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37◇お姫様のお目覚めですかぁ?◇
しおりを挟む愛李と日奈子の感動の再会・・・に、なりますように・・・
~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~
ガラスの棺で眠る日奈子の表情は、変わることなく健やかにいる。寝息は、口元に耳を持って行かないと聞こえないくらい微かなものだが穏やかだ。
日奈子が癌に侵されていると聞いたときは、息が止まりそうくらい驚いた。そしてその病気がこの世界にはなく、だから勿論治療法もない。日奈子に残された時間は、僅かだと聞かされ色々フリーズした。
それを頭が理解した瞬間、私は感情の衝動のまま動いていた。
同じ世界で病気を知る自分ならと思って、治療できる術など手に持っていないくせに・・・
持っていないけど、何故だかできる気がしたのよね。
医者でもなく医療関係者でもない私が・・・
でもできないと思えば、そこで終わり。私には、この世界とは違う知識がある。それを口に出したとき、ヒューバートさんの口から光明が一筋見えた。
魔法ありきのこの世界での治療は、ヒールが主だ。
ヒールは使い手の魔力によって無限の力を発揮するが、その力も異世界の未知の病には効かなかったと言うこと。
だがヒューバートさんのいう、「転移した病は転移魔法で排出して仕舞えばいい!」というのに、私の規格外の魔法が有効だった。
私の前世で読んだ書物やゲームの知識で、作り出した魔法の手。正しく“魔法の手”を作り出して、日奈子の体内から病巣を取り除く。もしも、前世の世界でそんなことが出来る人がいたら“魔法の手”どころか“神の手”と呼ばれていただろう。
そして今、日奈子の体から病気を排除して、やっと目覚めさせることが出来る。
年月も、世界も離れた親友との対面。
短い時間でなく、これからも一緒にいられるように頑張った。
第一声は、何を言おうか・・・
◇
オーフェン様の手でガラス製の蓋を、魔法陣が日奈子の中心あたりに来るように少し開いて置き直した。
「この魔法陣に、アイリさんの魔力を流してください。お母様は、流せば目覚めると言っていましたので・・・」
そう言われて一歩下がった女王様。その顔は期待と不安が綯交ぜになった、複雑な顔。
この魔法陣は、日奈子に言われてコリーさんとマーリンさんが作ったというが誰も試していないので不安があるらしい。
一歩下がった女王様に対して、何故かズイッと日奈子に寄るオーフェン様。
「・・・・・・」
女王様が何か言いたげな顔をしてみるが、オーフェン様は素知らぬ顔で日奈子の頬に手を当てている。
まぁ、オーフェン様は日奈子の旦那様だし心配なんだろうけど、その位置にいたらちょっと邪魔なんだけどなぁ・・・
私や女王様だけじゃない、聖堂の中のほとんどの視線が集まる中、オーフェン様に動く気配はない。
「・・・はぁ、アイリさん、魔力を流してください。」
微妙な空気にも動じることがないオーフェン様に、わざとらしい溜息を利かせるように大きく吐きだし促された。
それでも一向に顔を上げることもせずに、一途に日奈子を愛おしそうに見つめるオーフェン様は、確か王道溺愛系王子様だったはず。
もうすぐだ・・・
この魔法陣に私の魔力を流せば、日奈子と会える。
その時の私の頭の中には“新たな聖女”というものは、どこかに忘れてしまっていた。
そして、もっと重要なことも。
私との再会を、日奈子は喜んでくれるよね・・・
ガラスに彫られた魔法陣に手のひらを乗せ、硬質で冷たいガラスの感触が伝わる。
すぅ・・・
息を吸って吐くときに手のひらから、魔力を魔法陣に注ぐ。
手のひらに感じていた、冷たいガラスは魔力を流すとホワンと熱を帯びた。
感じたのは、それだけ。
特別に何かが光るでもなく、変化は見られないかった。
が、棺に眠る日奈子の顔を見つめる中、ピクリと黒々とした睫毛が一度、動いた・・・
そう、私も女王様も認めた刹那、日奈子を覆い隠すように視界に移り込む大きな人影があった。
「っ!!!!!」
それに誰もが驚き、声さえ上げられない中でついに日奈子が目を、開けた・・・?
フルリと揺れた睫毛、ゆっくりと持ち上がる瞼。しかし、ゆっくり瞳を開けきることはできなかった。
闖入してきた黒い影によって、瞳は一気に大きく見開いた
「・・・っ、んっ・・・ぅっ」
くぐもった声がもれ、言いたい言葉も出せず、これまたおい被さる黒い影によって動くこともできずに僅かに藻掻くだけとなっていた。
「・・・・・・はっ!ちょっとお父様、何やってるのですか!」
藻掻き苦しむ日奈子の声に、この中で唯一おい被さった黒い影に声を上げることが出来る女王様が引き離そうとその人の腕を引っ張るがびくともしない。
「アイリさん」
女王様からの声をうけて、私も加勢する。
「ちょっと、オーフェン!!!」
「いい加減にしなよ」
だが、小娘に過ぎない私の手がひとつ加わったくらいでは何の効果もない。
そこへマーリンさんもコリーさんも加わるが、そうなると益々日奈子をきつく腕に抱え込まれた。
「んん~~~~~っ!」
必至に藻掻く日奈子も声にならない抗議をあげて、どうにか動かした手でバシバシっその人の胸を叩く。
しかしそれに介することがない。心なしか、日奈子の声が小さくなっていく。
「・・んっ~~~っ」
「っふぅ・・・、おはよう、ヒナ」
くぐもった声が消えそうなとき、やっと離された。
原因のその人は、爽やかな微笑みを日奈子に向けるが、残念ながら本人は「おはよう」なんてのんびりとした挨拶どころではなかったようだ。
「はぁはぁはぁはぁはぁ・・・はぁ・・・っ!ちょっと!いきなり何なの、口を塞がれたら息ができないでしょ!三途の川の向こうでおばあちゃんを見たわよ!オーフェン!!!なにしてくれてんのよ!!!」
必至に空気を取り込むように、日奈子は大きな息を繰り返した。
元凶たる本人はどこ吹く風、満面の笑みを浮かべて日奈子を抱き上げて棺の中から出してしまった。
「ああ、元気なヒナだ。気分はどうだ?
だって、ヒナが言っていただろう?王子様の口づけでお姫様は目覚めるって・・・。
俺にとってのお姫様は、ヒナだから俺が起こすのが当たり前だろ?」
「なっ・・・」
祭壇の上で、背の高いオーフェン様に抱き上げられている日奈子は、みんなの視線を集める中。
再びオーフェン様に口を塞がれた。
再開初っ端、親友の濃厚なキスシーンを見せつけられる私は、どうすることが正解のなのか分からずにただただ、いちゃつく二人を眺めるだけだった。
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