話を切ると、こちらに向き直り手のひらを上にして差し出して来た。俺は空気の読めない振りをしたが、奴はそんな事で諦めるような人間じゃない。
「シュン。トウヤさんと待ち合わせする約束を取り付けたんだから『軍資金』頂戴。それに報酬も相談しなくちゃね」
 俺は黙ってスマホを取り出すと赤月に電話して玲児を雇って良いかと聞いた。
『レイジが鏑木さんと知り合いとは気が付かなかった。探す手間が省けたから報酬を上乗せするよ。勿論、レイジの報酬はこちらで出すから大丈夫だ』
「玲児、赤月に聞いたらOKだってよ。ところで『軍資金』って何を買うんだ?」
「トウヤさんの好みそうな服を買いに行くんだよ。オレのサイズのレディースはその辺に売って無いからさぁ。もちろんパンプスも買わなくちゃいけないし。結構お金掛かるんだよ」
「え~っ。レイまたオンナになるの? 前みたいにストーカー騒ぎなんてゴメンだからね」
 真琴が異議を申し立てて来た。て事はちょいチョイあるのか? ストーカー騒ぎが。
 それにしてもイスタンブールって海外じゃね? それを電話1本で日本に帰ってくるなんざ、まだ惚れてるとしか思えない。
「仕方ないじゃない。トウヤさんがレイちゃんを指名して来たんだから」
 店が暇になって来たのか啓介兄が試作したケーキの感想をくれと持ってきた。
 俺達も追加の飲み物を注文しマーブル模様のパウンドケーキにホイップクリームを乗せたのと、レアチーズケーキに半切りのイチゴのゼリーを乗っけてる物に向かい合う。
「わ~嬉しい、啓介さんありがとう」と玲児が言うと。
「なぁ玲児。やっぱりバンドに入らないか? ボーカルお前が入ったら最強なんだけど」
「うーん。たまに歌うのは良いけど、正式に加入しちゃうと旅行で長期間居ない時あるし、バンドは高校と大学でやり尽くしたからなぁ」
 玲児がバンドしてたとは初耳だ。啓介兄がたまにミニライブしてるのは知ってたけど、ボーカル無しのインストバンドだったよな。
「玲児、高校と大学バンドしてたんだったら、リョウ知らねえか?」
「リョウ懐かし~。別のバンドだったけど高校一緒だったから知ってるよ。いま何してるのかな?」
「Dark・moonのリョウか! 瞬介知り合いなのか? ぜひ紹介してくれ」
 リョウは引退した後結婚したと言ったら、啓介兄は凄くガッカリしていた。
「啓介さん、たまにだったらライブ出ても良いよ。専属は無しね」
 玲児の言葉に嬉しそうに頷き、珈琲チケット11枚綴りをプレゼントしていたのだった。

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