この称号、削除しますよ!?いいですね!!

布浦 りぃん

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32・商人より手強いぞ!聖職者!

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 前日はアレクが城内を案内され、翌日は私が大聖堂側を案内されていた。
遠くから見た時は、左右対称に建った尖塔の群れの半分が王城で半分が大聖堂なのだと思っていたけれど、実際は正面の尖塔の群れ部分が教会施設で、奥に続く堅牢な石造りの要塞が王城だった。そりゃー正面からだけ見た私が誤解するのも無理ないよね!
 なんでも、王城部分は無事だった旧パレスト城で、王の宣言に則り女神様ファシエルを頂点にするため正面に大聖堂を建てたのだとか。その実、奥の王を護る盾でもある。
 明るく朗らかな青年助祭のクリス君は辺境生まれの光属性魔法使いで、辺境を回る巡回治療士団の一員なんだそうだ。

「昔、辺境の谷に《赤目の民》と呼ばれた一族がいて、聖人様に従者として迎えられた。と言うお話を北にて聞いたのですが…?」

 若い助祭が知っているのか、知っていて否定するのかを確かめてみた。

「《赤目の民》…ですか?それは《魔族》では?」
「いいえ、私の聞いた昔話では《赤目の民》と。ただ、とても多い魔力持ちの一族とも聞いたので、《魔族》と呼ばれる人たちの先祖かもしれませんが…」
「う~ん…聞いたことのない話ですねぇ。聖人様が成したことは、いつも王のお傍で助言をなさっていただけで、自らが他者をお傍に求めたようなことはないと思うのですが。その上に魔族など。もっての外です」

 《赤目の民》どころか、従者にしたって話しすら伝わってないってことは、リュースの聞いた話しが単なる作り話なのか、教会側が『もっての外』ってことでなかった事にしたのか。魔の使いの魔族ってだけでなく、その従者を嫉妬から殺したのは王室側の魔術師だしね?

 聖堂の身廊を歩きながら話している内に、内陣の前に着いた。天井を見上げると、あちらの建築様式と似た多面体のドーム天井になっている。そして、内陣にある祭壇もだ。十字架といい尖塔の群れといい大聖堂の作りといいあちらの建築を再現したとしか思えない…。

「この建築方法は、どなたが考案したのですか?初めて見る様式ですが…」

 天井を見上げながら、ぐるりとその場で回って尋ねた。クリス君も一緒に仰のいたまま答えてくれた。

「この建物は聖人様が考案し、新王国の初めの事業として国中の腕利きが集まって建てました」
「長い時間がかかったのでしょうねぇ…」
「はい。始めに後部の王城を再建し、戦場となってしまった前面を清めて着工となり―――――およそ五十年強と言う歳月がかかったと。完成の時、聖人様はすでにお還りなっておりましたので、お見せしたかったと…」
「それは……聖人様はいつごろいらして、どれくらいの間こちらに留まってくださったのですか?」
「ご降臨から十年ほどです。役目を終えられたと王に伝えると、天へ消えたと伝えられております。今から五百年ほど前のお話です」

 十年間しかいなかった聖人。五百年ほど前と伝えられている―――――となると、十年なんて五百年ほどの中に入ってしまっても変じゃない。召喚された年は分かるはずだ。旧パレストが勝利した年だ。そこから十年なのか…本当に十年なのかが問題だ。

 天井から窓へ視線を移し、そこに嵌め込まれたステンドグラスらしき物を見て息を飲んだ。ガラスと呼んでもいいのか別のモノなのか分からない。
 この世界の現在、ガラス窓は確かにある。けれど、それは王侯貴族や大商人の占有品で、それすらも泡の入った透明ガラスだ。庶民が目にするガラスなんて、ポーション瓶くらいだ。それも、兵士や騎士あたりが持ってる物を見せてもらえればの場合。色ガラスなんて、まだ先の開発商品だろう。なのに…一瞬混乱しかけて【看破】を使いそうになり、クリス君の存在を思い出して留まった。
 その挙動が可笑しかったのか、クリス君がニンマリと笑んだ。

「初めてご覧になった全ての方々が驚かれます。あれも聖人様がお作りになった、女神の光と呼ばれる窓です。聖堂が完成する前にお作り下さり、窓をあれに合わせよとのご指示でした」
「何で出来ているのですか?」
「分かりません。どなたがも、何の材料でお作りになったのか判らなかった様です」
「凄い…とても美しい色ですね」

 謎の聖人様が設計した大聖堂とステンドグラスの窓。これはどう見ても、あちらの人間だ。

「聖人様は、どんなお姿をしていらしたのですか?」
「あそこを――――あの窓が聖人様のお姿です。天に還っても、いつまでもこの世を見守れるようにとのお言葉でした」

 クリス君の指先を辿って、一番端のアーチ窓を見た。

 濃い茶色の短い髪に乳白色の肌…黒に近い眼。だめだ、人種が判別できるほどの特徴がない。ただ、こんな大聖堂を思いつくのは、やはり欧州かな?でも、日本人でも教会は知ってるし、建築学科の学生なら図面を引いたかもしれない。
 まぁ、いいか。どこの国の人間でも。あちらから来たのは一緒だ。

「聖人様のお名前などは、公表されておいでなのですか?」
「真名となりますので、永久に封印されております」
「あら、それは聖女様や勇者様方とは違いますのね」
「はい」

 それを最後の質問にして、後は廊下越しに施設を案内されて終わった。


 さて、欠けたピースを回収に行くとしますか。
 働きものの蜘蛛たちが頑張って広げてくれた王城内&教会内の平面図は、今も着々と更新されている。必要な情報はすでに記されているから、焦りはないけどね。

 真夜中、自分に聖域結界を張り、迷彩マントを羽織って書庫の前へ。開錠して入って行くと、そこはまだ何の警備策はない。問題は、奥にある禁書庫だ。鍵じゃなく封印と結界の罠。大司教以上の聖職者しか入れない、その扉すら見ることはできない部屋。

【森羅万象の理よ 我が声を聞け 我が眼に応えよ 我が肉を通せ】
        【開 門アペリエンス】 

 人のなせる業など魔女の前には塵芥も同然。私は森羅万象を視・知り・遣う者。

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