誰かこの子のお父さんをしりませんかぁ?

かみい

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32◇起こす前にすることがありますかぁ?◇

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32◇起こす前にすることがありますかぁ?◇


※病気に関して出てきますが、作者は医療関係者でないので詳しくありません。全て、ファンタージーな世界観でお読みください。

~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~




「お祖母様の、病気は・・・・・・
『ガン』だと仰っていた。
目覚めれば──────

余命は、たぶん3日もないらしい。」

ウィルフレッド王子の緩衝材のない直球な話は、あまりなものだった。

いや、今時、病気宣告する病院の先生だってもっと言葉選ぶよ?
優しさが一ミリも見えない。
淡々と真実を述べたにしても、もうちょっと言いようがない?

って、何?この世界にはガンはないの?

「だけど、このことを知っているのは僕ら家族と討伐のメンバーだけなんだ。だから、アシュトン達は知らないよ。
詳しい説明は避けて、何れ来る魔王が復活した時の為に聖女は眠りについた。彼らはそのように聞いているはずだ。もっとも、世間には、聖女は療養中としか知らされていない。魔王が何れ復活するかもなんて知られたら、また世界は混沌とする。まだ魔王によって付けられた傷を、覚えている人が多いからね。」

ウィルフレッド王子の言うことも分かる。
私も聖女様が日奈子だと知らなかったとき聞いていた聖女様は、民たちの心の拠り所と感じるくらい、尊敬した声を多く聞いた。
それと同時にお年寄りは、魔王が世界を蹂躙していく様を身をもって体験しているのでその時の恐怖は未だに薄れていないようで聖女と勇者、英雄たちへの感謝は一入だった。
だから、それには同意するが・・・

「クレイの治療でも、お祖母様自身の聖女の癒しの力をもってしても病は治らなかった。日に日に病状が進んでいって、眠りにつく前は起き上がることも困難なほどだったんだ。」

精度のすごいクレイさんの治療魔法でも、欠損部分を直してしまう奇跡の術、聖女の癒しの力でも無理だったって・・・、日奈子のかかったのは本当に私の知るガンだった、と?

「あの・・・、異世界の『ガン』って、私の知っている『ガン』のことですか?」

半信半疑で聞き返せば、日奈子から聞いたというガンの特性は、私が知っているガンの特性と一致していた。
でも私の知る今ガンは、今や不治の病じゃない。
抗がん剤や放射線治療、腫瘍部分を取り除く切除手術など、医療に詳しくない私でもいくつかの治療方法を知っている。
日奈子だって知らないはずは無いと、思うけど。

「えっと、・・・かけたのは『ヒール』ですか?」

「ああ、そうだよ。お祖母様はそれ以外も使えるけど、目一杯の力を注げるヒールが一番力を発揮できると言っていたからそれを使ったらしい。」

そうか・・・『ヒール』で治すことが出来なかった。

・・・・・・ん?治す?

ヒールは基本自然治癒力に魔力を注いでその人が持つ治癒力をパワーアップする魔法、ってクレイさんに習ったような?
聖女の場合は、それがとんでもなくすごい力になるらしいけど?
癌は、自分の細胞が悪性に変異したもの。
それを治するという表現は、確立するのかな?
もしかして、根本が違うのかも・・・

なら・・・・・・、もしかして?


ガタっ!

そのことに思い当たると、無意識にベンチから立ち上がっていた。

再会してすぐにさよならなんて、そんなことは嫌だ。私が日奈子がいなくなってどれほど悲しんだか。
親友と思える人がいなくなって、寂しくて辛くて・・・何度、日奈子とこの喜びや悲しみを分かち合いたいと思ったか・・・

まさか聖女召喚で異世界転移なんてしていると思わなかったけど、無事でいて、たくさんのいい人に囲まれていてよかったとは思うよ。
でも、会ってすぐに『さよなら』はひどい。
聞いてもらいたい話がそんなちょっとの時間で足りるなんて、思わないでほしい。

私にできることをしてみよう!!!

そう思うと同時に体は、動き出していた。
懐かしい香りに包まれた和風の庵を出て、まっすぐ向かうのは、あの聖堂。

「あっ!アイリ嬢!!!」

突然駆け出した私に手を上して止めようとするが、一拍遅く私のは届かない。

「えっ?アイリ!」

「ちょっと、どこ行くの?」

さらには近くで見守っていたアシュトンさんが気が付いて声をかけてくるけど、私の足は止まることはない。
一度歩いた道。聖堂までの道は綺麗に舗装されて迷いようもない。
それを、無我夢中で走った。

ガラスの聖堂、真っ白な扉が見えた。
扉の前には、柔らかい顔のコリーさんが手持ち無沙汰に柱に縋っていた。
おそらく、私が『新たな聖女』で日奈子を目覚めさせた時、何かの為に待機していたのだろう。

「えっえっえっ?君、どうして???」

たぶん、私の形相は相当のものなんだろう。
私に気が付いてこっちを見た、コリーさんの顔が驚愕に目を見開いた。
確かコリーさんはもう一人のショタ枠で、優しい甘えん坊弟系、すこし気弱なところがある・・・だったかな?
結構、覚えているものだわ。
って、それだけ日奈子が様々なショタについて布教されたせいなんだろうな。



そんな、コリーさんも、無視して勢いで扉を開け放つ。




バッターンッッ!!!!!




けたたましい音と共に拓く扉。
四方をガラスの壁に囲まれた明るい中には、花の中ガラスの棺の傍で座り込む、オーフェン様と女王様が居た。
2人は、驚きで声も出ないようで都合がよかった。私はその隙にさらに足に力を入れて駆け寄る。

「アイリッ!」

すぐ後をアシュトンさんとウィルフレッド王子が声を上げてついてくる。

「っ!!!日奈子ぉぉぉぉぉ!!!!!」

「なにやってんのっ、アイリ!!!」

「「「やめろ!!!」」」

「・・・はっ、何をするんだ!!!っ!」


ここで止められてなるものかと、渾身の力を込めて残りの距離を縮め棺の蓋に手をかける。我に返ったオーフェン様と追いついたフィオナさんたちの声にも止まることなく、ちゃぶ台をひっくり返すような勢いで力を込めた。
棺と同じくガラスでできている蓋は、重いと思ってかなりの力を出して持ち上げた。だがそれは、肩透かしに合いまるでからの段ボールのような、軽く持ち上がった。
なので、思いのほか蓋が大きく乱暴に持ち上がり、それによって開いた中の日奈子の顔に掛かっていたベールがふわりと浮きその下の顔がはっきりと見れた。

確かに年は重ねているようだ。
でもその面影は、ふっくらと丸みを帯びた柔らかそうな頬やピンクのかわいらしい小さな唇、目を閉じて縁取る黒々とした睫毛。なによりも、彫の深い西洋顔の中、明らかにわかる小さくて低い鼻。それが、幼げに見えているのかもしれないが、私の見知った日奈子によく似ていた。

「日奈子・・・」

胸が締め付けられて泣きそうに零れ落ちた声。
やっと会えた喜びも、蘇る懐かしい記憶も、そして、これから残された時間との戦いも───これで再開、一目会って終わりだなんて、そんなことはしたくないと改めて強く思った。

できるできないじゃない・・・・・・こんな時こそ、しなくちゃいけない時なんだ。

沢山の不安が胸に去来する。
でも、今だけはそれから目をそらしてとにかく前を見て、やれることをしよう。

でも、もしも・・・・・・失敗してし─────

「日奈子を死なせません。私が・・・・・・治します。」

悩み躊躇いは一瞬。
そんなことを考える時間は、無駄だ。
私を止める手を出す、オーフェン様に気が付くと言葉を出していた。

私が『新しい聖女』かどうかなんて、どうでもいいけど、聖女なら、きっと・・・





できるはず・・・・・・


私が、ここにいる理由を作るため、私はみんなが見守る中、胸で組まれておかれていた日奈子の両手を取った。













私の手と変わらない大きさの掌。

そこから伝わる体温は、少し低く感じる。
眠っているあいだは、体温がギリギリまで下がるのかな?
病気の進行を止めるため?
FSの世界にみる、冷凍睡眠コールドスリープをすることで、生命活動をぎりぎりまで下げて長い年月を行き抜くというの物語を読んだことをある。
これは、それができるそうちだったってことかな?
だとしたら、この棺はすごい装置だなぁと思う。
勢いついて乱暴に扱ってしまったけど、壊さなくてよかった。
もし、壊して弁償とかなったら大変なことになっていた。



「アイリ?」

日奈子の手を握ったまま動かない私に、アシュトンさんが声をかける。
チラッと顔を見ると、アシュトンさんを先頭に不安げなみんなの視線とあわさる。
口の端をもちあげて、笑顔の表情をつくる。
不安はあるけど、このままだと目が覚めた日奈子とは短い時間しか一緒にいられない。

あの徹夜明けの朝、別れた時からずっと会いたかった親友。

日奈子がいなくなったと聞いてから、私があの時もっと一緒にいたなら・・・、そう何度も後悔して長年過ごしていた。
気が付いたらこの世界で目覚めて、どうしてこの世界に来たのかは分からないけど同じ世界に日奈子がいた。

話したいことは沢山ある。

そのためには、日奈子の病気をどうにかしないと。




『がん』ということは、悪性腫瘍のことだとおもう。
昔は、不治の病と言われていたらしいけど、今は必ずしもそうではないと聞いている。
お向かいのおばちゃんは、胸のガンを早期発見して適切な治療と経過観察で私の記憶のあるうちはとても元気だった。
お母さんとは、玄関先で1時間以上立ち話をする仲で、治療のことも聞いた。

確か、腫瘍がある部分を手術で切除したと記憶している。
他にも、抗がん剤と放射能治療もしたと言ってたかな?

とにかく、私が今からしようとしているのは、その腫瘍を取り除くと言うもの。
どうやって?と、いう不安はあるけどまずは診て見ないことにはどうしようもない。


アシュトンさんたちから、視線を日奈子に戻して手を握り直す。

魔力を相手に静かに流すことで、健康チェックができると言うのは私が怪我していた時や勝手に魔法を使った時などにクレイさんに怒られながらされたので知っている。
私も健康チェックで自分に行っているから、お手の物。

じわじわと流す私の魔力。
日奈子は、コールドスリープ状態だからか魔力の動きがゆっくりだ。
いうなれば、駅の地下道を大勢の人がゆっくり歩く中、間を押し戻されながら無理やり取り抜けようとするようなもの。
いつも自分がする時間よりも、かなりかかる。
しかも、ところどころ引っ掛かりがある。
恐らくそこが、不調のところなんだろう。
大小いくつか見受けられる、その不調。
多分、日奈子のガンは全身に転移している。
大元を絶たないといけないが、まずは見つけた不調はマークする。
マークは、スプレーを吹きかけるようなイメージでシュッとして先に進む。
しかし、これが意外と大変だった。
転移とみられる不調は、数が多い。
時々大きめなのもあるけど、大元ではない。小さなものばかりでマークしていくのも、いちいち手間だ。だけど、その手間を省いては、病気の根治はできない。
時間をかけて、ゆっくりと進めていく。
日奈子の体の各所にみられるガンの転移は、多すぎて途中から数を数えるのやめてしまう程だった。

ゴクリッ

どれくらいの時間が流れているのか。
誰も何も言わなくなった静寂の中、誰かが喉を鳴らす音さえも大きく響く。
その間、物言わぬ声の代わりに視線は五月蠅い位に、こちらに集まっているのがヒシヒシと感じる。

「?!」

そうして静寂の中、集中して日奈子の体を隈なく流している魔力がある一点で全く動かなくなった。
それはとても大きな反発で、跳ね返った魔力が自分の掌に戻ってくるほどで少しビリッとしたしびれを感じた。

痺れを我慢して、今度はもっと慎重にゆっくりと魔力を流す。細い、糸のように細くしてじわじわと流すイメージで・・

そして、やはり同じところで非ひっかかりというか反発を受ける。
ゴムボールのような感触。
恐らくそれが病巣だと思った。

まずは、この大本をやっつけないと!!!










さて、どうやって切除するかな?





勢いに任せてここまでやったはいいが、切除法は何も考えていなかった。




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