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カレン
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本当に女の子って柔らかいんだなぁ……最近、こればっかり言ってるな。
いかんいかん、師匠達に怒られるわ。
そんな煩悩を振り払いつつ、屋根を飛び移っていく。
「わわっ? す、すごいです! 空を飛んでます!」
「はは、大袈裟だよ。これは飛び跳ねてるだけだし」
「そ、そんなことないです! だって空中で滞空時間が……」
「まあ、空気を踏んで飛んではいるかな」
「……空気を踏むですか?」
「あれ? わからない? ……まあ、風魔法の一種だと思ってくれれば良いさ」
魔法の師匠であるエリスが言っていた。
俺たちの周りには目には見えない空気というものが存在すると。
風魔法を駆使することによって空気を集めて、それを足場にして飛ぶことができる。
といっても、俺くらいだと飛び跳ねるくらいが清々だ。
エリスなら、文字通り空を飛んでいるし。
「は、はぁ……すごい方なんですね」
「いやいや、ただの田舎者ですよ。さて……あの辺りでいいか」
ひと気がなく、それでいて人通りの近い場所に降りる。
そして、ようやく女の子を解放する。
「ふぅ、ここまでくれば平気かな」
「は、はい! 今回は本当にありがとうございました! あの、わたしの名前はカレン-エルランと申します。よろしければ、お名前を教えてください」
「カレンさんね。申し遅れましたが、俺の名前はユウマ-バルムンクといいます」
「き、貴族の方でしたのですね! 失礼しました!」
すると、カレンさんが両手を使ってアワアワしている。
失礼かもれないけど、その姿はとっても可愛らしい。
容姿はそこまで子供っぽくないけど、守ってあげたくなる感じ。
「ん? 君も名字があるから貴族だよね?」
「わ、わたしは少し特殊でして……養子なのです。元々孤児院にいたところを、とある方に引き取ってもらって……」
「ああ、そういうことね」
おそらく、何かしらの才能があって引き取られたのだろう。
そういう話は聞いたことがある。
才能ある者を埋もれさせないために、子供のいない貴族が引き取るとか。
「……あの、それだけですか?」
「はい? なんの話?」
「い、いえ! ……その、養子だから貴族じゃないとか、孤児のくせにとか」
「何それ? 別に良いんじゃない? 何か才能があって引き取られたわけだし。それに個人的には貴族かどうかなんて関係ないかな。無論、それは否定しないけど……要は何をするかだと思うし」
「何をするか……」
「君はせっかく、その才能と機会を得たわけだし。だったら、遠慮せずに自分のしたいようにやったらいいと思う」
俺自身もそうだった。
早くに母を亡くし、父親はほとんど家にいない。
不貞腐れたり辛いこともあったけど、自分にはやれることがあった。
新しくできた弟や妹、自分の家族である領民達を守るという使命が。
だから父上に頼んで、師匠を用意してもらったし。
「わたしのしたいこと……小さい頃からの夢があって、わたしみたいな子供を減らしたいって。孤児院に行ったとしても、ちゃんと生活できるように。何からしたらいいのか、まだわからないですけど」
「一個ずつでいいんじゃないかな? 例えば寄付だったり、自分が有名になることで夢を与えたりさ」
「寄付はやろうと思っていましたけど……夢を与えるですか?」
「うん。何でもいいんだよ。良い成績をとったり、冒険者で一流になったり、商売で成り上がったり……自分でもやれるんだってところを見せれば、その子達の励みになるのかなって」
「あっ……確かに、そうですね」
「ごめんね、偉そうなこと言って」
「い、いえ! 物凄く参考になりました!ありがとうございます!」
「それなら良かったよ。おっと、日が暮れてきちゃった」
すると、向こうから声がしてくる。
どうやら、この子の名前を呼んでいるみたいだ。
「あっ、わたしの護衛の方々です」
「おっ、それなら安心だ。それじゃ、俺は行くね」
「えっ? あ、あの、お礼とかしたいのですが!」
「いやいや、そういうつもりで助けたわけじゃないし。では、またどこかであったらよろしくねー」
色々と聞かれると面倒なので、俺は急いでその場を離れる。
というか、早くいかないと泊まる場所がなくなっちゃうよぉ~!
◇
……行っちゃいました。
まだ、なんのお礼もできてないのに。
絵本のヒーローみたいに颯爽と現れて、見返り求めずに去っていく……そんな人が、実際にいるんだ。
……な、なんだろ? ドキドキしてきちゃった。
「これはアレでそれで、お姫様抱っこされたからで……あぅぅ……思い出しちゃった」
「カレン様! ご無事ですか!?」
「はい、平気です。心配をかけてごめんなさい」
「いえ、ご無事なら良いです。何やら、話しかけてる男がいましたが……」
「王都が初めてらしいので、場所を教えてました」
「そうでしたか。しかし、勝手に動かれては困ります。貴女様は、光魔法の才能を持つ稀有な方なのですから」
「……はい、わかってます。でも、もう大丈夫です。さあ、屋敷に帰りましょう」
わたしは貴重な才能を持つ者として、半年前にいきなり貴族の養子になった。
どうしていいのかわからず、ずっと迷ってきた。
でも、彼のおかげで少し吹っ切れた気がする。
わたしは、わたしのしたいように……自分と同じ境遇の方々や、自分の力を必要としてる人達のために頑張ろう。
ユウマさん……また、何処かで会えるといいなぁ。
いかんいかん、師匠達に怒られるわ。
そんな煩悩を振り払いつつ、屋根を飛び移っていく。
「わわっ? す、すごいです! 空を飛んでます!」
「はは、大袈裟だよ。これは飛び跳ねてるだけだし」
「そ、そんなことないです! だって空中で滞空時間が……」
「まあ、空気を踏んで飛んではいるかな」
「……空気を踏むですか?」
「あれ? わからない? ……まあ、風魔法の一種だと思ってくれれば良いさ」
魔法の師匠であるエリスが言っていた。
俺たちの周りには目には見えない空気というものが存在すると。
風魔法を駆使することによって空気を集めて、それを足場にして飛ぶことができる。
といっても、俺くらいだと飛び跳ねるくらいが清々だ。
エリスなら、文字通り空を飛んでいるし。
「は、はぁ……すごい方なんですね」
「いやいや、ただの田舎者ですよ。さて……あの辺りでいいか」
ひと気がなく、それでいて人通りの近い場所に降りる。
そして、ようやく女の子を解放する。
「ふぅ、ここまでくれば平気かな」
「は、はい! 今回は本当にありがとうございました! あの、わたしの名前はカレン-エルランと申します。よろしければ、お名前を教えてください」
「カレンさんね。申し遅れましたが、俺の名前はユウマ-バルムンクといいます」
「き、貴族の方でしたのですね! 失礼しました!」
すると、カレンさんが両手を使ってアワアワしている。
失礼かもれないけど、その姿はとっても可愛らしい。
容姿はそこまで子供っぽくないけど、守ってあげたくなる感じ。
「ん? 君も名字があるから貴族だよね?」
「わ、わたしは少し特殊でして……養子なのです。元々孤児院にいたところを、とある方に引き取ってもらって……」
「ああ、そういうことね」
おそらく、何かしらの才能があって引き取られたのだろう。
そういう話は聞いたことがある。
才能ある者を埋もれさせないために、子供のいない貴族が引き取るとか。
「……あの、それだけですか?」
「はい? なんの話?」
「い、いえ! ……その、養子だから貴族じゃないとか、孤児のくせにとか」
「何それ? 別に良いんじゃない? 何か才能があって引き取られたわけだし。それに個人的には貴族かどうかなんて関係ないかな。無論、それは否定しないけど……要は何をするかだと思うし」
「何をするか……」
「君はせっかく、その才能と機会を得たわけだし。だったら、遠慮せずに自分のしたいようにやったらいいと思う」
俺自身もそうだった。
早くに母を亡くし、父親はほとんど家にいない。
不貞腐れたり辛いこともあったけど、自分にはやれることがあった。
新しくできた弟や妹、自分の家族である領民達を守るという使命が。
だから父上に頼んで、師匠を用意してもらったし。
「わたしのしたいこと……小さい頃からの夢があって、わたしみたいな子供を減らしたいって。孤児院に行ったとしても、ちゃんと生活できるように。何からしたらいいのか、まだわからないですけど」
「一個ずつでいいんじゃないかな? 例えば寄付だったり、自分が有名になることで夢を与えたりさ」
「寄付はやろうと思っていましたけど……夢を与えるですか?」
「うん。何でもいいんだよ。良い成績をとったり、冒険者で一流になったり、商売で成り上がったり……自分でもやれるんだってところを見せれば、その子達の励みになるのかなって」
「あっ……確かに、そうですね」
「ごめんね、偉そうなこと言って」
「い、いえ! 物凄く参考になりました!ありがとうございます!」
「それなら良かったよ。おっと、日が暮れてきちゃった」
すると、向こうから声がしてくる。
どうやら、この子の名前を呼んでいるみたいだ。
「あっ、わたしの護衛の方々です」
「おっ、それなら安心だ。それじゃ、俺は行くね」
「えっ? あ、あの、お礼とかしたいのですが!」
「いやいや、そういうつもりで助けたわけじゃないし。では、またどこかであったらよろしくねー」
色々と聞かれると面倒なので、俺は急いでその場を離れる。
というか、早くいかないと泊まる場所がなくなっちゃうよぉ~!
◇
……行っちゃいました。
まだ、なんのお礼もできてないのに。
絵本のヒーローみたいに颯爽と現れて、見返り求めずに去っていく……そんな人が、実際にいるんだ。
……な、なんだろ? ドキドキしてきちゃった。
「これはアレでそれで、お姫様抱っこされたからで……あぅぅ……思い出しちゃった」
「カレン様! ご無事ですか!?」
「はい、平気です。心配をかけてごめんなさい」
「いえ、ご無事なら良いです。何やら、話しかけてる男がいましたが……」
「王都が初めてらしいので、場所を教えてました」
「そうでしたか。しかし、勝手に動かれては困ります。貴女様は、光魔法の才能を持つ稀有な方なのですから」
「……はい、わかってます。でも、もう大丈夫です。さあ、屋敷に帰りましょう」
わたしは貴重な才能を持つ者として、半年前にいきなり貴族の養子になった。
どうしていいのかわからず、ずっと迷ってきた。
でも、彼のおかげで少し吹っ切れた気がする。
わたしは、わたしのしたいように……自分と同じ境遇の方々や、自分の力を必要としてる人達のために頑張ろう。
ユウマさん……また、何処かで会えるといいなぁ。
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