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 ローレンスは最近、お絵描きにご執心で、マリアが見に行くといつも描いていた。椅子に立ってテーブルに書き書き。覗くと、馬を描いていた。
 子供ながら絵心があって、もしかしたらそっち方面に才能があるのかもしれない。親の欲目かもしれないが、良い絵だと思った。
 マリアに気づいたローレンスが、にっこり微笑む。腕を伸ばすので抱き上げた。
「まー」
「上手ねぇローレンス」
「ばー」
 マリアの髪を引っ張ってくる。馬とでも思われているのかもしれない。マリアはくすくす笑った。
「重くなったわねぇ…抱っこするの大変だわ」
「たいへん?」
「えぇ、とっても…」
 え?と聞き返す。ローレンスはニコニコしたままマリアの髪を引っ張り続けている。マリアは恐る恐る聞いてみた。
「ローレンス、いま、たいへんって言いました?」
「ぶー」
 いつも通りの反応。マリアは気のせいだと思った。
「おかあさま」
 気のせいでは無かった。マリアはビックリして、でも嬉しくて、問い詰める。
「ローレンス、もう一度呼んで頂戴」
「あー?」
「私のこと、おかあさまって呼んで」
「だー!」
 髪を強く引っ張られる。マリアは痛い!と悲鳴を上げた。たまらずローレンスをテーブルに置く。手を何とか外して、マリアは痛む頭を押さえた。
 言えと言われて言うような子じゃない。でも聞き間違いではなかった。やっと喋ってくれた。レイフから喋るようになると言われていたが、やはり不安だった。嬉しくて、少し涙が溢れた。

 
 身体を繋げきって、マリアは安堵の息を吐く。レイフの静かな律動に合わせるように、マリアも背を反らす。ほとんど無意識の行動だった。
「はっ…ローレンス、あれから、たくさん喋ってくれるようになって…んっ、だいすきって、あっ…、だいすきって、なんかいも、いってくれるんです」
 奥をトン、とノックされ、ゆっくり引いていく。また、奥まで入って、緩やかな動きが、心地よかった。
「かわいい…いつまでもあのままでいてほしいくらい」
「成長する姿を見るのも、楽しいものだ」
「はい…ん、んっ…!だんなさま…あの子、とっても絵が、じょうずで…あっ──んんっ、はぁ…絵のべんきょう、させたほうが、いいんでしょうか…」
 腰が持ち上がり、足を肩に乗せる。深く繋がって、子宮が押し上がる。マリアは喉を反らした。
「ああっ!うっ…!」
「そうだな…させてみても、いいかもしれない」
「ひぁっ…ああ!あっ…!」
 レイフはピストンを繰り返す。奥を打ち付けるたびに、ばちゅばちゅと音がなる。途端に激しくなる動きに、マリアは嬌声を上げる。
「っ…!ううっ」
「マリア」
「あっ…!んん」
「ローレンスの話もいいが、今はこっちに集中してくれ」
「あ、あ、ああっ、おくっ、おなかっ、きちゃ──あああっ!」
 絶頂を迎え、膣が波打つ。レイフは突き上げを止めない。マリアは強い刺激が続いて、痙攣も止まれなかった。
「あ──おかしっ…れいふっ、とまらないっ、とまらっ…!」
 ぱんぱんとピストンは激しいまま。一向に終わる気配がない。パニックを起こし始めたマリアの腕を掴んで床に縫い止めて、レイフは鎖骨を噛んだ。膣が、更に強く締め付ける。マリアの腰が跳ねる。足もビクつく。
 レイフは限界が来て精を放つ。マリアも分かるのか、あつい、と訴えた。その声を最後にマリアはぐったりしだした。気を失ったらしい。レイフは射精し終えて、マリアに覆いかぶさる。鎖骨をしゃぶって、味わう。すると意識のないまま、反応して締め付けてくる。無意識下で自分を求めてくれるのが、たまらなく嬉しくて、レイフはいつまでも求め続けた。


「かあさま、びょうき?」
 見舞いに来てくれたローレンスに、マリアは笑いかける。乳母がローレンスを抱いていて、マリアに近づける。ローレンスはマリアに手を伸ばして、頭を撫でた。
「げんきになって」
「平気よ。すぐ良くなるから」
「よくなる?」
「ええ」
 おかあさま、と乳母が抱くのを振り切って、マリアの枕元に座る。ローレンスが小さな手でマリアの首元に手を当てて、直ぐに離した。
「あつい!かあさま、すごくあつい」
「大丈夫、寝てれば治るから」
「でもすっごく熱い!」
「大丈夫だから、熱冷ましも飲んだの。もうすぐお父さまも来てくださるから、また明日来てくださいね」
 無理に笑って見せる。乳母に目線を送って、無理やりローレンスを連れて行ってもらう。乳母は心得たもので、お母さまのお薬を作りましょうねと、抱き上げて部屋を下がった。
 ローレンスがいなくなって息をつく。熱を出した原因は明白。息子に心配されて、申し訳ない気持ちで一杯だった。


 やって来たレイフに打明けるが、レイフは難しい顔をした。
「毎回、熱を出すまで求めて申し訳ないとは思っている。マリアが辛いのも重々承知していたが、私が、止められない。マリアから自分の精液が溢れているのを見ると、自我が保てなくなる」
 レイフの告白に、マリアだけが顔を赤らめた。変に言い訳しない所が彼の美徳だが、今回に限ってはもう少し婉曲に打ち明けてくれても良かったろうに。
「どうすればいい?」
 至極真面目に聞かれても、マリアは答えなど持ち合わせていない。我慢しろとしか言えない。
「あの…別々で寝ますか?」
「寝台を二つ用意するのか?」
「いえ、別の部屋で寝ます」
 レイフは無言になった。沈黙が怖かった。いつまで経っても何も言わないので、マリアから聞いてみる。
「あの…?」
「信じられない。そんなことを言うなんて」
「れ、レイフ様?」
 レイフはまた無言になった。無表情なのが本当に怖い。
 マリアは無理に起き上がった。まだ熱で頭がクラクラした。レイフが背中を支えてくれた。
「レイフ様、ローレンスの為だと思えば、貴方様も辛抱出来る筈です」
「私だけが悪いと?」
「私も、辛抱しますから」
 本当はそんなに辛抱しない。いつもレイフから求めてくるのをマリアが受け入れているだけ。
 レイフは無言のまま、マリアの背中を支えて横に寝かせる。労るように頬を撫でるその手は、冷たく冷え切っていた。
「どこか、外出なさっていたのですか?」
 マリアは気になって聞いてみる。レイフは首を横に振った。
「君がそれだけ熱を出してる証拠だ。…休みなさい」
「レイフ様は?」
「勿論君のそばに」
 レイフは首にも手を当てる。ひんやり涼しい。風もない、静かな夜。更けていって、目が覚めると、既にレイフの姿はなかった。


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