誰かこの子のお父さんをしりませんかぁ?

かみい

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22◇穴を掘って入りませんかぁ?◇

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「うぇぇ、えっぐっ、日奈子がぁ・・・、ハッピーエンドのぉ・・・」

「あ、アイリ、大丈夫?」

「・・・・・・オイオイ」

「あっ、じいじ!!!」

「うぉっ」

突っ伏して涙を流す私は、さぞかしおかしな女認定されたことだろう。
泣いている最中は、傍に駆け寄ってくれたアシュトンさんの優しい声も隣でオロオロするジェフさんの声も、耳に入らなかった。
がっ、マナの元気な声に意識がやっと戻った。我が子の声にはどんなときも反応してしまう、母親3年生です。
マナの声につられて顔を上げれば、どこぞの舞台か映画の中のような美しく着飾った男女が奇怪な目をしてこちらを見ていた。

あっ・・・・・・・・

「じいじ、みてぇ!マナおひめしゃまぁ~」

ヒューバードさんの腕の中から飛び降りで軽やかにクレイさんに駆け寄るマナを目で追いながら、他の人たちに視線を向ける・・・目は合わせないようにして。
誰もが、同じような感情が読み取れる顔をしていた。
年齢問わずに皆さん綺麗なお顔をしていいらっしゃいます。
綺麗なお召し物をきていらっしゃいます・・・

そして

同じように

戸惑いと驚愕と、そして・・・

「なぜ、貴女がその名を呼べる?」

誰かが呟いた言葉。
その意味はわからないけど、誰もがそれに同意するように私を珍妙な目で見ていた。


同じように

戸惑いと驚愕。



やっちまったなぁ・・・

誰が?
私が、やっちまったさ。

ああ、世間でいう『穴があったら入りたい』ってこういう時を言うんだなぁ。
思わず隣を見るが、私を心配していたはずのジェフさんは目をそらし、アシュトンさんは苦笑い、フィオナさんは呆れ顔といったところだろうか?
因みにヒューバードさんは、マナが無理矢理に降りただろうその時に顔を思いっきり打たれたらしく、顔が赤くなって手で擦っている。

うん、ここに穴はない。

ならば、ヨシ!







「初めまして、越智愛李と申します。
3年と半年前にクレイさんに助けていただきながら、今までご挨拶もできずに申し訳ございません。」





何事もなかったかのように、挨拶から始めよう。
人とのコミュニケーションは、挨拶から。これ、基本だよね。
うん、何もなかった、そういうスタンスで行こう。
にこっり笑顔で下げた頭を持ち上げれば、益々微妙な顔をした人たちが目に飛び込んでくる。

まっ、負けないぞ・・・

思わず怯むけど、お腹に力を入れて耐える。
笑顔も引き連れそうだけど、自然に見えるようにキープ。

「・・・いや、無理だと思うよ。アイリ」

だが、私の努力を挫くのは、同じパーティーで助け合っていたはずの仲間だった。
しかも、普段は優しいフォローをしてくれているはずのアシュトンさん。

ということは、やっぱり・・・

自分で穴を掘って入ろうかしら?

そんな、考えが浮かんだとき室内の空気が変わる声が静かに響いた。





「アイリさん、とやらですね・・・」

壁一面の肖像画を背に座っている女性。
その人から声がかかる。

「貴方は、何故・・・」

春風を思わせるような柔らかな声。でも、柔らかさとは対象的な硬質的にも聞こえる声は、緊張と警戒の現れ。

「この国の聖女の名を・・・」

聞いたことのある、懐かしい女性らしい声。
私の記憶の中では、もっと甘えた声をしていたけど覚えている。
声に揺さぶられる記憶。
その人は、豊かな黒髪と円らな焦げ茶の瞳で、記憶よりも大人びているけどよく似ていた。

「・・・日奈子?」

絵を背にして座る女性は、記憶の親友が大人に成長すればそうなっていたと思われるようなきれいな女性だった。そして、声もよく似ていて・・・




「お母様の名を知っている?」




どういう時間軸なのか、親友の子供との対面だった。













この世界は昔、悪い魔女の手によって突然瘴気が湧き出し世界中に魔物が溢れかえった。
魔物が蹂躙していった地域には、魔物に侵された人ならざる、元は人だったものたちが増えていた。

その侵略は、リド国にも伸びた。

魔法国家のリド国は、魔術師が総力を挙げて張った結界によって侵攻を防いでいたがそれが破られるのも時間の問題。
実際にリド国の端の、結界が弱った場所の要塞を拠点に魔物が巣くいだし、またそこから世界中に魔物があふれていった。
結界にだけに頼らず魔術師や剣士によって、魔物の侵攻を食い止めようとしていたが、悪い魔女によって生み出された魔王と呼ばれる黒竜は強大な力を持っていて、とても敵わず被害は大きくなる一方だった。
人類は、滅亡の危機にあった。

そんな中、神に救いを求めて祈りを上げていた神殿に宣託が下った。

“聖女召喚の儀によって、救世主を遣わす”

魔王を倒すべく、それから神殿に保管されていた僅かな資料を元に聖女召喚の儀が執り行われた。
国中から聖魔法を使える神官が集まり、儀式は執り行われた。
複雑に描かれた魔法陣に、古代語での詠唱。
詠唱に合わせて、下は13歳の見習いから上は腰の曲がった70過ぎの老神官まで聖魔法を注いだ。

そして、魔法陣が一際強く光輝いて眩しさに誰もが目を開けていられなくなるほどの強い閃光の後、魔法陣には一人の少女が立っていたのだ。

肩よりは長い黒髪で、大きな焦げ茶色の瞳。その顔立ちは、幼子のように愛らしく誰もが庇護欲をそそられた。見たことのない服を着ており、手には一冊の本と何かの道具を持っていた。
目を瞬き驚きの表情も、かわいらしい。美醜で言えば、美の種類に属する少女が一人現れたのだ。
その姿は、どう見ても異質であり、神から遣わされた救世主、聖女だと誰もが確信した瞬間だった。

「よくぞ我らの召喚に答えてくださいました。救いの聖」

「うわ~~~~~!!!!!え~~~~~、これってマジ?!
聖女召喚!ってやつ?
なになに?この世界、何?
マジもんの異世界転生?小説の世界?
それとも、乙女ゲーム?
まさか、私にRPG的な世界じゃないよね?RPGなんて『キミセカ2』しか、できないよ。あっ、でも今なら攻略本あるしぃ。
って、ここリド国とか言わないよね?」

一番位の高い、大神官長の言葉を遮るように、興奮した声を上げたのはこの世界の人々が後に預言書と言われる攻略本を持った、日奈子だった。





「やったー!私、ヒロイン?」

そう、日奈子は50年前にこの世界に召喚された聖女だったのだ。



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