36 / 64
36 複雑な僕(サイラス)
しおりを挟む
フランクリンが退場した後は、何事もなかった様に穏やかに過ごせた。
誰もが藪を突く真似をせず、知らんふりを貫いた。
なにしろラジアンの大貴族リンドバーグ相手だからね?
おかげでミリアンナもデビュタントを楽しめたようだ。
ディアンジェロ様に父上、もちろん僕ともダンスを踊って楽しそうにしていた。
心配事が一つ減ったのがよほど嬉しかったようだ。
僕もどさくさに紛れて、ユリアーナ様とダンスを踊った。
流石に3回続けては誘えなかったけど。
アレク殿下にはまた「ヘタレ」と言われたが。
ミリアンナは今、母上と共にデザートを楽しみがてら、他の令嬢方との交流に向かった。
お友達が増えるといいね。
そして、僕達は宰相も含めてアレク殿下の用意してくれた休憩室で今後の相談だ。
「いいタイミングだったろう?宰相に頼んで、フランクリンとカルヴァン伯爵を引き止めて陛下との謁見には間に合わないようにさせたんだぞ。」
殿下が自慢げに言った。
「ええ、おかげで彼らは僕の正体も知らず、ミリアンナの婚約も知らずに墓穴を掘ってくれましたね。でももう少しだけカルヴァンを引き止めてくれてたらフランクリンを断罪できたのに残念でした。」
「ダメよ、ディアンジェロ、そうしたらミリアンナちゃんが悲しんだわよ。」
「、、、そうですね。」
ふわっと微笑む公子を見て、かなり微妙な心境の僕。
コレはアレだよね?
ミリアンナの事気に入っちゃったかな~。
いや、人物的には全く文句はないんだよ。
ラジアンの大貴族の嫡男だし、容姿も中身も文句なし。
なにしろユリアーナ様の弟だ。
問題ある人物のわけがない。
ミリアンナを大切にしてくれるだろう事も分かる。
でもな~、ラジアン遠いしな~。
けど、僕がユリアーナ様貰っちゃったらお互い様だしな~。
「おい、サイラス、顔が面白い事になってるぞ。」
「失礼しました、、、。」
「しかしこれでフランクリン殿下がミリアンナと結婚するのは事実上不可能になりましたね。今後奴らはどう出て来ますかな?」
「そうですね。今回の失態で王子は謹慎になりました。なにしろリンドバーグに喧嘩を売ったんですから。事情を知った陛下もいたくお怒りでディアンジェロ様にはくれぐれも謝罪をと。」
父の言葉を受けて宰相が答える。
「大丈夫です。本気で開戦なんてありませんよ。でもこれで終わりなんて釈然としないな。」
「当たり前でしょ。エストロジアを乗っ取ろうなんて考えだけで厳罰よ。少なくともアズロとカルヴァンの名は消し去ってやるわ。」
「姉上、顔が悪いです。」
「!失礼ね‼︎貴方と比べたら皆んな悪いでしょ!」
「そういう意味じゃないですって。」
ディアンジェロ様がため息をつく。
うーん、どっかで聞いたやり取りだなぁ~。デジャヴ。
コホン、と宰相が場を切り替える。
「今後で考えられるのはやはり直接のエストロジアへの攻撃ですね。」
「まだエストロジア簒奪を諦めていないと?」
「いいえ、今回の事でフランクリンは失脚しました。このままだとおそらく辺境の領地を当てがわれての実質追放でしょうね。」
「まぁ、まだ罪を犯してはいませんから、それが妥当でしょうね。」
「うーん、残念。」
「アズロとカルヴァンを断罪すれば、フランクリンとミランダもついてくるわよ。皆んな綺麗に片付くわ。」
ユリアーナ様の答えにその場にいる皆んなが頷いた。
宰相が続ける。
「こうなれば、フランクリンによるエストロジア簒奪は不可能ですから、奴らはエストロジアを潰そうとしてくると思うんです。まず考えられるのは、予知夢にあった、エドアルド氏への冤罪事件。違法薬物の売買、さらに交易禁止物の密輸もあるかもしれない。」
「アズロが密輸を行なっている?」
「私はこれに関してはカルヴァンが主導していると睨んでます。私がどれほど手を尽くしても尻尾が掴めないのは司法局長官の奴が絡んでいるせいだと。」
「エド叔父さんを密輸容疑で嵌めて、それがエストロジア全体で行なっていた不正だと断罪するという事ですか?」
「はい。違法薬物を含む密輸など大罪です。エストロジアとて免れない。」
「でもどうやって?」
「簡単よ。物証さえあれば相手は司法局長官ですもの。ゴリ押しで有罪よ。」
「そんな⁈」
「エストロジア領の本邸に大量の密輸品と薬物を隠しておいて、執務室の金庫にでもそれらしい売買契約書を放り込んでおけば、動かぬ証拠の出来上がりよ。実際私の予知夢ではそうだったわ。エドアルド様がどんなに無実を訴えても、何の捜査もされなかった。」
「酷い。」
「今回は、こちらのタウンハウスにも同じ事をするでしょうね。それで、エストロジア全体での悪事だと断罪するつもりじゃないかしら?」
「ですが、今では奴らの子飼いは全て捕まえてますよ?それができると思いますかね?」
「でもグレンは泳がしたままでしょう?」
「ええ、アイツは今も何も気づいてない筈です。ローリーを使って偽の情報を常に掴ませてますから。」
「そうよね、今回のミリアンナちゃんとディアンジェロの婚約(仮定)さえも気づいてなかったものね。」
「では、奴等も気付いてないと?」
「ええ。ただ、今回の件でグレンに不審感を持つかもしれないから、、、逆に脅してみましょうか。」
「「「は?」」」
「相手が慌てて事を起こしてくれる様に。」
にっこりと微笑んでユリアーナ様が言った。
誰もが藪を突く真似をせず、知らんふりを貫いた。
なにしろラジアンの大貴族リンドバーグ相手だからね?
おかげでミリアンナもデビュタントを楽しめたようだ。
ディアンジェロ様に父上、もちろん僕ともダンスを踊って楽しそうにしていた。
心配事が一つ減ったのがよほど嬉しかったようだ。
僕もどさくさに紛れて、ユリアーナ様とダンスを踊った。
流石に3回続けては誘えなかったけど。
アレク殿下にはまた「ヘタレ」と言われたが。
ミリアンナは今、母上と共にデザートを楽しみがてら、他の令嬢方との交流に向かった。
お友達が増えるといいね。
そして、僕達は宰相も含めてアレク殿下の用意してくれた休憩室で今後の相談だ。
「いいタイミングだったろう?宰相に頼んで、フランクリンとカルヴァン伯爵を引き止めて陛下との謁見には間に合わないようにさせたんだぞ。」
殿下が自慢げに言った。
「ええ、おかげで彼らは僕の正体も知らず、ミリアンナの婚約も知らずに墓穴を掘ってくれましたね。でももう少しだけカルヴァンを引き止めてくれてたらフランクリンを断罪できたのに残念でした。」
「ダメよ、ディアンジェロ、そうしたらミリアンナちゃんが悲しんだわよ。」
「、、、そうですね。」
ふわっと微笑む公子を見て、かなり微妙な心境の僕。
コレはアレだよね?
ミリアンナの事気に入っちゃったかな~。
いや、人物的には全く文句はないんだよ。
ラジアンの大貴族の嫡男だし、容姿も中身も文句なし。
なにしろユリアーナ様の弟だ。
問題ある人物のわけがない。
ミリアンナを大切にしてくれるだろう事も分かる。
でもな~、ラジアン遠いしな~。
けど、僕がユリアーナ様貰っちゃったらお互い様だしな~。
「おい、サイラス、顔が面白い事になってるぞ。」
「失礼しました、、、。」
「しかしこれでフランクリン殿下がミリアンナと結婚するのは事実上不可能になりましたね。今後奴らはどう出て来ますかな?」
「そうですね。今回の失態で王子は謹慎になりました。なにしろリンドバーグに喧嘩を売ったんですから。事情を知った陛下もいたくお怒りでディアンジェロ様にはくれぐれも謝罪をと。」
父の言葉を受けて宰相が答える。
「大丈夫です。本気で開戦なんてありませんよ。でもこれで終わりなんて釈然としないな。」
「当たり前でしょ。エストロジアを乗っ取ろうなんて考えだけで厳罰よ。少なくともアズロとカルヴァンの名は消し去ってやるわ。」
「姉上、顔が悪いです。」
「!失礼ね‼︎貴方と比べたら皆んな悪いでしょ!」
「そういう意味じゃないですって。」
ディアンジェロ様がため息をつく。
うーん、どっかで聞いたやり取りだなぁ~。デジャヴ。
コホン、と宰相が場を切り替える。
「今後で考えられるのはやはり直接のエストロジアへの攻撃ですね。」
「まだエストロジア簒奪を諦めていないと?」
「いいえ、今回の事でフランクリンは失脚しました。このままだとおそらく辺境の領地を当てがわれての実質追放でしょうね。」
「まぁ、まだ罪を犯してはいませんから、それが妥当でしょうね。」
「うーん、残念。」
「アズロとカルヴァンを断罪すれば、フランクリンとミランダもついてくるわよ。皆んな綺麗に片付くわ。」
ユリアーナ様の答えにその場にいる皆んなが頷いた。
宰相が続ける。
「こうなれば、フランクリンによるエストロジア簒奪は不可能ですから、奴らはエストロジアを潰そうとしてくると思うんです。まず考えられるのは、予知夢にあった、エドアルド氏への冤罪事件。違法薬物の売買、さらに交易禁止物の密輸もあるかもしれない。」
「アズロが密輸を行なっている?」
「私はこれに関してはカルヴァンが主導していると睨んでます。私がどれほど手を尽くしても尻尾が掴めないのは司法局長官の奴が絡んでいるせいだと。」
「エド叔父さんを密輸容疑で嵌めて、それがエストロジア全体で行なっていた不正だと断罪するという事ですか?」
「はい。違法薬物を含む密輸など大罪です。エストロジアとて免れない。」
「でもどうやって?」
「簡単よ。物証さえあれば相手は司法局長官ですもの。ゴリ押しで有罪よ。」
「そんな⁈」
「エストロジア領の本邸に大量の密輸品と薬物を隠しておいて、執務室の金庫にでもそれらしい売買契約書を放り込んでおけば、動かぬ証拠の出来上がりよ。実際私の予知夢ではそうだったわ。エドアルド様がどんなに無実を訴えても、何の捜査もされなかった。」
「酷い。」
「今回は、こちらのタウンハウスにも同じ事をするでしょうね。それで、エストロジア全体での悪事だと断罪するつもりじゃないかしら?」
「ですが、今では奴らの子飼いは全て捕まえてますよ?それができると思いますかね?」
「でもグレンは泳がしたままでしょう?」
「ええ、アイツは今も何も気づいてない筈です。ローリーを使って偽の情報を常に掴ませてますから。」
「そうよね、今回のミリアンナちゃんとディアンジェロの婚約(仮定)さえも気づいてなかったものね。」
「では、奴等も気付いてないと?」
「ええ。ただ、今回の件でグレンに不審感を持つかもしれないから、、、逆に脅してみましょうか。」
「「「は?」」」
「相手が慌てて事を起こしてくれる様に。」
にっこりと微笑んでユリアーナ様が言った。
90
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄ありがとうございます。自由を求めて隣国へ行ったら、有能すぎて溺愛されました』
鷹 綾
恋愛
内容紹介
王太子に「可愛げがない」という理不尽な理由で婚約破棄された公爵令嬢エヴァントラ。
涙を流して見せた彼女だったが──
内心では「これで自由よ!」と小さくガッツポーズ。
実は王国の政務の大半を支えていたのは彼女だった。
エヴァントラが去った途端、王宮は大混乱に陥り、元婚約者とその恋人は国中から総スカンに。
そんな彼女を拾ったのは、隣国の宰相補佐アイオン。
彼はエヴァントラの安全と立場を守るため、
**「恋愛感情を持たない白い結婚」**を提案する。
「干渉しない? 恋愛不要? 最高ですわ」
利害一致の契約婚が始まった……はずが、
有能すぎるエヴァントラは隣国で一気に評価され、
気づけば彼女を庇い、支え、惹かれていく男がひとり。
――白い結婚、どこへ?
「君が笑ってくれるなら、それでいい」
不器用な宰相補佐の溺愛が、静かに始まっていた。
一方、王国では元婚約者が転落し、真実が暴かれていく――。
婚約破棄ざまぁから始まる、
天才令嬢の自由と恋と大逆転のラブストーリー!
---
悪役令嬢に転生!?わたくし取り急ぎ王太子殿下との婚約を阻止して、婚約者探しを始めますわ
春ことのは
恋愛
深夜、高熱に魘されて目覚めると公爵令嬢エリザベス・グリサリオに転生していた。
エリザベスって…もしかしてあのベストセラー小説「悠久の麗しき薔薇に捧ぐシリーズ」に出てくる悪役令嬢!?
この先、王太子殿下の婚約者に選ばれ、この身を王家に捧げるべく血の滲むような努力をしても、結局は平民出身のヒロインに殿下の心を奪われてしまうなんて…
しかも婚約を破棄されて毒殺?
わたくし、そんな未来はご免ですわ!
取り急ぎ殿下との婚約を阻止して、わが公爵家に縁のある殿方達から婚約者を探さなくては…。
__________
※2023.3.21 HOTランキングで11位に入らせて頂きました。
読んでくださった皆様のお陰です!
本当にありがとうございました。
※お気に入り登録やしおりをありがとうございます。
とても励みになっています!
※この作品は小説家になろう様にも投稿しています。
「不吉な黒」と捨てられた令嬢、漆黒の竜を「痛いの飛んでいけー!」で完治させてしまう
ムラサメ
恋愛
漆黒の髪と瞳。ただそれだけの理由で「不吉なゴミ」と虐げられてきた公爵令嬢ミア。
死の森に捨てられた彼女が出会ったのは、呪いに侵され、最期を待つ最強の黒竜と、その相棒である隣国の竜騎士ゼノだった。
しかし、ミアが無邪気に放った「おまじない」は、伝説の浄化魔法となって世界を塗り替える。
向こう見ずな天才騎士に拾われたミアは、隣国で「女神」として崇められ、徹底的に甘やかされることに。
一方、浄化の源を失った王国は、みるみるうちに泥沼へと沈んでいき……?
神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました
青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。
それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。
分厚いメガネを外した令嬢は美人?
しゃーりん
恋愛
極度の近視で分厚いメガネをかけている子爵令嬢のミーシャは家族から嫌われている。
学園にも行かせてもらえず、居場所がないミーシャは教会と孤児院に通うようになる。
そこで知り合ったおじいさんと仲良くなって、話をするのが楽しみになっていた。
しかし、おじいさんが急に来なくなって心配していたところにミーシャの縁談話がきた。
会えないまま嫁いだ先にいたのは病に倒れたおじいさんで…介護要員としての縁談だった?
この結婚をきっかけに、将来やりたいことを考え始める。
一人で寂しかったミーシャに、いつの間にか大切な人ができていくお話です。
第二王女と次期公爵の仲は冷え切っている
山法師
恋愛
グレイフォアガウス王国の第二王女、シャーロット。
フォーサイス公爵家の次期公爵、セオドア。
二人は婚約者であるけれど、婚約者であるだけだった。
形だけの婚約者。二人の仲は冷め切っているし冷え切っている。
そもそも温度など、最初から存在していない。愛も恋も、友情も親しみも、二人の間には存在しない。
周知の事実のようなそれを、シャーロットもセオドアも否定しない。
お互いにほとんど関わりを持とうとしない、交流しようとしない、シャーロットとセオドアは。
婚約者としての親睦を深める茶会でだけ、顔を合わせる。
親睦を深める茶会だというのに、親睦は全く深まらない。親睦を深めるつもりも深める意味も、二人にはない。
形だけの婚約者との、形だけの親睦を深める茶会。
今日もまた、同じように。
「久しぶりに見る君が、いつにも増して愛らしく見えるし愛おしく思えて、僕は今にも天に召されそうなほどの幸福を味わっている。──?!」
「あたしのほうこそセオ様とお顔を合わせること、夢みたいに思ってるんですからね。大好きなセオ様を独り占めしているみたいに思えるんですよ。はっ?!」
顔を合わせて確認事項を本当に『確認』するだけの茶会が始まるはずが、それどころじゃない事態に陥った。
出来損ないと呼ばれた公爵令嬢の結婚
奏千歌
恋愛
[できそこないと呼ばれても][魔王]
努力をしてきたつもりでした。
でもその結果が、私には学園に入学できるほどの学力がないというものでした。
できそこないと言われ、家から出ることを許されず、公爵家の家族としても認めてもらえず、使用人として働くことでしか、そこに私の居場所はありませんでした。
でも、それも、私が努力をすることができなかった結果で、悪いのは私のはずでした。
私が悪いのだと、何もかもを諦めていました。
諦めた果てに私に告げられたことは、魔法使いとの結婚でした。
田舎町に住む魔法使いさんは、どんな方なのか。
大きな不安を抱え、長い長い道のりを歩いて行きました。
【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。
ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。
彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。
婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。
そして迎えた学園卒業パーティー。
ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。
ガッツポーズを決めるリリアンヌ。
そのままアレックスに飛び込むかと思いきや――
彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる