5 / 43
朝食
しおりを挟む
……寝たか。
焚き火を眺めながら、俺の膝を枕にしているアルルを優しく撫でる。
あの後場所を移動して、大きな木がある丘を発見した。
見晴らしもいいし木に寄りかかれるので、ここで夜を明かすことにした。
俺自身は寝ながらでも警戒できるし、気配察知が得意なサクヤもいるので、いざ襲われても問題ないだろう。
「さて、どうしたもんかね」
「グルルー?」
俺の側で伏せているサクヤが、『どうしたの?』と尻尾をペチペチとしてくる。
「いや、この子のことさ。秘境に送ることも考えたけど、もう一度戻るのは大変だしな。それに、何やら特殊な能力を持ってそうだ。お前の言葉を完全に理解していたんだな?」
「アォン」
サクヤがコクリと頷く。
俺が知らないだけかわからないが、そんな能力は聞いたことがない。
確か魔物を使役するテイマーという職業があったはず。
その方々に聞けば、何かわかるだろうか?
「うーん、わからん。まあ、俺が田舎者なだけかもしれないし」
「ハフッ……」
サクヤが人間臭く『はぁ……』みたいにため息をついた。
「今のは俺にもわかったぞ? 頼りにならない男って言ったな?」
「アォン?」
「このやろ~」
「ハフハフ……!」
空いてる方の手でとぼけるサクヤを弄り、静かな夜を過ごす。
「いいか? 俺が頼りにならないなら、お前がアルルを守ってやるんだぞ」
「グルル?」
「お前にできた、初めての妹だからな」
「……アォン!」
アルルを引き取ったのは純粋な善意でもあるが、理由はそれだけじゃない。
下の子がいることで、上の子は成長する。
アルルを守ることで、サクヤも成長すると思ってのことだ。
……もちろん、似た者同士で放って置けないのが一番だが。
親に捨てられた時と、仲間に追放された時に孤独を二度味わった。
その辛さは、誰よりも分かっているつもりだ。
◇
そして夜が明けて、朝日が昇ってくる。
幸い危険察知は発動しなかったし、サクヤも俺を起こさなかった。
おかげで、少しは眠ることができたようだ
「ん……あれ? ここは?」
「おはよう、アルル。サクヤも、見張りありがとな」
「グルルー」
俺の脇で座っていたサクヤが体を起こし、アルルの顔を舐める。
「わわっ!? あっ、わたし……お、おはようございます」
「ああ、おはよう」
「グルルー」
俺とサクヤは、まだ寝起きで混乱しているであろうアルルを待つ。
しばらくボッーとした後、アルルが起き上がる。
「そうだ、わたしはこの人に助けられて……ありがとうございました!」
「いや、成り行きみたいなものだから気にしないでいい。さて、とりあえず飯にするか。君は昨日すぐ寝てしまったし、俺達も夕飯は食べてないから腹減ったしな」
すると、アルルの目が輝き……キュルルーと可愛らしい音がなる。
「ご、ご飯……はぅぅ、ごめんなさい」
「ははっ、何も謝ることはない。腹が減るのは生きてる証拠さ。さあ、朝ごはんにしよう」
「アォン!」
そしてアルルをサクヤに任せ、ささっと朝食の準備をする。
鍋に鳥の出汁を入れ、そこに薫製肉と玉ねぎを加えて火にかける。
その間に昨日の残りである焼きニジイロマスを取り出し、丁寧に皮と骨を取っていく。
「身をほぐしたら、次はあれか」
器に塩胡椒、お酢と砂糖を入れる。
そこにオリーブ油を少しずつ入れて混ぜていく。
師匠はこれを乳化と言っていた。
「ほんと、色々なことを知ってる人だったよなぁ。いや、俺が田舎者ってこともあるんだけど」
何やら見たこと聞いたこともない調理法を知っている人だった。
まあ、世界中を旅してたみたいだしな。
マヨネーズやらこのソース……マリネなども師匠が教えてくれた調理法だ。
「さて、そこにほぐした魚と、切ったトマトや玉ねぎを加えて混ぜると……」
これを一口サイズに切ったパンに乗せれば完成だ。
その頃には、スープも温まっていた。
「ほら、二人とも、朝ごはんにするぞ」
「アォン!」
「はい!」
草原でじゃれていた二人が、丘の上に戻ってくる。
俺はスープを器によそい、それぞれの前に置く。
ちなみにサクヤにはパンをあげずに、マリネの具のみを与えた。
そしてサクヤが勢い良く食べ始める中、アルルはオロオロして手をつけない。
「さあ、まずはスープを飲みなさい」
「本当にいいのかな? あの……これって、わたしの分ですか?」
「ああ、もちろんさ。さあ、食べるといい」
「は、はい!」
アルルが嬉しそうにスープを飲み……その目から涙を流す。
「お、美味しいよぉ……!」
「そうか、そいつは良かった。さあ、次はパンを食べなさい。少し酸味があるから、気をつけるといい」
アルルは遠慮しがちに頷き、俺からマリネの乗ったパンを受け取り……パクッと口に入れた。
すると、目が見開き固まった。
「す、酸っぱい……!」
「ははっ、酸っぱいって言ったろ。口には合わないかな?」
「でも、美味しいです!」
「そうか、おかわりもあるから気にせずに食べるといい」
コクリと頷き、アルルが涙を流しながら笑う。
それを突っ込むような野暮な真似はすまい。
焚き火を眺めながら、俺の膝を枕にしているアルルを優しく撫でる。
あの後場所を移動して、大きな木がある丘を発見した。
見晴らしもいいし木に寄りかかれるので、ここで夜を明かすことにした。
俺自身は寝ながらでも警戒できるし、気配察知が得意なサクヤもいるので、いざ襲われても問題ないだろう。
「さて、どうしたもんかね」
「グルルー?」
俺の側で伏せているサクヤが、『どうしたの?』と尻尾をペチペチとしてくる。
「いや、この子のことさ。秘境に送ることも考えたけど、もう一度戻るのは大変だしな。それに、何やら特殊な能力を持ってそうだ。お前の言葉を完全に理解していたんだな?」
「アォン」
サクヤがコクリと頷く。
俺が知らないだけかわからないが、そんな能力は聞いたことがない。
確か魔物を使役するテイマーという職業があったはず。
その方々に聞けば、何かわかるだろうか?
「うーん、わからん。まあ、俺が田舎者なだけかもしれないし」
「ハフッ……」
サクヤが人間臭く『はぁ……』みたいにため息をついた。
「今のは俺にもわかったぞ? 頼りにならない男って言ったな?」
「アォン?」
「このやろ~」
「ハフハフ……!」
空いてる方の手でとぼけるサクヤを弄り、静かな夜を過ごす。
「いいか? 俺が頼りにならないなら、お前がアルルを守ってやるんだぞ」
「グルル?」
「お前にできた、初めての妹だからな」
「……アォン!」
アルルを引き取ったのは純粋な善意でもあるが、理由はそれだけじゃない。
下の子がいることで、上の子は成長する。
アルルを守ることで、サクヤも成長すると思ってのことだ。
……もちろん、似た者同士で放って置けないのが一番だが。
親に捨てられた時と、仲間に追放された時に孤独を二度味わった。
その辛さは、誰よりも分かっているつもりだ。
◇
そして夜が明けて、朝日が昇ってくる。
幸い危険察知は発動しなかったし、サクヤも俺を起こさなかった。
おかげで、少しは眠ることができたようだ
「ん……あれ? ここは?」
「おはよう、アルル。サクヤも、見張りありがとな」
「グルルー」
俺の脇で座っていたサクヤが体を起こし、アルルの顔を舐める。
「わわっ!? あっ、わたし……お、おはようございます」
「ああ、おはよう」
「グルルー」
俺とサクヤは、まだ寝起きで混乱しているであろうアルルを待つ。
しばらくボッーとした後、アルルが起き上がる。
「そうだ、わたしはこの人に助けられて……ありがとうございました!」
「いや、成り行きみたいなものだから気にしないでいい。さて、とりあえず飯にするか。君は昨日すぐ寝てしまったし、俺達も夕飯は食べてないから腹減ったしな」
すると、アルルの目が輝き……キュルルーと可愛らしい音がなる。
「ご、ご飯……はぅぅ、ごめんなさい」
「ははっ、何も謝ることはない。腹が減るのは生きてる証拠さ。さあ、朝ごはんにしよう」
「アォン!」
そしてアルルをサクヤに任せ、ささっと朝食の準備をする。
鍋に鳥の出汁を入れ、そこに薫製肉と玉ねぎを加えて火にかける。
その間に昨日の残りである焼きニジイロマスを取り出し、丁寧に皮と骨を取っていく。
「身をほぐしたら、次はあれか」
器に塩胡椒、お酢と砂糖を入れる。
そこにオリーブ油を少しずつ入れて混ぜていく。
師匠はこれを乳化と言っていた。
「ほんと、色々なことを知ってる人だったよなぁ。いや、俺が田舎者ってこともあるんだけど」
何やら見たこと聞いたこともない調理法を知っている人だった。
まあ、世界中を旅してたみたいだしな。
マヨネーズやらこのソース……マリネなども師匠が教えてくれた調理法だ。
「さて、そこにほぐした魚と、切ったトマトや玉ねぎを加えて混ぜると……」
これを一口サイズに切ったパンに乗せれば完成だ。
その頃には、スープも温まっていた。
「ほら、二人とも、朝ごはんにするぞ」
「アォン!」
「はい!」
草原でじゃれていた二人が、丘の上に戻ってくる。
俺はスープを器によそい、それぞれの前に置く。
ちなみにサクヤにはパンをあげずに、マリネの具のみを与えた。
そしてサクヤが勢い良く食べ始める中、アルルはオロオロして手をつけない。
「さあ、まずはスープを飲みなさい」
「本当にいいのかな? あの……これって、わたしの分ですか?」
「ああ、もちろんさ。さあ、食べるといい」
「は、はい!」
アルルが嬉しそうにスープを飲み……その目から涙を流す。
「お、美味しいよぉ……!」
「そうか、そいつは良かった。さあ、次はパンを食べなさい。少し酸味があるから、気をつけるといい」
アルルは遠慮しがちに頷き、俺からマリネの乗ったパンを受け取り……パクッと口に入れた。
すると、目が見開き固まった。
「す、酸っぱい……!」
「ははっ、酸っぱいって言ったろ。口には合わないかな?」
「でも、美味しいです!」
「そうか、おかわりもあるから気にせずに食べるといい」
コクリと頷き、アルルが涙を流しながら笑う。
それを突っ込むような野暮な真似はすまい。
224
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!
雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。
ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。
観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中…
ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。
それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。
帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく…
さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる