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15 アレク殿下との密談(サイラス)
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ミリアンナの誕生日会は滞りなく終わった。
僕たちからのプレゼントに加えて使用人達からもプレゼントをもらって嬉しそうにしていたミリアンナは最高に可愛かった!
来年も再来年もその先も、ずっと幸せな誕生日にしてあげるからね!
と心に誓う。
その為にも、まずは目の前の問題を片付けねば。
パーティーがお開きになり、ミリアンナが部屋に下がると、僕と両親、そして殿下は父の執務室に向かった。
途中殿下が従者の一人を呼んでくる様にアレンに命じていた。
皆が席につくと呼ばれていた従者もやってきた。
室内なのに、目深に帽子を被って眼鏡までかけている。
え、なんか絵に描いたような胡散臭さなんだけど?
お茶の用意がされると使用人達は全て下がらせた。
「紹介するね、本日のゲスト。」
そう冗談ぽく紹介された従者が帽子を取ると、
「⁈」
「アズロ宰相閣下⁈」
そう、宰相その人だった。
いや、何やってんの⁈
宰相って言ったら国の行政トップだぞ?
従者に変装させて何時間も待たせるとかあり得るのか⁈
殿下無茶振り過ぎませんか⁈
「突然の訪問、非礼をお詫びする。殿下から会談の機会を得たと言われてね。いてもたってもいられなかったのだ。」
「いえ、こちらこそお運び頂き感謝します。」
宰相殿と父が挨拶をする。
と、殿下がまたあの悪戯っぽい表情をしていた。
「ふふ、驚いただろう?」
「驚きますよ!」
全く、殿下もとんでもないカードを切ってきたな。
「さて、では何から話しましょうか。」
父が思案顔で切り出した。
正直、宰相がいる状況では何をどこまで話すべきなのか。
殿下が連れてきたのだから、敵では無いのだろうけれど。
「まずは、私の事情を聞いてもらえるだろうか?」
「アズロ卿」
「うん、その名は嫌いでね、できれば名のカルロスで呼んでいただけるか?」
「!では、カルロス卿。どうぞお聞かせ下さい。」
「ありがとう。」
そうしてカルロス卿が話し始めた事は、予想はしていたが驚くべき事だった。
「殿下からお聞きしましたが、皆さん陛下とミランダ妃の馴れ初めについて正確にご存知だとか。」
「はい。出所は開かせませんが、拡散する事は決してありません、と、お約束します。」
「承知しました、信じましょう。あの時、陛下を罠に嵌めようと言い出したのは現公爵の兄ロイドです。あれは野心の塊です。この国においてエスト五家は特別な意味を持つ家門です。同じ公爵家とは言え我が家とは家格が違う。兄はそれが我慢ならなかった。どうすればエストロジアを追い抜けるかそればかり言っていた。父は愚物でしたので、神童だなんだと言われた兄に盲信して言いなりになっていました。そんな時です。エストの一角エストリア伯爵家がロマロフ侯爵家に喰われかけた事があったでしょう?兄はいい気味だと笑って見ていました。同じエストを冠する家の没落が愉快だったんです。けれど、なぜか現伯爵デヴィッド卿がロマロフを断ち切り再興してしまった。面白くなかったのでしょうね。ならば今度こそ自分がエストロジアを喰ってやろうと思った様です。」
ふぅ、とため息を吐く。
口調から、心底身内を嫌っているのがわかる。
「兄はまず王家を狙いました。ご存知の通りです。王太子殿下を夜会に招待し、薬を盛ってミランダと既成事実を作らせて正妃にさせようと。勿論私は反対しました。王族に薬を盛るなど反逆罪を問われてもおかしく無い。結果私は動けなくなる程暴力を受けて監禁され、その間に計画は実行されました。」
「なんて事、、、。」
耐えきれず、母が同情のこもった声を漏らした。
「ですが、王太子はミランダに手を出さなかった。それでも兄達は諦めませんでした。他の男にミランダを妊娠させて王太子の子だと言い張ろうとした。今度こそアズロ家はおしまいだと思いました。そんな事が通ると思っている兄と父に嫌気がさした。」
「でも、王家はそれを許容した?」
「はい、醜聞を恐れたのでしょうね。」
「そんな危機管理のない王太子なんてとんだ笑い者だろう。と、こんこんといい含めて父上に諦めさせた奴がいるんだよ。」
腹が立つとばかりに殿下が吐き捨てる。
ああ、繋がった。
「カルヴァン伯爵ですか?」
僕の質問に、よく分かったなという顔で頷かれる。
「伯爵は父の学生時代からの友人だ。その分父上は彼を信頼している。僕から言わせたらそんな助言してくる奴なんて最低だと思うけどね!」
全く持ってその通りだと思う。
隠蔽していい事じゃ無い。
更にカルロス宰相の話は続いた。
「私は事を公にするべきだと思いました。王族の偽称など大罪です。ですが、それを勘付かれたのでしょうね、命を狙われる様になったのです。そしてある日、とうとう逃げきれず大怪我を負ったのですが、ちょうどこの国に来ていたケインの父であるロバーツ伯爵に助けられてラジアンへと逃げたのです。ロバーツ家は代々リンドバーグ公爵家に仕える執事を輩出する家系だとかで、リディアム様に知らせが行き、そのままラジアンで療養させてもらいました。そしてある事情から、エストの宰相になる事を目標にしてラジアンで力を付けたのです。」
「そんな事があったのですか、、、。」
「なんて酷いこと、、、!」
父母が搾り出す様な声で言ったけれど、僕は声も出なかった。
そんな理不尽な理由で家族から命を狙われるなんて、、、!
僕たちからのプレゼントに加えて使用人達からもプレゼントをもらって嬉しそうにしていたミリアンナは最高に可愛かった!
来年も再来年もその先も、ずっと幸せな誕生日にしてあげるからね!
と心に誓う。
その為にも、まずは目の前の問題を片付けねば。
パーティーがお開きになり、ミリアンナが部屋に下がると、僕と両親、そして殿下は父の執務室に向かった。
途中殿下が従者の一人を呼んでくる様にアレンに命じていた。
皆が席につくと呼ばれていた従者もやってきた。
室内なのに、目深に帽子を被って眼鏡までかけている。
え、なんか絵に描いたような胡散臭さなんだけど?
お茶の用意がされると使用人達は全て下がらせた。
「紹介するね、本日のゲスト。」
そう冗談ぽく紹介された従者が帽子を取ると、
「⁈」
「アズロ宰相閣下⁈」
そう、宰相その人だった。
いや、何やってんの⁈
宰相って言ったら国の行政トップだぞ?
従者に変装させて何時間も待たせるとかあり得るのか⁈
殿下無茶振り過ぎませんか⁈
「突然の訪問、非礼をお詫びする。殿下から会談の機会を得たと言われてね。いてもたってもいられなかったのだ。」
「いえ、こちらこそお運び頂き感謝します。」
宰相殿と父が挨拶をする。
と、殿下がまたあの悪戯っぽい表情をしていた。
「ふふ、驚いただろう?」
「驚きますよ!」
全く、殿下もとんでもないカードを切ってきたな。
「さて、では何から話しましょうか。」
父が思案顔で切り出した。
正直、宰相がいる状況では何をどこまで話すべきなのか。
殿下が連れてきたのだから、敵では無いのだろうけれど。
「まずは、私の事情を聞いてもらえるだろうか?」
「アズロ卿」
「うん、その名は嫌いでね、できれば名のカルロスで呼んでいただけるか?」
「!では、カルロス卿。どうぞお聞かせ下さい。」
「ありがとう。」
そうしてカルロス卿が話し始めた事は、予想はしていたが驚くべき事だった。
「殿下からお聞きしましたが、皆さん陛下とミランダ妃の馴れ初めについて正確にご存知だとか。」
「はい。出所は開かせませんが、拡散する事は決してありません、と、お約束します。」
「承知しました、信じましょう。あの時、陛下を罠に嵌めようと言い出したのは現公爵の兄ロイドです。あれは野心の塊です。この国においてエスト五家は特別な意味を持つ家門です。同じ公爵家とは言え我が家とは家格が違う。兄はそれが我慢ならなかった。どうすればエストロジアを追い抜けるかそればかり言っていた。父は愚物でしたので、神童だなんだと言われた兄に盲信して言いなりになっていました。そんな時です。エストの一角エストリア伯爵家がロマロフ侯爵家に喰われかけた事があったでしょう?兄はいい気味だと笑って見ていました。同じエストを冠する家の没落が愉快だったんです。けれど、なぜか現伯爵デヴィッド卿がロマロフを断ち切り再興してしまった。面白くなかったのでしょうね。ならば今度こそ自分がエストロジアを喰ってやろうと思った様です。」
ふぅ、とため息を吐く。
口調から、心底身内を嫌っているのがわかる。
「兄はまず王家を狙いました。ご存知の通りです。王太子殿下を夜会に招待し、薬を盛ってミランダと既成事実を作らせて正妃にさせようと。勿論私は反対しました。王族に薬を盛るなど反逆罪を問われてもおかしく無い。結果私は動けなくなる程暴力を受けて監禁され、その間に計画は実行されました。」
「なんて事、、、。」
耐えきれず、母が同情のこもった声を漏らした。
「ですが、王太子はミランダに手を出さなかった。それでも兄達は諦めませんでした。他の男にミランダを妊娠させて王太子の子だと言い張ろうとした。今度こそアズロ家はおしまいだと思いました。そんな事が通ると思っている兄と父に嫌気がさした。」
「でも、王家はそれを許容した?」
「はい、醜聞を恐れたのでしょうね。」
「そんな危機管理のない王太子なんてとんだ笑い者だろう。と、こんこんといい含めて父上に諦めさせた奴がいるんだよ。」
腹が立つとばかりに殿下が吐き捨てる。
ああ、繋がった。
「カルヴァン伯爵ですか?」
僕の質問に、よく分かったなという顔で頷かれる。
「伯爵は父の学生時代からの友人だ。その分父上は彼を信頼している。僕から言わせたらそんな助言してくる奴なんて最低だと思うけどね!」
全く持ってその通りだと思う。
隠蔽していい事じゃ無い。
更にカルロス宰相の話は続いた。
「私は事を公にするべきだと思いました。王族の偽称など大罪です。ですが、それを勘付かれたのでしょうね、命を狙われる様になったのです。そしてある日、とうとう逃げきれず大怪我を負ったのですが、ちょうどこの国に来ていたケインの父であるロバーツ伯爵に助けられてラジアンへと逃げたのです。ロバーツ家は代々リンドバーグ公爵家に仕える執事を輩出する家系だとかで、リディアム様に知らせが行き、そのままラジアンで療養させてもらいました。そしてある事情から、エストの宰相になる事を目標にしてラジアンで力を付けたのです。」
「そんな事があったのですか、、、。」
「なんて酷いこと、、、!」
父母が搾り出す様な声で言ったけれど、僕は声も出なかった。
そんな理不尽な理由で家族から命を狙われるなんて、、、!
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