田舎貴族の学園無双~普通にしてるだけなのに、次々と慕われることに~

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その後、冒険者ギルド近くに来る。

スラム街とはいかないが、古い大きな建物がいくつか建ってる。

静かで落ち着いた貴族街と違い、そこは喧騒にまみれていた。

あちこちには屋台があり、人々が道で飲み食いをしている。

それに屈強な男達が目立つ……おそらく、冒険者ってやつかもしれない。

「す、凄いわね。同じ王都なのに」

「まあ、さっきの場所もそうだけど住み分けが出来てるだと思う」

「お父様が、なるべく近寄るなって言った意味がわかったわ。それは下に見るわけではなく、単純に危ないからってことね」

「そうだね。下手すると、さっきの人達のが安全な場合も……ちょっと、待って? 俺、オルドさんに殺されない?」

さり気なく聞き流したけど、それって来ちゃいけないってことだよね?
まずい、俺の頼みで連れてきてしまったぁぁ!
あの人、剣の達人でもあるし怖いんだよなぁ。

「ふふ、そうかもしれないわ。そもそも、その……ユウマと出かけるのだって内緒だし」

「えっ? 内緒なの?」

「あ、当たり前じゃない! 男の人と、デ、デートだなんて……」

「ごめん、セリス。ちょっと様子を見よう」

「ふえっ? 手、手が繋がれて……」

俺はセリスの手を握り、察知した喧騒に向かうと……そこでは男二人が乱闘騒ぎをしていた。

「あぁ!? やんのか!?」

「いいだろう! 表でろや!」

屋台などの出店が出る道のど真ん中で、大人の男が殴り合いをしている。
こういう光景は、地元でもよく見ていたので懐かしい。
ただ……少し危なっかしいかな。

「け、喧嘩かしら?」

「いや、可愛いものだよ。まだ。お互いに素手だしね」

「そ、それが基準なの?」

「うん? まあ、そんな感じ。ただ危ないには違いないし」

「そうよね、あちこちから血が出てるし……あっ! 男の子が驚いて転んだわ!」

セリスの言葉を受け、俺は風をまとって走り出していた。
そして、殴り飛ばされた男を受け止め、子供に当たりそうだったのを止める。
その地面には、食べかけのクレープが潰れていた。

「クレープが……ふぇぇーん!」

「はいはい、大丈夫だよ」

俺は男を押し出し、セリスの方に子供を向かわせた。
セリスが受け取るのを確認し、男達に向き合う。

「な、なんだ?」

「酔っ払って盛り上がるのは良いけど、少しやり過ぎかな? ……ちょっと、目を覚ましてもらおうっと」

「なんだと!?」

「ガキが生意気言って——かはっ!?」

まずは、突き飛ばした男の腹に掌底を叩き込む。
そのまま、地を這うように移動してもう一人の男を昏倒させる。

「——グヘッ!?」

「さて……こんなものかな? おじさん達、騒ぐは良いけど人に迷惑をかけちゃダメだよ」

ひとまず、男達を昏倒させると……拍手が起きた。

「にいちゃん、すげえや!」

「屈強な奴らを一撃で沈めちまいやがった!」

「そいつら、悪い奴らじゃないんだけど、今回は仕方ないね」

「いえいえ、お騒がせしました」

その後、通行人の邪魔にならないように、男達を建物の下に運ぶ。
俺はヒールとアンチポイズンをかけて、痛みと酒を抜いてあげる。
エリス曰く、酒はアルコールという成分を分解するイメージだとか。
ちなみに、普通は毒を抜いたりする魔法らしい。

「いてて……酔いが治った?」

「おじさん達、楽しいのはわかるけどやりすぎは良くないよ?」

「お、俺達に回復魔法を?  しかも、酔いを醒ます魔法なんて聞いたことないぜ」

「よく見たら貴族学校の制服……す、すまねぇ!」

「いえいえ、貴族ですけど気にせずに。こちらこそ、手荒な真似をしてすみませんでした」

すると、二人が目を見開いて顔を合わせる。

「……変な貴族」

「冒険者の俺達に謝ったぞ……」

「また言われたし……別に普通なんだけどなぁ」

あまりに言われすぎて、自分が変なのかと思ってしまう。
すると、子供を連れたセリスが向かってくる。

「あと、謝るならこの子にね」

「ああ、坊主も悪かった。弁償させてくれ」

「う、うん!」

「俺、その店知ってるから買ってくるぜ!」

そう言い、一人の男性が駆け出していった。
お酒が入ってただけで、悪い人じゃなさそうで良かった。

「ふふ、良かったわね」

「うんっ! お兄ちゃんもありがとう!」

「いえいえ、どういたしまして」

その時、カラカラと何かが落ちてくる音がした。

「あれ? 何か落ちてきたわ……ユウマ!」

「うん?  ……っ!?」

セリスの後に俺が上を向いた時……そこには、今にも崩れ落ちそうな建物の破片があった。

そして、次の瞬間——俺たちのいる場所に向かって大きな塊が崩れ落ちるのだった。






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