この称号、削除しますよ!?いいですね!!

布浦 りぃん

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14・酒を飲むなら、飲まれるな

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「なぜ部屋へ入れてくれないんだっ。俺は客だぞ!?」
「話しをするだけなら”会う”と書いてあったでしょう?家に招待したつもりはないし、結界内に入れてあげただけでも喜びなさいよ」

 世界最強マッチは、ウッドデッキにテーブルセットを出して行われることにした。お酒を手土産にたって、どーせこの世界のお酒だ、たかが知れてる。酒や料理に煩い日本人なめんな!
 ルードは黒猫を装って、私の肩でアレクをジィっと観察中。ニヤつきながら指を近づけてきた途端、フーッと毛を逆立てて唸って威嚇。筋肉質の肩を落として凹んでるのをこっそり見かけて、台所で思い切り噴き出した。

「それにしたって外とは…」
「室内は土足厳禁にしてるの。その面倒臭そうなブーツは脱ぎにくいでしょ?」
「…裸足…なのか?」
「そうよ。だから入室禁止」

 デッキのドアは開放してあるけれど、アレクはお家君に拒否されている。私が台所へ戻った時に、そっと侵入を試みて跳ね返されてた。うひひ。
 テーブルに手料理を並べ、ルード用の生肉も皿に入れて用意し、少し早い晩餐会を始めた。

「ところで、何を話したくて来たの?」

 珍しい料理の数々に目を輝かせたアレクは、私の質問にちらっと不本意そうな視線を投げて来た。

「…あんたは、何なんだ?」
「はぁ!?初めて会った時に自己紹介したでしょ?私は魔女、名はアズよ」
「俺より強いなんて解せない」
「解せないったって、魔女だからね~。最強の名は私のもの~」

 手にしたフォークでどっさり皿に盛りつけた料理を、勢いよく頬張る。まるで欠食児童だ。厚めのステーキを二枚重ねで食らいつく人、初めて見たよ。塊りで出してやればよかったかな。

「魔女って…なんだ?」
「誰からも聞いてないの?異界から来た元勇者さん」
「俺のことはどうでもいい。俺より強いアンタは何者だ?」
「だから魔女。人々は《災厄》や《凶禍きょうか》を招く者と呼んでいるらしいわ。そんなこと、やったこともないけどね」

 アレクの持ち込んだワインで喉を潤し、色とりどりの野菜をハーブ塩で炒めた料理を口にする。ウマーだよ。マジで野菜が美味しい土地です。その間にも「旨い!旨い!」と叫びながら、アレクの大きな口があれこれ吸い込んでいく。ワインなんて、途中からラッパ飲み…。

「俺を燃やしたじゃねぇか…」
「あんたが警告に従わず侵入してきたからでしょ?躾だって言ったハズよ。殺されなかっただけでも感謝しなさい」
「やはりるんじゃねぇか…」

 テーブル上に空瓶が増えて行く。収納庫ストレージから次々出しては、自分で消費して行く。お土産じゃなかったんかい!

「あんたなんて呼ばずに、アレクと呼んでくれよー」
「……キモチワルイ…アンデッドは好みじゃないの!」
「アンデッドじゃねぇ!モテモテの英雄様だ!」
「お姉さんと対等に付き合いたかったら、もっと大人になってからね?」

 凶悪な微笑みを向けてやろう。喜べ!クソガキ!

「まさか年上…なのか?嘘だろ!でも…年上の妻も…なぁ、俺の妻にならねぇか?」
「はぁ!?」

 なんだかマジでキモチワルイことを口走り出したんで、渾身のデコピンをお見舞いしてやった。その衝撃をもろに受けて、そのままアレクは白目を向いて後ろへ倒れた。

「弱いねぇ…」

 お酒も戦いも。

 酒瓶を手にしたまま気絶したアレクをいつもの場所へ転移させて、会談は終了した。
さーて、寝ようかな。ルードも何も言わずに変身を解いて、巨大樹の巣へと駆け上って行った。

 ―――――――カワイイじゃないか。まだ子供だね。

「悪い奴じゃないけど、脳筋過ぎて怖いよ。主に背後がね。それに、女癖が悪そう」

 汚れ物を片付けテーブルを撤去して、入浴の用意をする。英雄が関わるだけで、通常の日より疲れが増す気がする。ガキの相手は本当に疲れるね。

 ―――――――ああ…そこが難点だ。ここに入れてもいい?

「ええ!?お家君、どうしたの?そんなに気に入ったの?アレ……」

 ―――――――子供には、心休める避難所も必要だからさ。もちろんオイタしたら追い出すよ。

「……好きにして」

 結局この甘さが、後に自分の首を絞めることになった。


 この日を境に、アレクはちょくちょくお土産を持って現れた。ワイバーンを使うことは無くなったけれど、転移の魔道具をどこかで入手して飛んでくるようになった。見せて貰ったら遺物レリックらしく、他国の遺跡から出た物を大枚をかけて買い取ったとか。でかい図体をして、胸を張って自慢げに話すアレクを前に、私は頭が痛くなった。
 加えて、アレクがなぜ頻繁に来るようになったか……それが一番、私を慄かせた。

「アズ、結婚してくれ!!」

 玄関へ飛び込んで来ると、毎度毎度の開口一番がこの台詞だ。もちろん「お断り!」と即答している。もう何度目かになった頃から、これは彼特有女ったらしの挨拶なんじゃないかと思うようにした。
 だって、聞けばすでに嫁が九人もいるって話しなんだよ?言い寄られる先から娶ってるとかで、自分から口説いてるのは私だけだと、これも胸を張って――――――殴っておいた。

「…なんでルードばかり優先する…」
「あんたより可愛いから。大体、神獣に手を出すって罰あたりだよ!」
「知らなかったんだって…強い魔獣がいると言われて行っただけだ…」
「単純バカ過ぎて呆れるわね。少しは自分の頭で考える様にしなよ。いい様に使われてさぁ」

 ルードの事がバレた時、神獣だと知って素直に間違いを認めたが、今度は私が黒猫ルードを構いまくるのが気に入らないと喧嘩を売って来る始末だった。あまりの煩さに、結局ルードが死なない程度を条件に喧嘩を買って――――――アレクをさんざんボコって終わった。オジサン強い!
 この日から、しばらく現れなくなった。
 しかーし、この時にさっさと立ち入り禁止措置を施しておけば!と後悔した。

 圧し潰された先代魔女の残したカウチは、【復元】をかけて私の寝室へと移動させた。土足で入室させたお家君にも、無言の罰を与えた。

 後悔は先に立たずってことね。
 
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