元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

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青春

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 ……いやいや、たまたまだろ。

 もう少し身体を意識して、リラックスしてやろう。

「むぅ~!! もう一回!」

「ああ、いいぞ」

 再び、打球が来るので意識的に打ち返す!
 あれ? さっきより、早く打ち返しちゃったぞ?

「ラ、ライジングショット!?」

「あっ、そういうやつだっけ?」

 確か、相手の玉がこっちのコートに入った瞬間に返す技だったかな?
 よくテニスの王子○とかで見た気がする。
 まあ、俺はある意味で王子だから間違ってないねっ! ……別に関係ないか。

「ず、ずるいわよっ! 何処かでこっそり練習してたんでしょ!」

「いや、そんなことしないし。というか、そんな暇があったら寝てるし」

「ぐぬぬっ……私は何年も練習してたのに……うぅー」

 あっ、まずい。
 そういえば、セレナはめちゃくちゃ負けず嫌いだった。
 幼い頃、よく勝負を仕掛けられたっけ。
 ……そういや、俺と遊んでくれたのはセレナくらいだったな。
 まだカエラもいなくて、トールも知り合ってない頃だ。
 物心ついた時には婚約者になって、男も女もない頃はよく遊んでいた。
 妹も生まれたばかりで……今思うと、セレナがいたから寂しくなかったのかもしれない。

「ったく、相変わらず負けず嫌いだなぁ」

「う、うるさいわねっ!」

「ほら、続きをやろうぜ。セレナの気がすむまでやるから」

「……ほんとに?」

「ああ、

「……うんっ!」

 そう言うと、子供みたいに笑う。
 その姿は、普通の可愛い女の子だった。



 その後、加減をしつつラリーをするが……。
 俺に余裕が出来たことで、違う意味で余裕がなくなりそう。

「ふふっ、どうしたの? 段々と精彩がなくなってない?」

「い、いやぁ……」

「やっぱり、体力不足だったんじゃない? これからは、練習しないと」

「……ハハ」

 確かに体力は、ほとんど残ってない。
 ただ、それ以上に困ることがある……おっぱいである。
 なまじ打ち返すのに余裕があるので、相手をよく見ることに。
 セレナが左右に動き打ち返すたびに、おっぱいが揺れる揺れる。
 当然、健全な十六歳男子の俺は……前屈みにならざるを得ない。

「よし——そこっ!」

「うおっ!? ……俺の負けだな」

「やったぁ! ようやく勝てたっ!」

「粘り勝ちってやつだな」

「ふふ、でも手加減しなかった?」

「いいや、手加減はしてない。それだけは嘘じゃない」

 事実、俺は嘘を言っていない。
 ただちょっと、おっぱいのせいで集中できなかっただけである。
 ちなみにそれを察してか、女子達は男子達をコートの近くから追い出していた。
 つまり見ていたのは俺だけ……あざます!

「そう? なら良いけど……」

「それより、久々に遊んだな。昔は、こうやって遊んでいたなー」

「さっきのセリフ……覚えてたんだ?」

「そりゃ、あんだけ相手をしてたらな……」

「でも、いつからかしなくなったじゃない」

 結局、その後の俺がダラダラしてたからか関係は拗れたが……。
 よくよく考えたら、セレナには恩があるんだよな。
 ……仕方ない、今の俺が礼を返すべきか。

「んじゃ、これからはたまに顔を出してみるかね。まあ、目の前にいる部長さんの許可があればだけど」

「そ、それって……?」

「あとは、メルル次第だけど。さて、俺は疲れたので休むわ」

「ちょっ!? ……もう」

 そんな言葉を背にして、メルルのもとに向かう。

「メルル、できそう?」

「はいっ! とっても楽しそうです!」

「それなら良かった。まあ、俺もたまにはやってみるから、良かったら部活に入るのも良いかもね」

「とりあえず、やってみますねっ」

 そう言い、ラケットを持って駆けていく。

「ご主人様、お疲れ様でした」

「ほんとだよ、こんなに動いたのはいつ以来だろ」

「ふふ、たまには良いんじゃないですか?」

「まあ……ね」

 俺は汚れるのも構わず、草むらの寝転ぶ。

 見上げる空は晴れ渡り、心地良い風が吹いている。

 うん、青春っぽい……こういうのも、たまには悪くないかもね。
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