田舎貴族の学園無双~普通にしてるだけなのに、次々と慕われることに~

おとら@ 書籍発売中

文字の大きさ
12 / 60

入学式

しおりを挟む
 うーん……寮を出て、すぐ近くにある学校に来たのはいいけど。

 やっぱり、知り合いがいないからぼっちだね。

 新入生が集まった体育館にて、ぼけーと突っ立っている。

 周りの皆は知り合いらしく、わちゃわちゃと話してるけど、そこに入る勇気がない。

 ……そうか、俺って意外と人見知りだったのか。

 そんなことを考えていると、壇上に先生らしき人が現れた。

「みなさん、静粛に……はい、よろしい。ひとまず、入学おめでとうございます。本日、八十名の新入生が入りました。これから三年かけてともに研鑽を積む仲間ですので、親睦を深めていきましょう。自己紹介が遅れましたが、私が理事長のモーリスと申します」

 この人が理事長先生か……白い髭に白髪が似合う初老の男性だ。
 優しそうな雰囲気をしているが、内蔵してる魔力は相当高そう。
 エリスまでとはいかないけど、凄腕の魔法使いの気配がする。

「長々と話すのもあれですから手短に……ここは選ばれた生徒が通う学校です。そして身分や種族関係なく、実力主義の学校です。ですが、身分を振りかざすような真似はしないことです。もちろん、強くても偉そうにしないこと。あとはそれぞれが、当たり前の節度を守って学園生活を送ってくださいね」

 ふんふん、別に当たり前のことしか言ってないね。
 身分や種族によって価値観や考え方が違うから、そこは折り合いをつけないと。
 それより……なんか、俺の方を見てる気がするのは気のせいだろうか?

「私からは以上となります。さて、次に生徒会長の挨拶で終わりにしたいと思います。生徒会長ミレーユ-アストレイ、お願いします」

「はい、理事長先生」

 ……あれ? ミレーユさん? 寮長だけでなく、生徒会長もやってるんだ。
 そりゃ、寮でもみんなが注目するわけだね。
 アストレイ……どっかで聞いたことあるような気もする。

「ご紹介にあずかりました、ミレーユ-アストレイと申します。この学校の生徒会長を務めさせて頂いております。主に生徒間の揉め事やお祭り行事、そして部費の予算などを担当しておりますので、何かご相談がありましたらお気軽にどうぞ……それでは、楽しい学園生活を送ってくださいね」

 最後にミレーユさんが微笑むと、周りから息が漏れる。
 そして、相変わらず優雅に歩いて壇上から降りていく。
 その際に目が合い……ウインクをされる。
 っ!? なんつー破壊力……美人、恐るべし。

「お、おい、今のって俺?」

「はぁ? おれにきまってるじゃん!」

「違う違う! 俺でしょ!」

 ……危ない危ない、俺も勘違いするところだった。
 今のは俺じゃなくて、他の人にやったんだね。



 ◇


 そのまま軽いテストがあるらしいので、呼ばれた者から順に体育館の外に出て行く。

 俺はその間に、知り合いでも作っておこうかなと辺りを見回していると……。

「あっ! ユウマさん!」

「あれ? カレンさん?」

 タタタッと、昨日助けた女の子がかけてくる。
 白のブレザーが初々しく、よく似合っていた。

「わぁー! 同じ学校だったんですね!」 

「そうみたいだね。しかも、同い年だったとか」

「えへへ、偶然って凄いですね……ううん、これは運命?」

 何やら下を向いてもじもじして呟いている。
 さっきから、ほんのりと頬が赤い気がするし……心配して、俺は彼女のおでこに手を当てる。

「顔赤いけど大丈夫? 風邪でもある?」

「ひゃぁ!? へ、平気です!」

「そう? それなら良かった」

「うぅー……」

「……貴方、何をやってるの?」

「あっ、セリス」

 振り返ると、今度はセリスがいた。
 こちらも制服姿がよく似合っている。

「ユウマ、物凄く目立ってるわ。もう、公衆の面前で女の子に触れるだなんて」

「あっ、そうなんだ。ごめんね、カレンさん」

「い、いえ! わたしは平気です!」

「仲よさそう……むぅ」

「あのー、セリス?」

「と、とにかく! ユウマには色々と教えることがありそうですね! 貴女も一緒に来なさい」

「「は、はいっ!!」」

 その迫力に、俺とカレンは同時に返事をして、端っこの方に連れて行かれる。
   物陰に隠れたので、俺たちを見る人も減った。

「ユウマ、また会ったわね」

「はは、そうだね。カレンさん、この方はセリス-ミルディンさんだよ。侯爵家の人だけど、優しい人だから安心していいよ」

「は、はじめまして! カレン-エルランと申します!」

「はじめまして、カレンさん。なるほど、エルラン伯爵家の……娘はいなかったような」

「わ、わたしは養子で……」

「ああ、そういうことなの。それじゃ、わからないことがあったら言ってね」

「……へっ?」

 その言葉に、カレンがぽかんとした表情を浮かべた。
 俺はといえば、自然とそう言える彼女が幼馴染で良かったなと思った。

「カレンさん、セリスは優しいから平気だよ」

「べ、別にこれくらい普通よ」

「そ、そうなんですね……はい、よろしくお願いします!」

「ええ、任せて。それじゃあ、これから学校でもよろしくね」

「はい! わぁー、知り合いとかいないから不安だったんです」

「ふふ、それなら良かったわ」

 二人が握手をして、微笑み合う。
 うんうん、この二人は仲良くできそうで安心だね。
 それに三人でいれば、俺とセリスが一緒にいても変に思われないし。
   仮に婚約者がいても、問題はなさそうだ。

「それじゃ、俺も教えてもらおうっと」

「ユウマ? 貴方は生粋の貴族なんだから覚えてないとまずいでしょうに」

「はは、どうにも苦手でして……」

「もう、相変わらずなんだから」

「ふふ、ユウマさんは貴族っぽくないですもんね」

 二人からそう言われ、俺は頭をぽりぽりとかくのだった。

 んなこと言われても、貴族っぽくってよくわからないし。

 ……俺の父上、あんなんだしね。





しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...