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ご対面
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その後、日が暮れてきたので屋敷に帰るセリスを送っていくと……。
門の前に、オルドさんが仁王立ちで立っていた。
細身で眼鏡をかけて、背筋が伸びた白髪の紳士……間違いない。
「うげぇ……セリス! 俺はこれにてっ!」
「ユウマ!?」
俺が振り返り逃げようとすると、目の前に門の前にいたはずのオルドさんがいた。
瞬間移動かよ!? 文官なのにエリス並みに早いよォォォ!
「どこに行くのかね?」
「はは……いえ、寮の門限があるので帰ろうかと」
「それなら問題はない、私が連絡をしておいた。少し遅れても問題ないので、うちに寄ると良い」
「……はい?」
「お、お父様!?」
「衛兵から連絡がきて、事情はわかってる。それに……うちの娘を連れ回したことについて聞かんとな?」
……ははっ、どうやら逃げるわけにはいかないみたいです。
大人しく従い、屋敷の中に案内される。
そして応接室にてソファーに座るよう促され、対面にはオルドさんとエリスが座る。
「さて、まずはお手柄だったようだな」
「はい、ユウマがいてくれたおかげです」
「いやいや、セリスさんが機転を利かせたからです」
「ふむ、双方共に力を合わせたということか。無辜の民を守る、貴族としての役割を果たしたことを父として嬉しく思う。きっと、お主の父であるエルバートの奴もな」
俺の父上とオルドさんは、無二の親友とか。
オルドさんは内政を、父上は国の防壁として。
それぞれ立場は違うけど、国のために働いてる人達だ。
「そうですね、あそこで動かなければ殴られてましたよ」
「クク、彼奴なら間違いない。さて……それとは別件で、私にいうことがあるのでは? 嫁入り前の娘をデートに誘うなど」
「お、お父様!?」
「デート……あっ」
しまったァァァ! 全然考えてなかった!
普通に、セリスの気晴らしになるかと思って連れ出したけど……。
年頃の男女が二人で出かける……それは見ようによってはデートだ。
「全く、それに気づいておらんとは。その辺は、エルバートによく似ている。彼奴も、サラと付き合うまで大変だった」
「サラ……母上ですか」
「ああ、私とサラは幼馴染だった」
「お父様、初耳ですわ」
「うむ……話す機会もなかったからな」
俺自身、母上のことはよく知らない。
可愛がってもらった記憶はあるけど、十年前には亡くなってる。
後妻がいる今、あんまり話題に出すのもアレだし。
「とにかく、お主達には自分達の立場を自覚しなさい。英雄バルムンク家嫡男と、代々法務を司るミレトス家の長女なのだから」
「「申し訳ありませんでした」」」
「まあ、うるさい事を言う連中もいる……私個人としては、お主達の関係を好ましく思っているが。私とサラも、結婚後も仲は良かった」
「そうだったんですね。あんまり、周りや父上からは聞き辛くて……」
「仕方あるまい。皆、彼女のことを愛していた。故に失ったことに耐えられるまで時間がかかったのだ。エルバートの奴も腑抜けて、国境が突破されそうになったくらいだ」
「ええ、そのことは覚えてます」
母上が亡くなってから、父上は見るからに元気をなくしていた。
そこをガルアークが攻めてきたんだ。
いっときは、俺達の領内まで食い込まれそうで危なかったとか。
幸い、民が犠牲になるようなことはなかったけど。
「まあ、お陰で立ち直ったとも言えるが。自分が守るべき存在がいること、自分の家の本来の役目を果たすことを思い出したのだろう」
「そうだったんですね。でも、再婚してくれて良かったですよ」
「うむ、本当にな。荒くれ者の奴にはストッパーになる存在が必要だ。お主にとっては、面白くない話かもしれないが」
「いえいえ、昔は確かに思うところはありましたけど……弟も妹も可愛いですから」
「ふっ、あの小僧が成長したものだ。うちの娘を池に落としたり、壺を割ったりしてたというのに」
……やっぱり根に持ってたァァァ!
「はは……その節は申し訳ありません」
「まあ、良い。うちの子にとっても、良い時間となったようだし。さて……こんなところか。ユウマよ、別にうちの娘を誘うなとは言わん。エルバートの息子であるお主のことは信頼してるつもりだ。ただし、そういう目で見られることを自覚しなさい」
「は、はいっ、気をつけます」
「無論、お主が責任を」
「お、お父様!? ユウマ! 早く帰るわよ!」
「ちょっ!? セリス!? えっと……失礼します!」
セリスに引っ張られ、部屋を出て行く。
そして、そのまま玄関まで来る。
「も、もう、お父様ったら何を……」
「なにか言いかけてたけど……」
「気にしないでいいの!」
「わ、わかったよ。まあ、でも話せて良かった。母上の話も聞けたしね」
どうやら、殺されるようなことはなかったし。
どちらにしろ、一度は挨拶をしなきゃとは思ってた。
「私も初耳だったわ。幼馴染か……ユウマ、貴方は私と幼馴染で良かった?」
「そりゃ、もちろんだよ」
「そう……私もよ。じゃあ、また来週」
「うん、学校でね」
暗い夜道の中、俺は気分良く歩いていく。
セリスの顔が、大分晴れていたから。
門の前に、オルドさんが仁王立ちで立っていた。
細身で眼鏡をかけて、背筋が伸びた白髪の紳士……間違いない。
「うげぇ……セリス! 俺はこれにてっ!」
「ユウマ!?」
俺が振り返り逃げようとすると、目の前に門の前にいたはずのオルドさんがいた。
瞬間移動かよ!? 文官なのにエリス並みに早いよォォォ!
「どこに行くのかね?」
「はは……いえ、寮の門限があるので帰ろうかと」
「それなら問題はない、私が連絡をしておいた。少し遅れても問題ないので、うちに寄ると良い」
「……はい?」
「お、お父様!?」
「衛兵から連絡がきて、事情はわかってる。それに……うちの娘を連れ回したことについて聞かんとな?」
……ははっ、どうやら逃げるわけにはいかないみたいです。
大人しく従い、屋敷の中に案内される。
そして応接室にてソファーに座るよう促され、対面にはオルドさんとエリスが座る。
「さて、まずはお手柄だったようだな」
「はい、ユウマがいてくれたおかげです」
「いやいや、セリスさんが機転を利かせたからです」
「ふむ、双方共に力を合わせたということか。無辜の民を守る、貴族としての役割を果たしたことを父として嬉しく思う。きっと、お主の父であるエルバートの奴もな」
俺の父上とオルドさんは、無二の親友とか。
オルドさんは内政を、父上は国の防壁として。
それぞれ立場は違うけど、国のために働いてる人達だ。
「そうですね、あそこで動かなければ殴られてましたよ」
「クク、彼奴なら間違いない。さて……それとは別件で、私にいうことがあるのでは? 嫁入り前の娘をデートに誘うなど」
「お、お父様!?」
「デート……あっ」
しまったァァァ! 全然考えてなかった!
普通に、セリスの気晴らしになるかと思って連れ出したけど……。
年頃の男女が二人で出かける……それは見ようによってはデートだ。
「全く、それに気づいておらんとは。その辺は、エルバートによく似ている。彼奴も、サラと付き合うまで大変だった」
「サラ……母上ですか」
「ああ、私とサラは幼馴染だった」
「お父様、初耳ですわ」
「うむ……話す機会もなかったからな」
俺自身、母上のことはよく知らない。
可愛がってもらった記憶はあるけど、十年前には亡くなってる。
後妻がいる今、あんまり話題に出すのもアレだし。
「とにかく、お主達には自分達の立場を自覚しなさい。英雄バルムンク家嫡男と、代々法務を司るミレトス家の長女なのだから」
「「申し訳ありませんでした」」」
「まあ、うるさい事を言う連中もいる……私個人としては、お主達の関係を好ましく思っているが。私とサラも、結婚後も仲は良かった」
「そうだったんですね。あんまり、周りや父上からは聞き辛くて……」
「仕方あるまい。皆、彼女のことを愛していた。故に失ったことに耐えられるまで時間がかかったのだ。エルバートの奴も腑抜けて、国境が突破されそうになったくらいだ」
「ええ、そのことは覚えてます」
母上が亡くなってから、父上は見るからに元気をなくしていた。
そこをガルアークが攻めてきたんだ。
いっときは、俺達の領内まで食い込まれそうで危なかったとか。
幸い、民が犠牲になるようなことはなかったけど。
「まあ、お陰で立ち直ったとも言えるが。自分が守るべき存在がいること、自分の家の本来の役目を果たすことを思い出したのだろう」
「そうだったんですね。でも、再婚してくれて良かったですよ」
「うむ、本当にな。荒くれ者の奴にはストッパーになる存在が必要だ。お主にとっては、面白くない話かもしれないが」
「いえいえ、昔は確かに思うところはありましたけど……弟も妹も可愛いですから」
「ふっ、あの小僧が成長したものだ。うちの娘を池に落としたり、壺を割ったりしてたというのに」
……やっぱり根に持ってたァァァ!
「はは……その節は申し訳ありません」
「まあ、良い。うちの子にとっても、良い時間となったようだし。さて……こんなところか。ユウマよ、別にうちの娘を誘うなとは言わん。エルバートの息子であるお主のことは信頼してるつもりだ。ただし、そういう目で見られることを自覚しなさい」
「は、はいっ、気をつけます」
「無論、お主が責任を」
「お、お父様!? ユウマ! 早く帰るわよ!」
「ちょっ!? セリス!? えっと……失礼します!」
セリスに引っ張られ、部屋を出て行く。
そして、そのまま玄関まで来る。
「も、もう、お父様ったら何を……」
「なにか言いかけてたけど……」
「気にしないでいいの!」
「わ、わかったよ。まあ、でも話せて良かった。母上の話も聞けたしね」
どうやら、殺されるようなことはなかったし。
どちらにしろ、一度は挨拶をしなきゃとは思ってた。
「私も初耳だったわ。幼馴染か……ユウマ、貴方は私と幼馴染で良かった?」
「そりゃ、もちろんだよ」
「そう……私もよ。じゃあ、また来週」
「うん、学校でね」
暗い夜道の中、俺は気分良く歩いていく。
セリスの顔が、大分晴れていたから。
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