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校外学習その四
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……さて、どうしたもんか。
自慢じゃないが、泣いてる女の子を慰めるような度量はない。
まあ……できることをやるしかないか。
「メルル、テントに行こう」
「ふぇ? あ、あの……僕達も仕事しないと」
「いいから。とりあえず、まずは話をしよう」
メルルの手を取り、俺は自分達のテントに入る。
そして椅子に座らせ、お茶を用意する。
「ほら、まずは飲んで。俺も飲もうっと」
「あ、ありがとうございます……コクコク……ぷぁ、美味しいです」
「ああ、動いた後に飲むのは美味いな」
「「…………」」
外が騒がしい中、テント内は静まる。
こういうのは問い詰めても良くないので、じっと待つことにする。
すると……メルルが顔を上げた。
「……僕、国では臆病者とか役立たずって言われてたんです。いつもビクビクしてるし、勇敢な戦い方ができないから」
「……そっか」
「獣人族は、男女問わずに強くて勇敢な人が誉れ高いんです。もちろん、適性があるので全ての獣人がそういうわけじゃないんですけど……ただ、王族はその傾向が強いんです。そんな中、僕は王族失格って言われてきました」
「それはしんどいなぁ」
そして、その気持ちは俺にはわかる。
俺も威張らないし王族らしくないとか、黒髪に生まれたからにはそれらしくしろと言われてきた。
だが、そんなことは知ったこっちゃないと思っていた。
別に王族や黒髪に生まれたからといって、それが偉そうにして良い理由にはならない。
「はぃ……でも、そんな中……お姉ちゃんだけが僕のことを褒めてくれたんです。うちの家ではそうかもしれないけど、それは悪いことじゃないって」
「良いお姉さんだね」
「そうなんです。だから、お姉ちゃんが具合が悪くなった時、勇気を出して留学生に立候補したんです。皆が反対する中、お姉ちゃんは人族と交流をしないといけないって言ってたから。あの家にいても居場所がないっていうのもありますけど、僕でも何かできることがあるかなって」
「それなら、きちんとできてるよ。メルルは優しいし、獣人族は野蛮だっていう印象を変えたんだから。少なくとも、そういう人達もいるってことをね」
まだ色々とうるさいこという人もいるけど、そうじゃない人も増えてきた。
きっとそれは、メルルが優しい子だったからだ。
他の獣人族じゃ、もしかしたら上手くいってないかもしれない。
「……だったら嬉しいです。あと、臆病なことが皆さんの役に立てて良かった」
「いやいや、随分と助かってるよ。ほら、俺たちっていけいけどんどんタイプが多いじゃん? うちの妹のこともそうだし、セレナや俺にトールもね」
「ふふ、確かに皆さん賑やかですもんね。ただ、本当に優しいのはアレク君ですよ」
「 別に普通だよ。俺は思ったことしか言わないし、相手によっては変わるし。メルルが良い子だから、俺は優しくしたいと思ってるだけだし」
「……あ、ありがとうございます……えへへ」
そう言い、ようやく笑ってくれた。
やっぱり、暗い顔よりは笑った顔の方が良いよね。
◇
その後、テントから出ると、他の生徒たちが戻って来ていた。
何も持っていない者、生き物を担いでいる者……その表情は明らかに違う。
「あ、あの、何も持っていない方々はご飯抜きなんでしょうか?」
「まあ、そうなるね。それも含めての訓練ではあるし」
「か、可哀想ですね」
「大丈夫だよ、最低限の支給はされるから。まだ生徒だから、そこら辺は配慮してるみたいだ」
「あっ、そうなんですね。でも、せっかくの校外学習なのに可哀想です」
「まあ……とりあえず、二人のところに行こっか」
メルルを連れて、調理場スペースで作業をしている二人と合流する。
そこにはクレイジーボアの前で血まみれになったセレナと、横であたふたしているトールがいた。
「こわっ!? 血まみれじゃねえか! 死体現場かっ!」
「し、仕方ないじゃない! 捌き方なんてわからないわよっ!」
「すまんアレク! 任せた俺がアホだった! そういえば、叔母上も壊滅的だった!」
「うぅー……料理なんてしたことないもん」
「いや、料理とかいう話の前だが?」
というか、全身血まみれで包丁を持ってると怖いんですけど?
他の生徒達も、遠巻きで見てるし。
すると、メルルがセレナの前に立つ。
「え、えっと、僕がやっても良いですか?」
「えっ? い、良いわよ」
「それじゃあ、失礼して……」
メルルが包丁を受け取って、するするとボアを解体していく。
その手際は見事で、見ていて飽きないくらいだ。
「おおっ、凄いな」
「メルルちゃん、やるねぇ~」
「く、悔しいけど上手ね」
「えへへ、ありがとうございます。それじゃあ、僕が解体するので料理をお願いできますか?」
すると、セレナとトールが目をそらす。
「わ、私は、その……」
「いやぁー、俺も料理はなぁ」
かたや王女様、かたや侯爵子息、当然自分で作った経験などはない。
そういう俺も作ったことはないが……前世の俺は作っていた。
「仕方ない、俺がやるよ。二人は手伝ってくれ」
「えっ? アレクできるの?」
「まあな……多分だけど。というか、お前はとりあえず着替えてこい」
「わ、わかってるわよっ!」
セレナがテントに向かっていくのを尻目に、俺は腕まくりをする。
そして、さっさと料理を開始するのだった。
自慢じゃないが、泣いてる女の子を慰めるような度量はない。
まあ……できることをやるしかないか。
「メルル、テントに行こう」
「ふぇ? あ、あの……僕達も仕事しないと」
「いいから。とりあえず、まずは話をしよう」
メルルの手を取り、俺は自分達のテントに入る。
そして椅子に座らせ、お茶を用意する。
「ほら、まずは飲んで。俺も飲もうっと」
「あ、ありがとうございます……コクコク……ぷぁ、美味しいです」
「ああ、動いた後に飲むのは美味いな」
「「…………」」
外が騒がしい中、テント内は静まる。
こういうのは問い詰めても良くないので、じっと待つことにする。
すると……メルルが顔を上げた。
「……僕、国では臆病者とか役立たずって言われてたんです。いつもビクビクしてるし、勇敢な戦い方ができないから」
「……そっか」
「獣人族は、男女問わずに強くて勇敢な人が誉れ高いんです。もちろん、適性があるので全ての獣人がそういうわけじゃないんですけど……ただ、王族はその傾向が強いんです。そんな中、僕は王族失格って言われてきました」
「それはしんどいなぁ」
そして、その気持ちは俺にはわかる。
俺も威張らないし王族らしくないとか、黒髪に生まれたからにはそれらしくしろと言われてきた。
だが、そんなことは知ったこっちゃないと思っていた。
別に王族や黒髪に生まれたからといって、それが偉そうにして良い理由にはならない。
「はぃ……でも、そんな中……お姉ちゃんだけが僕のことを褒めてくれたんです。うちの家ではそうかもしれないけど、それは悪いことじゃないって」
「良いお姉さんだね」
「そうなんです。だから、お姉ちゃんが具合が悪くなった時、勇気を出して留学生に立候補したんです。皆が反対する中、お姉ちゃんは人族と交流をしないといけないって言ってたから。あの家にいても居場所がないっていうのもありますけど、僕でも何かできることがあるかなって」
「それなら、きちんとできてるよ。メルルは優しいし、獣人族は野蛮だっていう印象を変えたんだから。少なくとも、そういう人達もいるってことをね」
まだ色々とうるさいこという人もいるけど、そうじゃない人も増えてきた。
きっとそれは、メルルが優しい子だったからだ。
他の獣人族じゃ、もしかしたら上手くいってないかもしれない。
「……だったら嬉しいです。あと、臆病なことが皆さんの役に立てて良かった」
「いやいや、随分と助かってるよ。ほら、俺たちっていけいけどんどんタイプが多いじゃん? うちの妹のこともそうだし、セレナや俺にトールもね」
「ふふ、確かに皆さん賑やかですもんね。ただ、本当に優しいのはアレク君ですよ」
「 別に普通だよ。俺は思ったことしか言わないし、相手によっては変わるし。メルルが良い子だから、俺は優しくしたいと思ってるだけだし」
「……あ、ありがとうございます……えへへ」
そう言い、ようやく笑ってくれた。
やっぱり、暗い顔よりは笑った顔の方が良いよね。
◇
その後、テントから出ると、他の生徒たちが戻って来ていた。
何も持っていない者、生き物を担いでいる者……その表情は明らかに違う。
「あ、あの、何も持っていない方々はご飯抜きなんでしょうか?」
「まあ、そうなるね。それも含めての訓練ではあるし」
「か、可哀想ですね」
「大丈夫だよ、最低限の支給はされるから。まだ生徒だから、そこら辺は配慮してるみたいだ」
「あっ、そうなんですね。でも、せっかくの校外学習なのに可哀想です」
「まあ……とりあえず、二人のところに行こっか」
メルルを連れて、調理場スペースで作業をしている二人と合流する。
そこにはクレイジーボアの前で血まみれになったセレナと、横であたふたしているトールがいた。
「こわっ!? 血まみれじゃねえか! 死体現場かっ!」
「し、仕方ないじゃない! 捌き方なんてわからないわよっ!」
「すまんアレク! 任せた俺がアホだった! そういえば、叔母上も壊滅的だった!」
「うぅー……料理なんてしたことないもん」
「いや、料理とかいう話の前だが?」
というか、全身血まみれで包丁を持ってると怖いんですけど?
他の生徒達も、遠巻きで見てるし。
すると、メルルがセレナの前に立つ。
「え、えっと、僕がやっても良いですか?」
「えっ? い、良いわよ」
「それじゃあ、失礼して……」
メルルが包丁を受け取って、するするとボアを解体していく。
その手際は見事で、見ていて飽きないくらいだ。
「おおっ、凄いな」
「メルルちゃん、やるねぇ~」
「く、悔しいけど上手ね」
「えへへ、ありがとうございます。それじゃあ、僕が解体するので料理をお願いできますか?」
すると、セレナとトールが目をそらす。
「わ、私は、その……」
「いやぁー、俺も料理はなぁ」
かたや王女様、かたや侯爵子息、当然自分で作った経験などはない。
そういう俺も作ったことはないが……前世の俺は作っていた。
「仕方ない、俺がやるよ。二人は手伝ってくれ」
「えっ? アレクできるの?」
「まあな……多分だけど。というか、お前はとりあえず着替えてこい」
「わ、わかってるわよっ!」
セレナがテントに向かっていくのを尻目に、俺は腕まくりをする。
そして、さっさと料理を開始するのだった。
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