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34 僕に出来る事(エピローグ2 )デヴィッド
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卒業式の夜、アリーチェに婚約破棄されてから、2年が経った。
アリーチェはあのままラジアンへと渡り、一度も帰ってこない。
もう帰ってくる気は無いのだろう。
アリーチェから爵位も家族も奪ってしまった僕は、罪悪感からエストリア家への婿入りを拒んだけれど、許しては貰えずキャサリンと結婚した。
キャサリンとは最初ギクシャクしていたけれど、キャサリンから僕を好いていたと言われて、贖罪の為にも彼女を幸せにしようと思った。
そういう意味で彼女を好きになることはできそうに無いけれど、家族として愛していこうと。
僕のせいで崩壊してしまった、奪ってしまった家族の代わりに。
義母は義父と離縁し、実家へ戻られた。
愛人が3人もいて、そのせいで破産しかけたのが許せないらしい。
かなりの慰謝料を持っていかれ、それこそ破産するかと思った。
義父は愛人と手を切り、領地の田舎に幽閉されている。
また借金を作られたらたまらないと、厳しく監視がついているらしい。
らしい、というのは全てを処理しているのがロマロフ侯爵である父だから。
キャサリンと結婚して直ぐに、義父から爵位を譲り受け、僕はエストリア伯爵となった。
けれど思い返してみれば、アリーチェと婚約していた時から、爵位を継ぐと決まっていたにも関わらず、僕は当主としての教育を全く受けていなかった。
アリーチェがあんなに大変な思いをして教育を受けていたにもかかわらず。
当然、領地や商会の運営など出来るはずもなく、またキャサリンにも出来るはずもなく。
結果、父が送り込んできた家令や従者達が全て取り仕切っている。
エストリア家は今やロマロフ家の都合の良い家臣だ。
父は最初から僕を傀儡にして、エストリアの実権を握るつもりだったのだろう。
義父は義父で初めから僕をお飾りにして、実権はずっと自分が握っているつもりだったのかもしれない。
でないと自由にお金を使えなくなるから。
もしかすると、アリーチェに家督を譲るのも嫌だったのかもしれないな。
聡いアリーチェだ。
義父の愚行は全てバレただろうから。
それもあって、アリーチェは冷遇されていたのかも。
賢い娘は要らないと。
すまない、アリーチェ。
僕は君の家族を崩壊させただけでなく、君が大切に思っていた領地さえ守れない。
「やぁ、エストリア伯爵。随分としけた顔をしているね?」
急に名を呼ばれ顔を上げると、目の前には王太子が立っていた。
「っ!お、王太子殿下にご挨拶申し上げます。」
しまった!
今は王宮に来ていたんだった。
ぼーっとして良い場所じゃ無い。
「うん、前から言いたかったんだけど、君は一体何をしているんだい?」
「、、、は?えっと、エストリア領の税収に関する書類の提出に登城しておりますが?」
「違うよ、そうじゃなくて、エストリア伯爵として何をしているのかと聞いてる。」
「!」
僕がお飾りだと知っていらっしゃる。
「申し訳ありません。」
「うん?何に対して謝ってるんだい?」
「私の力不足です、、、。」
「ああ、流石にそれは自覚してるんだね。」
「っ!」
恥ずかし過ぎて顔に血が上る。
「アリーチェ嬢はね、学園でも優秀だったよね?開校以来の才女とか言われてて、さぞかし立派な女伯爵になるだろうって、文官の間でも期待されていた。ほら、父親の前伯爵は凡人だったでしょ?まぁ、蓋を開けたら凡人どころじゃなくて愚者だったけど。」
「、、、はい。」
「そのアリーチェ嬢から伯爵位を奪ったんだから、君もっと頑張ってくれないかな?」
「力不足で申し訳ありません。」
王太子の言葉が刺さる。
僕は誰が見ても爵位を奪った人間なんだ。
「そんな事は分かっているよ?でも君少しは努力してる?今の状況理解してる?エストリアはロマロフの属領になってるよね?このままだとロマロフに食い潰されてしまう。エスト五家の一角たるエストリアがそれじゃぁ困るんだ。このままだと、王家が介入せざるを得なくなる。」
「!」
王家の介入、それは、両家とも無事では済まないという事。
ロマロフがエストリアを簒奪したと見做されてる?
「ねぇ、君はまだ若い。今すぐどうこうしろと言っている訳じゃない。でもエストリアを立て直す為に努力する事は出来るだろう?アリーチェ嬢が大切に思っていた領地だ。彼女に負い目があるなら、最大限努力したまえ。」
アリーチェが大切に思っていた、、、。
そうだ。
僕が奪ってしまったなら、責任を取らなくちゃいけない。
それは後悔する事じゃなくて、彼女の代わりに領地を守る事だった。
「分かりました。僕は僕に出来ることをしていきます。アリーチェに恥ずかしくない領主になれるよう努力致します。」
「うん。期待してるよ。」
「有難うございます。」
最敬礼に頭を下げる。
「あ、一つだけ注意しとくね?今後アリーチェ嬢を名前で呼ぶ事は禁ずるね。彼女、ラジアン王国の次期公爵夫人になる事が決まってるから。不敬になる。」
「は⁈」
「じゃぁ、もう行っていいよ。」
シッシ、と払うように手を振られてしまう。
これ以上問うわけにもいかず。
「御前失礼致します、、、。」
ふらふらと立ち去るしか出来なかった。
次期公爵夫人、、、、?
リンドバーグ卿と結婚するのか?
いやでも、彼は次男だったはず。
だったら彼の兄上か?
それとも兄を差し置いて家督を継ぐとかか?
、、、どちらにしても、本当に遠い世界に行ってしまったんだな。
どうか幸せに。
僕が言えた事では無いけれど。
アリーチェはあのままラジアンへと渡り、一度も帰ってこない。
もう帰ってくる気は無いのだろう。
アリーチェから爵位も家族も奪ってしまった僕は、罪悪感からエストリア家への婿入りを拒んだけれど、許しては貰えずキャサリンと結婚した。
キャサリンとは最初ギクシャクしていたけれど、キャサリンから僕を好いていたと言われて、贖罪の為にも彼女を幸せにしようと思った。
そういう意味で彼女を好きになることはできそうに無いけれど、家族として愛していこうと。
僕のせいで崩壊してしまった、奪ってしまった家族の代わりに。
義母は義父と離縁し、実家へ戻られた。
愛人が3人もいて、そのせいで破産しかけたのが許せないらしい。
かなりの慰謝料を持っていかれ、それこそ破産するかと思った。
義父は愛人と手を切り、領地の田舎に幽閉されている。
また借金を作られたらたまらないと、厳しく監視がついているらしい。
らしい、というのは全てを処理しているのがロマロフ侯爵である父だから。
キャサリンと結婚して直ぐに、義父から爵位を譲り受け、僕はエストリア伯爵となった。
けれど思い返してみれば、アリーチェと婚約していた時から、爵位を継ぐと決まっていたにも関わらず、僕は当主としての教育を全く受けていなかった。
アリーチェがあんなに大変な思いをして教育を受けていたにもかかわらず。
当然、領地や商会の運営など出来るはずもなく、またキャサリンにも出来るはずもなく。
結果、父が送り込んできた家令や従者達が全て取り仕切っている。
エストリア家は今やロマロフ家の都合の良い家臣だ。
父は最初から僕を傀儡にして、エストリアの実権を握るつもりだったのだろう。
義父は義父で初めから僕をお飾りにして、実権はずっと自分が握っているつもりだったのかもしれない。
でないと自由にお金を使えなくなるから。
もしかすると、アリーチェに家督を譲るのも嫌だったのかもしれないな。
聡いアリーチェだ。
義父の愚行は全てバレただろうから。
それもあって、アリーチェは冷遇されていたのかも。
賢い娘は要らないと。
すまない、アリーチェ。
僕は君の家族を崩壊させただけでなく、君が大切に思っていた領地さえ守れない。
「やぁ、エストリア伯爵。随分としけた顔をしているね?」
急に名を呼ばれ顔を上げると、目の前には王太子が立っていた。
「っ!お、王太子殿下にご挨拶申し上げます。」
しまった!
今は王宮に来ていたんだった。
ぼーっとして良い場所じゃ無い。
「うん、前から言いたかったんだけど、君は一体何をしているんだい?」
「、、、は?えっと、エストリア領の税収に関する書類の提出に登城しておりますが?」
「違うよ、そうじゃなくて、エストリア伯爵として何をしているのかと聞いてる。」
「!」
僕がお飾りだと知っていらっしゃる。
「申し訳ありません。」
「うん?何に対して謝ってるんだい?」
「私の力不足です、、、。」
「ああ、流石にそれは自覚してるんだね。」
「っ!」
恥ずかし過ぎて顔に血が上る。
「アリーチェ嬢はね、学園でも優秀だったよね?開校以来の才女とか言われてて、さぞかし立派な女伯爵になるだろうって、文官の間でも期待されていた。ほら、父親の前伯爵は凡人だったでしょ?まぁ、蓋を開けたら凡人どころじゃなくて愚者だったけど。」
「、、、はい。」
「そのアリーチェ嬢から伯爵位を奪ったんだから、君もっと頑張ってくれないかな?」
「力不足で申し訳ありません。」
王太子の言葉が刺さる。
僕は誰が見ても爵位を奪った人間なんだ。
「そんな事は分かっているよ?でも君少しは努力してる?今の状況理解してる?エストリアはロマロフの属領になってるよね?このままだとロマロフに食い潰されてしまう。エスト五家の一角たるエストリアがそれじゃぁ困るんだ。このままだと、王家が介入せざるを得なくなる。」
「!」
王家の介入、それは、両家とも無事では済まないという事。
ロマロフがエストリアを簒奪したと見做されてる?
「ねぇ、君はまだ若い。今すぐどうこうしろと言っている訳じゃない。でもエストリアを立て直す為に努力する事は出来るだろう?アリーチェ嬢が大切に思っていた領地だ。彼女に負い目があるなら、最大限努力したまえ。」
アリーチェが大切に思っていた、、、。
そうだ。
僕が奪ってしまったなら、責任を取らなくちゃいけない。
それは後悔する事じゃなくて、彼女の代わりに領地を守る事だった。
「分かりました。僕は僕に出来ることをしていきます。アリーチェに恥ずかしくない領主になれるよう努力致します。」
「うん。期待してるよ。」
「有難うございます。」
最敬礼に頭を下げる。
「あ、一つだけ注意しとくね?今後アリーチェ嬢を名前で呼ぶ事は禁ずるね。彼女、ラジアン王国の次期公爵夫人になる事が決まってるから。不敬になる。」
「は⁈」
「じゃぁ、もう行っていいよ。」
シッシ、と払うように手を振られてしまう。
これ以上問うわけにもいかず。
「御前失礼致します、、、。」
ふらふらと立ち去るしか出来なかった。
次期公爵夫人、、、、?
リンドバーグ卿と結婚するのか?
いやでも、彼は次男だったはず。
だったら彼の兄上か?
それとも兄を差し置いて家督を継ぐとかか?
、、、どちらにしても、本当に遠い世界に行ってしまったんだな。
どうか幸せに。
僕が言えた事では無いけれど。
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