魔力なしと追放された冒険者、十五年の時を経て最強に~義娘と雪豹を連れて世界を旅する~

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朝食

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 ……寝たか。

 焚き火を眺めながら、俺の膝を枕にしているアルルを優しく撫でる。

 あの後場所を移動して、大きな木がある丘を発見した。

 見晴らしもいいし木に寄りかかれるので、ここで夜を明かすことにした。

 俺自身は寝ながらでも警戒できるし、気配察知が得意なサクヤもいるので、いざ襲われても問題ないだろう。

「さて、どうしたもんかね」

「グルルー?」

 俺の側で伏せているサクヤが、『どうしたの?』と尻尾をペチペチとしてくる。

「いや、この子のことさ。秘境に送ることも考えたけど、もう一度戻るのは大変だしな。それに、何やら特殊な能力を持ってそうだ。お前の言葉を完全に理解していたんだな?」

「アォン」

 サクヤがコクリと頷く。
 俺が知らないだけかわからないが、そんな能力は聞いたことがない。
 確か魔物を使役するテイマーという職業があったはず。
 その方々に聞けば、何かわかるだろうか?

「うーん、わからん。まあ、俺が田舎者なだけかもしれないし」

「ハフッ……」

 サクヤが人間臭く『はぁ……』みたいにため息をついた。

「今のは俺にもわかったぞ? 頼りにならない男って言ったな?」

「アォン?」

「このやろ~」

「ハフハフ……!」

 空いてる方の手でとぼけるサクヤを弄り、静かな夜を過ごす。

「いいか? 俺が頼りにならないなら、お前がアルルを守ってやるんだぞ」

「グルル?」

「お前にできた、初めての妹だからな」

「……アォン!」

 アルルを引き取ったのは純粋な善意でもあるが、理由はそれだけじゃない。

 下の子がいることで、上の子は成長する。

 アルルを守ることで、サクヤも成長すると思ってのことだ。

 ……もちろん、似た者同士で放って置けないのが一番だが。

親に捨てられた時と、仲間に追放された時に孤独を二度味わった。

その辛さは、誰よりも分かっているつもりだ。


 ◇


そして夜が明けて、朝日が昇ってくる。

幸い危険察知は発動しなかったし、サクヤも俺を起こさなかった。

おかげで、少しは眠ることができたようだ

「ん……あれ? ここは?」

「おはよう、アルル。サクヤも、見張りありがとな」

「グルルー」

俺の脇で座っていたサクヤが体を起こし、アルルの顔を舐める。

「わわっ!?  あっ、わたし……お、おはようございます」

「ああ、おはよう」

「グルルー」

俺とサクヤは、まだ寝起きで混乱しているであろうアルルを待つ。
しばらくボッーとした後、アルルが起き上がる。

「そうだ、わたしはこの人に助けられて……ありがとうございました!」

「いや、成り行きみたいなものだから気にしないでいい。さて、とりあえず飯にするか。君は昨日すぐ寝てしまったし、俺達も夕飯は食べてないから腹減ったしな」

すると、アルルの目が輝き……キュルルーと可愛らしい音がなる。

「ご、ご飯……はぅぅ、ごめんなさい」

「ははっ、何も謝ることはない。腹が減るのは生きてる証拠さ。さあ、朝ごはんにしよう」

「アォン!」

そしてアルルをサクヤに任せ、ささっと朝食の準備をする。
鍋に鳥の出汁を入れ、そこに薫製肉と玉ねぎを加えて火にかける。
その間に昨日の残りである焼きニジイロマスを取り出し、丁寧に皮と骨を取っていく。

「身をほぐしたら、次はあれか」

器に塩胡椒、お酢と砂糖を入れる。
そこにオリーブ油を少しずつ入れて混ぜていく。
師匠はこれを乳化と言っていた。

「ほんと、色々なことを知ってる人だったよなぁ。いや、俺が田舎者ってこともあるんだけど」

何やら見たこと聞いたこともない調理法を知っている人だった。
まあ、世界中を旅してたみたいだしな。
マヨネーズやらこのソース……マリネなども師匠が教えてくれた調理法だ。

「さて、そこにほぐした魚と、切ったトマトや玉ねぎを加えて混ぜると……」

これを一口サイズに切ったパンに乗せれば完成だ。
その頃には、スープも温まっていた。

「ほら、二人とも、朝ごはんにするぞ」

「アォン!」

「はい!」

草原でじゃれていた二人が、丘の上に戻ってくる。
俺はスープを器によそい、それぞれの前に置く。
ちなみにサクヤにはパンをあげずに、マリネの具のみを与えた。
そしてサクヤが勢い良く食べ始める中、アルルはオロオロして手をつけない。

「さあ、まずはスープを飲みなさい」

「本当にいいのかな? あの……これって、わたしの分ですか?」

「ああ、もちろんさ。さあ、食べるといい」

「は、はい!」

アルルが嬉しそうにスープを飲み……その目から涙を流す。

「お、美味しいよぉ……!」

「そうか、そいつは良かった。さあ、次はパンを食べなさい。少し酸味があるから、気をつけるといい」

アルルは遠慮しがちに頷き、俺からマリネの乗ったパンを受け取り……パクッと口に入れた。
すると、目が見開き固まった。

「す、酸っぱい……!」

「ははっ、酸っぱいって言ったろ。口には合わないかな?」

「でも、美味しいです!」

「そうか、おかわりもあるから気にせずに食べるといい」

コクリと頷き、アルルが涙を流しながら笑う。

それを突っ込むような野暮な真似はすまい。


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