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校外学習その十
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馬鹿騒ぎを終えたら、俺達も守りに入るために砦に帰還する。
そこには既に、他の生徒の姿はない。
どうやら、予定通りにみんな先に行ったようだ。
「さて、皆さんには他のことをやってもらいましょう」
「ん? 森に狩りに行かないのですか?」
「森には行ってもらいますが、貴方達には全体の補助をして欲しいのです。昨日の様子を見る限り、貴方達は問題なさそうですし。特にメルルさん以外のお三方は、いずれ彼らを率いる者になるのですから」
「なるほど……って、気が早くないですか? というか、俺自身にはそんなつもりはないですし」
「ほほ、本人の意思だけでどうにかなる問題ではないのですよ。まあ、経験は早いに越したことはないので」
すると、トールが俺の肩に手を置く。
「まあまあ、良いじゃねえか。俺たちだって、冒険者になるなら必要だし」
「そりゃ、そうだけど……」
「ちょっと? 初耳なんだけど?」
「えっ!? 冒険者になるんですか!?」
「いや、それも良いかなって話を……まあ、いいか。とりあえず、引き受けます」
「了解です。それでは、我々と共に参りましょう」
その後、俺達は兵士達と一緒に森の中に入る。
そして、危機に陥る生徒達の手助けをしていく。
ちなみに当然の話だが、学年ごとに難易度が設定されているのでルートが違う。
しかし、そんな中でも疑問が出る。
「……三年生でも、意外と手こずるんですね」
「ほほ、それはそうですよ。貴方達の実力は桁が違いますから。何より、バランスがいい。冒険者になるかは別として、それは何処でも通ずることです」
「なるほど……肝に命じておきます」
そして日が暮れる前に、砦に帰還する。
あちこちには、地面に倒れ込んでいる生徒達の姿がある。
ただし、今回は獲物をとってこれたようだ。
「どうやら、飯にありつけない人達はいなそうだね」
「そうみたいだな」
「えへへ、良かったです」
「これで、私達も気兼ねなく食べられるわ」
「四人とも、ご苦労様でした。それでは、後は……むっ?」
その時、何やら辺りが騒がしくなる。
同時に、兵士の方がノイス先生の元に駆けてくる。
それは砦の部隊長と言っていたイアンさんだった。
「ノ、ノイス様!」
「何を慌てているのですか。そして、今の私はただの教員です。それで、何かありました? ただし、静かに冷静に伝えてください」
「し、しかし……」
「この方々なら平気です」
「よ……妖魔が攻めてきました」
その言葉に、俺達四人も驚きに固まる。
妖魔……それは人類の敵。
無差別に人類を殺したり餌とするだけでなく、その尊厳すら奪う存在。
特に、女性が捕まった場合は悲惨なことになる。
「なんですと? ……その辺りの調査は、騎士団にきちんとさせたはずですか? まだ、この時期は鳴りを潜めているはずですし」
「は、はい、そのはずだったのですが……」
「どうやら、騎士団連中の怠慢のようですね。やはり、シグルドの言う通り鈍っているようですね。ですが、それも我々の責任でもありますか」
……なるほど、校外学習をする場所を騎士団が調査するはずだったと。
しかし、それをサボっていたみたいだ。
だから、妖魔の巣があることに気づかなかった。
多分、あの森の中にいたのだろう。
「ど、どうしますか? 生徒達を逃して、我々で戦いますか?」
「いえ、今から避難していては間に合いません。何より、生徒達は今……ちょうど疲れ果てています。逃げきれずに捕まるのがオチですし、そちらを狙いに向かっていくでしょう」
「では、どうするのですか?」
「ここで迎え撃つしかありませんな。イアン、貴方には全体の指揮を頼みます。生徒の命を守るため、私は責任を持って前線に出ましょう。急いでください、時間はありません」
「は、はいっ! かしこまりました!」
そう言い、砦の方へ駆けていくのだった。
そこには既に、他の生徒の姿はない。
どうやら、予定通りにみんな先に行ったようだ。
「さて、皆さんには他のことをやってもらいましょう」
「ん? 森に狩りに行かないのですか?」
「森には行ってもらいますが、貴方達には全体の補助をして欲しいのです。昨日の様子を見る限り、貴方達は問題なさそうですし。特にメルルさん以外のお三方は、いずれ彼らを率いる者になるのですから」
「なるほど……って、気が早くないですか? というか、俺自身にはそんなつもりはないですし」
「ほほ、本人の意思だけでどうにかなる問題ではないのですよ。まあ、経験は早いに越したことはないので」
すると、トールが俺の肩に手を置く。
「まあまあ、良いじゃねえか。俺たちだって、冒険者になるなら必要だし」
「そりゃ、そうだけど……」
「ちょっと? 初耳なんだけど?」
「えっ!? 冒険者になるんですか!?」
「いや、それも良いかなって話を……まあ、いいか。とりあえず、引き受けます」
「了解です。それでは、我々と共に参りましょう」
その後、俺達は兵士達と一緒に森の中に入る。
そして、危機に陥る生徒達の手助けをしていく。
ちなみに当然の話だが、学年ごとに難易度が設定されているのでルートが違う。
しかし、そんな中でも疑問が出る。
「……三年生でも、意外と手こずるんですね」
「ほほ、それはそうですよ。貴方達の実力は桁が違いますから。何より、バランスがいい。冒険者になるかは別として、それは何処でも通ずることです」
「なるほど……肝に命じておきます」
そして日が暮れる前に、砦に帰還する。
あちこちには、地面に倒れ込んでいる生徒達の姿がある。
ただし、今回は獲物をとってこれたようだ。
「どうやら、飯にありつけない人達はいなそうだね」
「そうみたいだな」
「えへへ、良かったです」
「これで、私達も気兼ねなく食べられるわ」
「四人とも、ご苦労様でした。それでは、後は……むっ?」
その時、何やら辺りが騒がしくなる。
同時に、兵士の方がノイス先生の元に駆けてくる。
それは砦の部隊長と言っていたイアンさんだった。
「ノ、ノイス様!」
「何を慌てているのですか。そして、今の私はただの教員です。それで、何かありました? ただし、静かに冷静に伝えてください」
「し、しかし……」
「この方々なら平気です」
「よ……妖魔が攻めてきました」
その言葉に、俺達四人も驚きに固まる。
妖魔……それは人類の敵。
無差別に人類を殺したり餌とするだけでなく、その尊厳すら奪う存在。
特に、女性が捕まった場合は悲惨なことになる。
「なんですと? ……その辺りの調査は、騎士団にきちんとさせたはずですか? まだ、この時期は鳴りを潜めているはずですし」
「は、はい、そのはずだったのですが……」
「どうやら、騎士団連中の怠慢のようですね。やはり、シグルドの言う通り鈍っているようですね。ですが、それも我々の責任でもありますか」
……なるほど、校外学習をする場所を騎士団が調査するはずだったと。
しかし、それをサボっていたみたいだ。
だから、妖魔の巣があることに気づかなかった。
多分、あの森の中にいたのだろう。
「ど、どうしますか? 生徒達を逃して、我々で戦いますか?」
「いえ、今から避難していては間に合いません。何より、生徒達は今……ちょうど疲れ果てています。逃げきれずに捕まるのがオチですし、そちらを狙いに向かっていくでしょう」
「では、どうするのですか?」
「ここで迎え撃つしかありませんな。イアン、貴方には全体の指揮を頼みます。生徒の命を守るため、私は責任を持って前線に出ましょう。急いでください、時間はありません」
「は、はいっ! かしこまりました!」
そう言い、砦の方へ駆けていくのだった。
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