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30 初恋は実らない、なんて誰が言った。(サイラス)
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目覚めると、王宮の僕が滞在している部屋だった。
起き上がろうとすると、身体中が痛い。
「痛っ!」
「あら?良かった、気がついたのね?」
心底ホッとしたような声が聞こえて、目を向けると、寝かされたベッドの枕元近くに綺麗な女性が座っていた。
プラチナブロンドにアメジストの瞳。
ユリアーナ様と同じ色、ラジアン王家の色だ。
と言うことは、王族⁈
「申し訳ありません!こんな姿で失礼を!」
慌てて起きようとしたら、止められた。
「無理しないで寝ていてね。貴方木から落ちて全身打撲なのよ。余程受け身が上手だったのね、打ち身以外は問題無いって医務官が言っていたわ。でも3日間は絶対安静よ。」
「ご迷惑をお掛けします。あの、貴女様はどなたでしょう?」
「あら御免なさい。私ったら謝罪もまだだったわね。私はロイエンタール公爵家のレティシアですわ。この阿呆の母親です。」
と首根っこを押さえつけて差し出されたのは、ロイエンタール公爵家子息、フレドリック様だった。
「この馬鹿が大声でユリアを呼んだせいでユリアが木から落ちて貴方が巻き添えになったのよ。本当に申し訳なかったわ。」
ロイエンタールのレティシア様と言ったら王妹じゃないか⁈
そんな方に頭を下げられるなんて⁈
「とっ、とんでもありません!どうぞ頭を上げてください!そもそも僕達が木に登っていたのが悪いんです!」
よく考えたら、王宮の木に登るなんてとんでも無いことしてるぞ⁈
「そうだそうだ、お前が全部悪いんだ!たかがエストなんて小国の貴族如きがユリアと一緒にいるなんて身の程知らずだぞ!」
「フレッド!」
「ユリアはこの国の王妃になるんだぞ!お前なんかが釣り合うもんか!とっとと消えちゃえ!」
「フレッド!いい加減にしなさい!」
「お前なんか大っ嫌いだー‼︎」
そう叫んで部屋から出て行ってしまった。
「フレッド!」
「いい、私が追う。エストロジア公子、返す返す申し訳ない。アレはよく叱っておくので、勘弁してやってくれないか。アレにも事情があってな。では失礼する。」
そう言って、付き添っていた男性がフレドリック様の後を追って出て行った。
豪奢な雰囲気と言葉使いから、おそらくロイエンタール公爵かな?
「全く、何処で教育を間違えたかしら?本当にごめんなさいね。」
ほう、とため息を吐いて悩ましげな表情で仰る。
けれど、
「いえ、大丈夫です。、、、それに、公子の仰る通りですし。」
“お前が全部悪いんだ!たかがエストなんて小国の貴族如きがユリアと一緒にいるなんて身の程知らずだぞ!
ユリアはこの国の王妃になるんだぞ!お前なんかが釣り合うもんか!”
「あの、ユリアーナ様は王太子妃になられるのですか?」
「ああ、確かに王家はそれを望んでいるわね。でも、リディアム、、、リンドバーグ家はそのつもりは無いと思うわよ。あの家は政略結婚を必要としてないし。」
そこでクスリと微笑まれた。
「これは有名な逸話なのでその内知ることになると思うけど、ユリアーナの母親はエストの伯爵家の出身よ。あの家が身分に囚われない証拠ね。大事なのは本人の気持ちなのよ。貴方も素敵な紳士になったらチャンスはあるかもね?」
口元に人差し指を添えてパチンとウィンクされる仕草が、とんでもなく鮮やかで、
僕の心情を見透かされた様で顔に熱が集まった。
やばい、話を変えなくちゃ。
そうだ、1番大切な事!!!
「あの!ユリアーナ様は大丈夫でしたか⁈」
「あら、御免なさい、私ったら1番大切な事を言い忘れていたわ!大丈夫よ。貴方が庇ってくれたから、あの子も打ち身くらいで済んだわ。あの子は直ぐに気がついたんだけど、貴方の意識が戻らなくて泣きじゃくって手がつけられなくて、リディアムが無理矢理連れて帰ったの。リディアムから、本当に申し訳なかったって伝えてくれと頼まれたわ。改めて謝罪に来るそうよ。」
ああ、良かった。無事だったんだ。
「いえ、謝罪など不要です。そもそも僕が王宮の木に登るなんてとんでもない事をしでかしてますから。こちらこそ謝罪しなくてはいけません。」
「それはどうせユリアが無理に誘ったんでしょう?あの子に逆らえる男の子なんてディアンジェロ位だもの。それにしても、しっかりしてる事!うちの阿呆に見習わせたいわぁ。」
いやもう、この方自分の息子に馬鹿とか阿呆とか容赦ないな~。
「それじゃあ、私もこれで失礼するわ。医務官を呼ぶわね。アレクサンダー殿下にもお知らせしておくわ。」
「ありがとうございます。」
そう言って、レティシア様は部屋を出て行かれた。
程なくして医務官がやって来て、記憶の混濁がないかや痛みの具合等を調べて、痛み止めの薬を置いて下がって行った。
ふう、とため息を吐いてさっきの出来事を思い返す。
ユリアーナ様がご無事で良かった。
打ち身って、たいしたことがなければいいけど。
そして不意にまた蘇る言葉。
“お前が全部悪いんだ!たかがエストなんて小国の貴族如きがユリアと一緒にいるなんて身の程知らずだぞ!
ユリアはこの国の王妃になるんだぞ!お前なんかが釣り合うもんか!”
王家が望んでるほどの方。
同じ公爵家でも家格が全く違う。
分かってるよ、そんな事。
それでも彼女のいろんな表情が頭から離れない。
僕を見て心から嬉しそうに笑ったあの顔が忘れられない。可愛くて可愛くて、こんなに苦しくなるなんて。
ポロポロと涙が溢れる。
「サイラス、目が覚めたって、、、おい、どうした⁈痛むのか⁈」
ちょうど様子を見にきてくれた殿下が心配してくれるけれど、返事さえできなかった。
初恋は実らない
そう、後で言われたのは誰にだったか。
僕じゃ釣り合わない。
でも、思うだけなら許して欲しい。
ミリアンナに会いたいと、
妹が欲しかったと、
ミリアンナを守ってと言っていた。
きっと何か意味があるんだろう。
大丈夫、ミリアンナは僕の大事な妹だもの。
貴女との約束はちゃんと守るよ。
絶対ミリアンナを大切にして守ってみせるから。
幸せにしてみせるから。
ユリアーナ様、安心して。
どうか貴女も幸せになって下さい。
結局そのままユリアーナ様に会うことはなく、僕はエストに帰還した。
起き上がろうとすると、身体中が痛い。
「痛っ!」
「あら?良かった、気がついたのね?」
心底ホッとしたような声が聞こえて、目を向けると、寝かされたベッドの枕元近くに綺麗な女性が座っていた。
プラチナブロンドにアメジストの瞳。
ユリアーナ様と同じ色、ラジアン王家の色だ。
と言うことは、王族⁈
「申し訳ありません!こんな姿で失礼を!」
慌てて起きようとしたら、止められた。
「無理しないで寝ていてね。貴方木から落ちて全身打撲なのよ。余程受け身が上手だったのね、打ち身以外は問題無いって医務官が言っていたわ。でも3日間は絶対安静よ。」
「ご迷惑をお掛けします。あの、貴女様はどなたでしょう?」
「あら御免なさい。私ったら謝罪もまだだったわね。私はロイエンタール公爵家のレティシアですわ。この阿呆の母親です。」
と首根っこを押さえつけて差し出されたのは、ロイエンタール公爵家子息、フレドリック様だった。
「この馬鹿が大声でユリアを呼んだせいでユリアが木から落ちて貴方が巻き添えになったのよ。本当に申し訳なかったわ。」
ロイエンタールのレティシア様と言ったら王妹じゃないか⁈
そんな方に頭を下げられるなんて⁈
「とっ、とんでもありません!どうぞ頭を上げてください!そもそも僕達が木に登っていたのが悪いんです!」
よく考えたら、王宮の木に登るなんてとんでも無いことしてるぞ⁈
「そうだそうだ、お前が全部悪いんだ!たかがエストなんて小国の貴族如きがユリアと一緒にいるなんて身の程知らずだぞ!」
「フレッド!」
「ユリアはこの国の王妃になるんだぞ!お前なんかが釣り合うもんか!とっとと消えちゃえ!」
「フレッド!いい加減にしなさい!」
「お前なんか大っ嫌いだー‼︎」
そう叫んで部屋から出て行ってしまった。
「フレッド!」
「いい、私が追う。エストロジア公子、返す返す申し訳ない。アレはよく叱っておくので、勘弁してやってくれないか。アレにも事情があってな。では失礼する。」
そう言って、付き添っていた男性がフレドリック様の後を追って出て行った。
豪奢な雰囲気と言葉使いから、おそらくロイエンタール公爵かな?
「全く、何処で教育を間違えたかしら?本当にごめんなさいね。」
ほう、とため息を吐いて悩ましげな表情で仰る。
けれど、
「いえ、大丈夫です。、、、それに、公子の仰る通りですし。」
“お前が全部悪いんだ!たかがエストなんて小国の貴族如きがユリアと一緒にいるなんて身の程知らずだぞ!
ユリアはこの国の王妃になるんだぞ!お前なんかが釣り合うもんか!”
「あの、ユリアーナ様は王太子妃になられるのですか?」
「ああ、確かに王家はそれを望んでいるわね。でも、リディアム、、、リンドバーグ家はそのつもりは無いと思うわよ。あの家は政略結婚を必要としてないし。」
そこでクスリと微笑まれた。
「これは有名な逸話なのでその内知ることになると思うけど、ユリアーナの母親はエストの伯爵家の出身よ。あの家が身分に囚われない証拠ね。大事なのは本人の気持ちなのよ。貴方も素敵な紳士になったらチャンスはあるかもね?」
口元に人差し指を添えてパチンとウィンクされる仕草が、とんでもなく鮮やかで、
僕の心情を見透かされた様で顔に熱が集まった。
やばい、話を変えなくちゃ。
そうだ、1番大切な事!!!
「あの!ユリアーナ様は大丈夫でしたか⁈」
「あら、御免なさい、私ったら1番大切な事を言い忘れていたわ!大丈夫よ。貴方が庇ってくれたから、あの子も打ち身くらいで済んだわ。あの子は直ぐに気がついたんだけど、貴方の意識が戻らなくて泣きじゃくって手がつけられなくて、リディアムが無理矢理連れて帰ったの。リディアムから、本当に申し訳なかったって伝えてくれと頼まれたわ。改めて謝罪に来るそうよ。」
ああ、良かった。無事だったんだ。
「いえ、謝罪など不要です。そもそも僕が王宮の木に登るなんてとんでもない事をしでかしてますから。こちらこそ謝罪しなくてはいけません。」
「それはどうせユリアが無理に誘ったんでしょう?あの子に逆らえる男の子なんてディアンジェロ位だもの。それにしても、しっかりしてる事!うちの阿呆に見習わせたいわぁ。」
いやもう、この方自分の息子に馬鹿とか阿呆とか容赦ないな~。
「それじゃあ、私もこれで失礼するわ。医務官を呼ぶわね。アレクサンダー殿下にもお知らせしておくわ。」
「ありがとうございます。」
そう言って、レティシア様は部屋を出て行かれた。
程なくして医務官がやって来て、記憶の混濁がないかや痛みの具合等を調べて、痛み止めの薬を置いて下がって行った。
ふう、とため息を吐いてさっきの出来事を思い返す。
ユリアーナ様がご無事で良かった。
打ち身って、たいしたことがなければいいけど。
そして不意にまた蘇る言葉。
“お前が全部悪いんだ!たかがエストなんて小国の貴族如きがユリアと一緒にいるなんて身の程知らずだぞ!
ユリアはこの国の王妃になるんだぞ!お前なんかが釣り合うもんか!”
王家が望んでるほどの方。
同じ公爵家でも家格が全く違う。
分かってるよ、そんな事。
それでも彼女のいろんな表情が頭から離れない。
僕を見て心から嬉しそうに笑ったあの顔が忘れられない。可愛くて可愛くて、こんなに苦しくなるなんて。
ポロポロと涙が溢れる。
「サイラス、目が覚めたって、、、おい、どうした⁈痛むのか⁈」
ちょうど様子を見にきてくれた殿下が心配してくれるけれど、返事さえできなかった。
初恋は実らない
そう、後で言われたのは誰にだったか。
僕じゃ釣り合わない。
でも、思うだけなら許して欲しい。
ミリアンナに会いたいと、
妹が欲しかったと、
ミリアンナを守ってと言っていた。
きっと何か意味があるんだろう。
大丈夫、ミリアンナは僕の大事な妹だもの。
貴女との約束はちゃんと守るよ。
絶対ミリアンナを大切にして守ってみせるから。
幸せにしてみせるから。
ユリアーナ様、安心して。
どうか貴女も幸せになって下さい。
結局そのままユリアーナ様に会うことはなく、僕はエストに帰還した。
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