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3◇昔のことを語りませんかぁ? その2◇
しおりを挟む「───つまりあんたにある記憶は、魔法とは物語ぐらいでしか縁がない、見たことも使った事もない。さらにここにはない、鉄の乗り物が地上だけでなく、地下も空も海も行き交っている世界のだと・・・フム・・・」
居間と思しき部屋にあった鏡で現在の自分の姿を確認したあと、おじいさんに「本当の私はこんな姿じゃない!」っと涙ながらに訴えた。
表情が乏しいながらも困惑したおじいさんは、とりあえず落ち着けと傍にあった椅子に座らされて私が分かる限りの情報を伝えた。
それこそ個人情報まで・・・
「・・・・・・・・・両手をこれへ」
暫く難しい顔をして思案していたおじいさんが、自身の両手を差し出してそこに私の手を乗せるように言ってきた。
話を聞いてもらって少しは落ち着た。流した涙もやっと止まったばかりだ。
現状、私が縋ることできるのは、この目の前にいるおじいさんしかいないので、素直に従っておじいさんの皺と節くれが目立つ肉厚な掌にそれをのせた。
乗せたのを確認し、一度こちらを見た後に口の中でブツブツと念仏のようなよくわからない言葉を唱えだした。
「あっ・・・」
合せた手から、淡い光がぼんやりあふれてきた。
それを確認するや、またさっき魔法をかけてもらったような浮遊感を感じた。
今度はさっきの様に一瞬でなく長目に感じた。
なんか、温水プールでプカプカ浮いているような微睡んでしまいそうなそんな温かみのあるかんじ。
どのくらいそうしていたのか、気が付くと乗せていた掌は私の膝に戻されておじいさんはちょっと安心したような、困ったようななんとも言い難い表情でまた目の前にいた。
「その体は、あんたのものだ。魂が体を乗っ取ったわけではないようだ。
おそらく、
転生だろう・・・」
◇
転生
輪廻転生ってことで、つまりは一度死んだ魂が再びこの世に生を受けることって、ザックリ説明してくれた。
うん、それは何となくわかるよ。
「転生でよかった・・・」
そうぽつりといったおじいさんは、ほっとしていた。
聞けば万が一私が誰かの体を魂が乗っ取っていたら、禁術を使ったということで魂ごと消滅させないといけなくなるところだったそうだ。
死者の体、若しくは生者であっても乗っ取る魂の力が強かった場合その体は別の魂が居つく。
それは随分前から禁術となっていて、もしも禁を犯しこの術やこれに準ずる術を使ったものは、問答無用で命を止めるだけでなく、魂さえも消されて輪廻の輪からも消滅させられるという。
なにそれ怖いんだけど
そしてそれができるというおじいさんって何者?
あっはい、今から説明してくださるんですね。わかりました待ちますからそんなに睨まないでください。
昔のこと、この世界に魔王がいたらしい。
魔王は邪気を操り、正常な動物、人間を闇で使役して他国を攻めていた。
攻めた国の人たちの体に魔族の魂を入れて、従属させていった。
そのため魔族が支配する国が増え、その他の国がじわじわと侵略されていったそうだ。
その魔王を倒さんと50年ほど前にこの国リド国から勇者が討伐パーティを組み。
見事、魔王の討伐に成功したのだという。
RPG好きとしてはそこのところをもう少し詳しく聞きたかったけど、おじいさんの一睨みでで口を閉ざしました。
イケオジの鋭い睨み・・・逆らえない。
とにかく、私の魂とこの体はキチンと対になっているらしく、何かショックなことにより記憶喪失になり、それによる前世の記憶が蘇ったというのがおじいさんのざっくりとした見解だった。
致死量の血を流すほどの怪我を負ってここまで逃げてきたのだから、何らかの事故か事件に巻き込まれたのは間違いがないだろうという話をきかされ、その日は力尽きた。
興奮状態だったのとおじいさんがかけてくれた『ヒール』でずいぶん緩和された痛みと塞がっていた背中の傷が開いたようで、話している間にも背中がジクジク痛み出して話に集中できなくなってしまった。
おじいさん改めクレイさんの親切によりしばらくここに置いてもらえることになった。
この世界について何の記憶もない私をこのまま放りだして折角助けたことが無駄になっては夢見がわるいとかなんとか言っていたけど、親切で置いてくれるんだと思う。
ちょっとしか話していないけどおじいさん改めクレイさんは絶対いい人だと思う。
うん、絶対!
そうじゃないと私は誰も信じられないぞ
多分おじいさんはツンデレ属性だ。
そうだ!
きっと、絶対にそうだ!
だから、私はおじいさん改めクレイさんの好意に甘えることにした。
ありがたく・・・
本当に感謝しています・・・
だけど、その時は疲労困憊、頭が混乱していたこともあってあの時のおじいさんの話をもっと詳しく聞いておくのだったとかなり経ってから後悔することになる。
あれから2週間、私はおじいさん改めクレイさんの、お家の家政婦さんしています。
◇
あれから、あの恐怖の薬を日に1回飲み、朝晩と『ヒール』をかけてもらって、徐々に少しずつ動き出して背中の傷の痛みはちょっと引きつりするけど直接触らない限り気になくなっていたころにクレイさんに言われた
「さてこれまでの治療に関しての報酬を貰おうか」
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「クレイさんすいません。お金は───」
「お金がないなら体で貰おう」
クレイさんと暮らしだして2週間だけどクレイさんは無表情がデフォルトで、あまり表情が変わらない。
最初のあの話の時ほどの変化はあれからみていない。
そんなクレイさんからは、この世界の常識を少しずつ伝授してもらっている、そのついでに、クレイさんのこともちゃっかりききだしちゃったりした。
クレイさんは、もとは神殿にいた神官様だった。
魔王が倒れたあと、治療魔法が得意なクレイさんは国中を回って体や心に負った人々の傷を癒す旅をしていた。その旅で奥さんと出会い結婚して、子供が生まれて。さすがに巡礼をしながらでは子育ては難しいということで旅をしているときに仲良くなった友人がいた村で居を構えてそこで治療師として平和に長い間過ごしていたそうだけど、子供夫婦を亡くしてからは残された孫さんとこの山深い中で暮らしだしたそう。孫さんももうすでに成人していて今は冒険者として各地を回っているとのこと。生存確認で数か月に1度、近くの町にある冒険者ギルドを通じて手紙が届くらしい。
そして、魔法。
クレイさんは回復魔法のほかに土属性の魔法が使えるらしい。土の魔法はまだ見せてもらっていないけどどんな魔法なのかなぁ。
この世界にある魔法は、火・水・風・土・光・闇の6属性からなる。
魔法は攻撃や治療に用いるほかにも、生活魔法に活用されている。
この家の竈の薪に火をつけるもの魔法を使ってだし、水を大きな甕にためておくにも魔法を使うらしい。
おもしろいなぁ。
元気になったら教えてくれると言ってくれた・・・のになぁ。
「───かっ、カラダでって!!!
クレイさん!私はそんなことにこの体をつかいたくないですっ!!!」
助けてもらったけどそういってもいいよね!
私、情人になんてなりたくない。
この体で生きてきた記憶はないけど、愛李として生きてきた時だってハジメテは大切に大切に厳重な鍵をかけて守ってきたくらいです。
いくら、助けてもらってお金のためでも、ダメ!絶対!!
私の中ではそれはダメって、無理だもん。
「お金なら時間かけてでも頑張って返しますから、それはできません」
「ほう、家事もできなってことはやっぱりあんたは貴族なのか?」
カジ?火事?家事?!
ああ、家事ね。
つまりは・・・
「・・・・・・・・・・・・家政婦を、すればいいの?」
そういってジトッとチョイにらみで見てもクレイさんってば頷くだけ。
でもそういう紛らわしい言い方をした自覚絶対あるよね。
笑ってる風に見えないのに目元に皺が寄ってる。
笑うのを我慢してるでしょ!
絶対に揶揄ってる!
もう、意外とお茶目かもしれない。
全く、分かりにくい人。
私は家事はオールマイティにできるよ。私はある事情から結婚する気がなかったから、老後を一人で過ごすために自炊はもちろん、人に頼らずに頑張れる術を身に着けるようにしていた。一人暮らしじゃなかったけど、両親共働きだったから自分のことは自分でが我が家のモットーだったし、社会人になってからもそれは変わらなくて、寧ろ親を楽にさせるくらいはしてよぉっていうお母さんの言うことで働きながらでも家事分担制を我が家ではしていた。お父さんもお兄ちゃんも勿論入ってます。家事は女だけがすることじゃないもんね。まあそれがなくても中学生のころから私も家事事は頑張ってましたけどね。
結婚してうちを出たお兄ちゃんのお嫁さんからうちもそうしようぉっていわれて、越智家の伝統になりつつあったのよね。
これはまだ幼稚園の甥っ子にも受け継がれないとね。
いい事いい事。
その様子を・・・私は見れないけど・・・
クレイさんから亡き奥様が若いころ着ていた服を恐縮しながら譲ってもらってゆるゆると行動を起こしだした。
ここでは基本クレイさん一人なので自給自足がほとんど。
裏に畑があり、そこで野菜のほかに薬草も育てているらしい。
野菜は自宅で消費して、薬草は乾燥が必要なものは加工して、生のままがいいものは町に行く日に摘んで売りに行って自給できないものを買うという生活をしているらしい。
それじゃあ、材料とかも大切に使わなとね。
まずは・・・・・・・・・
食事よりも掃除洗濯!!!
ここにきてから、洗濯しているところも掃除いているところも見たことがない。
聞けばそれらは『クリーン』という洗浄魔法できれいにしているとのことだけどやっぱりシーツはお日様に干したいし、お掃除も確かにきれいなんだけどなんかね?やっぱり拭き掃除とかもしたい。
私も『クリーン』は何度かかけてもらって、お風呂に入らなくてもいいし動けないときには利点が多かったけど、根っからの日本人はやっぱり風呂に入りたいよね。
でも、無いんだってこの世界・・・
熱いお湯の湯舟・・・
香り立つ入浴剤・・・
入りたいよぉ
それはさておき、お洗濯は裏の水場でジャブジャブ踏み洗い。
洗剤は石鹸があってよかった。
ないならあきらめないといけなかったから、よかったよ。
石鹸はハーブが使われていて爽やかな香りがいい。
あの香りは庭で栽培している、クウという薬草ハーブとのこと。
清涼な香りもだけど、香りでリラックスできてお茶にして飲んでも精神的に落ち着ける効果があるらしい。
いいなぁ、これ。
食べれるなら料理にもつかえないかなぁ~。
後で聞いてみよぉ~。
家事は嫌いじゃないから洗濯も掃除も楽しくやらせていただいて。
料理もあるもの使って作って、材料がすくなくなったなぁと思っていたらいつの間にか補充されていた。
しかもその補充された材料を見てみたら前に作ったココナッツもどきとトマトに鶏の煮込み料理の材料で・・・
もしかして気に入りましたか?
クレイさんってば、言ってくれたらいいのにね♪
このツンデレめっ!
そうしながらクレイさんと暮らしだして3か月。
途中に予期せぬ出来事で体調を崩したりはしたけど、クレイさんとの同居生活は概ね良好で、その間2度ほど町に連れて行ってもらいました。
その時に服を買ってもらったりしてありがたかった。
町の人たちは、クレイさんが連れてきた私が気になったようだけど、聞いてくるような人はいなかったから、何にも言わなかったけど良いよね。
すっごく興味深々で見ていたけど・・・クレイさんもなにも言わないし・・・ううん、気にしないようにしよう。
◇
「『ヒール』」
自分の両手を頬に当てて詠唱するとキラキラとした雪の結晶のような光が現れ私の全身を包み体の中に消えていった。
光が消えた後、自分の体を改めてもおかしいところはない。
ヨシ!
毎朝の日課。
怪我は相当ひどかったらしく、背中に大きな傷痕が残ってしまっている。
傷口に盛り上り再生した皮膚の引きつる違和感は消えない。食器を洗っていても窓ふきをしていても、洗濯して干していても違和感があって快適で滑らかな動きができなかった。
だから、つい真似事のつもりでクレイさんがしたように試しにしたら──────できた。
うん、できたらいいなぁ~っていうくらいの気持ちでしたのに────────できちゃった。
あの時のクレイさんの顔。
顎が外れたようにポカーンって口を開けて、何か言いたいのに何を言っていいのかわからないようなそんなかんじ?
まあ、そのあと怒られたけどね。
「不確定な魔法を使って暴走したらどうするつもりだ!せっかく治った体がまた傷つくんだぞ!!!」
久しぶりに重低音を利かせた怒鳴り声をききました。
すいません、反省します。
今度からは一言聞いてからやりますねって言ったら蟀谷をピクピクさせていて般若のごとくの顔で固まってしまった。なんか返事間違えたかなぁ?
そう思っていたら両手を取られて、ぎゅっと握られたクレイさんの手から暖かい魔力が流れてきた。
この暖かいものが魔力だっていうのは早くにおしえてもらっていた。その魔力は私の体をめぐって再びクレイさんと繋がれた手に戻ってきた。
「・・・・・・ふぅ、おかしいところはないようだ。寧ろ・・・・・・・・・・・・よく効いている。」
そう言われてさっきのは、全身をチェックしたんだと分かった。
クレイさんは顔の筋肉を緩めて、ホッとしている?みたい?
そのあとは怒涛のお説教に入りまして・・・
魔力があるからと言って、魔法は誰でもつかえるものではない!
魔力の流れを魔法術に組みなおして魔法を構築させて放出する!
発動までにそれらを行い、かつ適切な魔力を流す必要がある!
魔法には属性があるように、鑑定で何の属性が使えるか確認をしないといけない!
知らずに使えば、不発ならまだしも暴発暴走につながる!
とにかく!
思い付きで魔法を使うな!!!!!
と、それはそれはいい声に厚みを増した声で怒られました。
本当にすいませんでした。
あの日のクレイさんは怖かった
・・・本当に
あれから私は朝起きたらまずは『ヒール』をかけて行動をすることにした。
これによって体調はすこぶるよくなった。
日々体調に気を使って順調にこの世界に馴染んで行っていたような気がする。
今思えば数か月で愛李として培った価値観がちがう世界に馴染むはずもなく。
私は知らず知らずにかなり無理をしていたみたい。
あとで大変なことになるのに、今ならそんな行動はしなかったかな?
それからしばらくしてから、里帰りをしたフィオナさんと一緒についてきた幼馴染で組んだパーティーのメンバーと出会い、色々あって旅に出て今に至る。
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