誰かこの子のお父さんをしりませんかぁ?

かみい

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19◇お城にいきませんかぁ◇

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「わあぁぁぁ~、しゅごいねぇ!!!」

興奮しすぎで涎を飛び散らして叫ぶマナ。
大きなお目目はキラキラと、ぷくぷくほっぺは林檎のように色づいて、遠慮がちにいって超絶かわいい。
飛び散る涎さえ、キラキラエフェクトに見える私は、親バカも末期だ。
昨日までのマナもかわいいけど、今日はさらにかわいい。
明日は、もっと可愛い!
絶対、可愛い!!
もう、世界一可愛い!!!
この世で一番可愛い!!!!!

その可愛いマナは、移動に乗っている馬車の窓から頭どころか上半身を乗り出して行く先に見える景色に大興奮だ。
馬車から見えて居る景色は、カラフルな屋根に白い壁の乱雑に見えてそれが何故か美しく見える街並み。その先に見える、小さくキラキラと太陽を弾いて輝く湖の向こうの建つ白亜の城。
赤い尖塔に白い壁の城は、童話に出てくるようなかわいらしく綺麗で、乙女の夢が詰まった城のように見える。

「マナ!あんまり乗り出すと、おっこちゃうぞ。」

そう言って、マナのぽっこりお腹を大きな手で支えているのはジェフさん。

「ほら、マナ見てお城よ。昨日、絵本で読んだでしょ?」

「おしろぉ~。おひめしゃまいるぅ?」

ジェフさんの真向かいに座って、いつもよりも興奮しているマナにデレデレなフィオナさんがマナに話しかけるが、さらに興奮してマナはジェフさんの忠告を忘れたようにさらに窓から乗り出そうとする。

「危ないわよ、マナ」

「大丈夫、大丈夫だよぉ。マナには僕が転落防止の魔法をかけておいたから。
それにアイリがあげた防御結界の魔石の髪飾りで、もしもなんて起きないよぉ」

さらに乗り出したマナに私が驚いて腰が浮くが、マナの向かいに座っているヒューバートさんがのんびりとした声で教えてくれる。だけど、窓から落ちたら驚くし、いくら肝の据わったマナとは言え、絶対に泣くに決まっています。

「まあまあ、もうすぐ着くからマナも落ち着いて・・・」

フィオナさんやヒューバートさんと違って、私と同じようにもしもを危惧してアシュトンさんは、マナを落ち着かせようとしている。
だけど、落ち着くはずがない。それは、わたしも一緒だから。
そう、今この馬車には、いつものメンバーが乗っている。
いつもと違うのは、乗っている馬車。

「マナちゃんね、おひめさまのばしゃでおしろにいくのぉ!」

マナの興奮した声。
その言葉通り、マナと私はお城に向かっている。
いつもの冒険につかう頑丈でシンプルな馬車ではなく、華美ではないけど高級とわかるそれこそお貴族様が使うような馬車に乗っている。
勿論、乗っている皆さんも馬車に似合った服装だ。
ジェフさんは騎士のような房飾りのついた服、ヒューバートさんは長い丈のローブはいつもよりも豪華な刺しゅう入りのものをつけている、フィオナさんなんて体に沿って流れるようなマーメイドラインのドレスでいつもよりもセクシー。
さらにさらに、アシュトンさんはもう───

「おうじさまぁ~」

本来食べることしか興味がないマナが、アシュトンさんを見てそういった。
マナの言う通り!

着ている服は、ジェフさんと似た色違いの騎士服のようなのに、印象が全く違う。
薄水色の地に白い房飾り、詰襟の騎士のような服がしなやかな筋肉質の体を包み、精錬とした雰囲気なのに華やいだ姿だ。
況してや、金髪碧眼という王子様の代名詞を持っているアシュトンさんは、もう王子様感半端ない!
下手なコスプレよりも、ほんまもんです。

「ママもおひめしゃまぁ」

そして・・・
何故か、私もドレス姿。そんな自分に落ち着きかない。こんなん、結婚さえも縁が無かったから初めてのことで、自分的にはコスプレしているとしか思えない。
だというのに───


「緊張しているのか?
大丈夫だ、似合っている。マナの言う通り、本当にお姫様みたいだぞ。」

アシュトンさんのまっすぐ顔を見て蕩けるように微笑む姿に、顔に熱がこもる。社交辞令だとは、わかっていても本当にお姫様気分になる。
しかも、皆さんと一緒に王族の方々に会うと言うことで・・・
緊張しないわけはないでしょ!




どうして、こうなった?
















「えっ?お城にですか?」

それは、マナの3歳の誕生日の夜のこと。
マナの誕生日は、一日中仕事を休みマナと遊び倒すつもりでいた。
そして、当日起きて見ればアシュトンさんを始め皆さんも同じ考えだったらしく、こちらも一日を開けてくれていた。
朝早くからヒューバートさんとジェフさんと宿前の広場で遊んでもらい、その間私とフィオナさんでお弁当を作りアシュトンさんが持って近くの森でピクニックをすることにした。
随分前にアシュトンさんたちが見つけた花畑に転移魔法で移動して、そこでも追いかけっこをしたり花冠を編んだりしてマナが疲れて眠ってしまうまで大人たちも全力で遊んだ。
大きな体で、マナの歩みに合わせて『がお~』と追いかけるジェフさんにお腹が痛くなるほど笑いながら駆け回り、意外と器用に綺麗な花冠を作るアシュトンさんから頭にのせてもらい嬉しそうに笑うマナを見て充実した一日を過ごした。
疲れて眠ってしまったところで、また転移で宿に戻ってから夜は、ささやかなお誕生日会を開いた。宿の食堂の一部を貸し切らせていただき、マナが喜ぶような所謂お子様ランチ擬きを作り、最後はマナが大好きなプリンで作った巨大プリンアラモード。
お昼寝から覚めたマナは、そのご馳走を目にして、キラキラと輝く瞳と小さな体を大きく跳ねさせ喜びを表した。勿論、すべて頬をリスのように膨らませて残さず平らげ、その様子を私たち大人は嬉しそうに眺めていた時だった。

「なぁ、マナはお城を見たくないか?」

唐突すぎる問いかけをしたのは、ジェフさんだった。
まなに問いかけながら、その視線は私にも向けられている。

「毎年、この時期に俺たちは城に集まるんだが、マナももう3歳になったことだし、一緒にどうかと思ってな。
マナ、プレゼントの絵本に出てくる、ほらこれが城だぞ。赤い屋根で白い壁でお~~~っきい城、見たくないか?お姫様はいないけど、女王様と王子さまはいるぞ?どうだ?!」

ジェフさんの言う絵本は、食事前に渡されたキラキラと装飾された王子様とお姫様が出てくる幼児向け絵本のこと。その表紙には、金髪碧眼の王子様とお姫様、そのバックに白亜の城が絵が描かれている。
食事の合間合間に、隣でフィオナさんが捲って見せていて、嬉しそうにしていたのはつい先ほどのこと。
その興奮冷めぬ間に、提案されたことそれは勿論・・・

「いくぅ!!!
マナちゃん、おしろにいく!!!!!」

って、こうなりますよね。
嬉しそうにキャッキャして、閉じた絵本をもう一度開いてキラキラした目で眺める姿を見ると連れて行きたくなるけど・・・いやいや、待ってよ。お城と言っても、某夢の国のように入場料を払えば、誰でも入れるようなお城とは違う。この世界のお城といえば、ほんまもんの王族方が済んでいる場所。国の中枢を担う、国会のような場所でもあるわけで、そうそう簡単に行ける場所ではない。
こんな身元不明の、子連れが簡単に「おじゃましま~す」なんて入れる場所ではない。

「えっと、マナ、あのね、お城には」

「勿論、先方からの許可は取ってある。」

私が言い出しにくくマナにダメと言いかけるが、それを遮るようにジェフさんの追撃が出る。
さらに、フィオナさんたちまでもが、

「そうよ、お城にはじいちゃんも来るから、会えるわよ!」

「マナのために、お城に行くお姫様の服も用意してあるんだぞ!」

立て続けに被せてくるものだから、私の意見を挟む余地がない。
マナに至っては、みんなが話すことに興奮して喜んで涎が出だした。

「じぃじもぉ、いっしょぉ!!!」

生まれた時から、クレイさん大好きっ子なマナが喜ばないわけない。
ただでさえお出かけが大好きなのに、絵本で見たようなお城+お姫様のお洋服ときて、更には偶にしか会えない大好きなクレイさん=行く以外の答えはありません。

「あのぉ、迷惑じゃないですか?」

答えは一択と分かってはいても、確認をしてい仕舞う。小心者なのです。
私って、思い切ってやるときは突っ走るけど、基本的に日本人らしく石橋を叩いて渡る的な性格なのよ。

「すまない、アイリ。これは決定事項なんだ。」

「マナが3歳になるまで、待ってもらっていたんだ。」

ジェフさんとアシュトンさんが、声を潜めながらすまなそうに話す。
それは、ずっと以前より私をお城にクレイさんのお仲間、つまりは皆さんの家族たちが連れてくるようにと要請があったらしい。けど、私は妊婦でマナを産んでも3歳になるまでは、と、クレイさんが拒んでくれていた。そして、マナが3歳になった今、正確には昨日の内に招待状という名の強制召喚状が届いたという。
これ以上断る理由もないから、一緒に来てほしいと・・・

・・・・・・つまりは、拒否権なしのヤツですね?

よく考えれば、今は仲良くしてもらっている皆さんもあの時、クレイさんの家に転がり込んだ私を怪しんでいたのだから、ほかの人だって怪しむはず。
それを妊婦だということで、クレイさんが躱してマナが生まれてからももう少し大きくなってから、つまりは、私が独り立ちできるころまで待ってくれていたということだ。

マナも3歳になって、そろそろと考えていたのは私も同じだし・・・

この遠出が、最後の思い出作りになるなら・・・

「では、ご一緒させてください。」

心の奥で広がる寂しさに蓋をして、返事をする。
私の返事にジェフさんもアシュトンさんも、ホッとした表情だ。おそらく、ジェフさんたちみんなにも待ってくれていたのよね。ここまで本当に迷惑をかけてきたなぁ。
最後に、何か私でできる恩返しはないかなと、笑顔の奥で考えを巡らせてその日は楽しく終わった。




そして、2日後にはお城のある王都へ旅立ったのである。



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